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プロフェッショナル・ゼミ

ソウル着は深夜2時半! 「タクシー争奪戦」という名のプチオリンピック〜「冬季五輪に魅せられて」——天狼院書店特派員ライター・関谷智紀が行く! ピョンチャン五輪紀行〜


 

ジャンプ競技、そのとき観客たちは!

 

五輪の影響で、開催地近辺のホテルの宿泊料が高騰しているのは、皆さんもご存じのことと思います。そのため、一部の富裕層やスポンサー企業からの招待客以外のファンの多くが、ソウルから韓国新幹線KTXで約2時間弱かけての往復を強いられているのは先日もお伝えした通り。

これだけでもけっこうな修行なのですが、一般のファンに降りかかる試練はまだまだあります。

IOC(国際オリンピック委員会)にとって、お得意様ともいえるアメリカの放送局の意向なのか、アメリカの時間に合わせるかのように、朝早い時間や夜遅めの時間に開始される試合がいくつもあるのです。
そのため、「試合開始が夜9時半、会場が山の中」といったケースも多く、現地にいる観客にとっては過酷な状況となっています。

なかでも一番キツいのが、ジャンプ競技。開始時間の多くは夜9時半頃に設定されていて、たとえば、男子ノーマルヒルでは、ジャンプ台周辺に強風が吹きすさぶ厳寒のなか、観客は根性を試されることとなりました……。
「やっと競技が終わった」と思っても、「せっかくなら最後の表彰式ならぬフラワーセレモニーまで全部観ていきたい」と考えるのがファン心理。結果的に、会場を出るのが夜11時、駅に着くころには日付が変わってしまうわけです。

そんな過酷な状況でも頑張ってくれているのが、KORAIL(韓国鉄道公社)。深夜にKTXの臨時便を出してくれているのです。私がよく乗るのは、会場最寄りの珍富(ジンブ)駅を深夜1時34分に出る電車。とても助かります。
とはいえ、ソウル市内に到着するのは夜の2時半過ぎで、当然、ソウルの地下鉄の運行は終わっています。

ではどうするか?
ソウルの玄関口である清涼里(チョンニャンニ)駅や上鳳(サンボン)駅に着くと、電車のドアが開いた瞬間、観客はみな早足で出口を目指します! なかには猛ダッシュする人の姿も!!

ソウルの夜中を舞台に「タクシー争奪戦」プチオリンピックの開幕です。

 

戦いの火蓋は切られた!

 

では、ここからは「タクシー争奪戦」の模様を現地から実況中継いたします!

さあ、KTXのドアが開きました。各国代表が上鳳駅の数百メートルはありそうな、ながーいホームを走って行きます。まず、階段を降りて右に曲がり目指すは、タクシーとネオンの待つ出口だあ!

さあ、次々と出口から観客が飛び出してまいりました!

まずは大きなジェスチャーでタクシーにアピールするのは、ロシアチーム。両手を掲げて振る派手なパフォーマンスです。しかし、ゴツい男たちの集団に運転手もおじけづいているのか、彼らの前を素通りして……、おおっとぉ、韓国人女性グループを拾ったあ。
やはり、地元開催の利は、このレースでも活きているようです。

一方、どんどんタクシーが来る上流のほうに走っていくのは、アメリカとカナダの連合軍! タクシーを呼びに待っている人の上流に立つのは、日本のバブル期でもみんなが控えていた掟破りのワザですが、流石は自由の国・アメリカ、そしてカナダ、全く臆しません。

その間に、おおっとスロベニアから来た美女軍団の前にタクシーが止まったあ! やはりブロンドの魅力に運転手もあらがえなかったか。優雅に優雅に、スロベニア美女軍団、タクシーに乗り込んでおります。

おおっと、こちらはイタリアチーム、女性と男性がしっかり抱き合いながらアピールです。流石アモーレの国、タクシーを呼ぶときにもアモーレを忘れません。

さあ、しっかり下流で待っていたドイツチーム。このフェアプレー精神に運転手も感じ入ったのか、上流で待つグループを素通りしてドイツチームを拾いました!

アメリカチームも「ヘイ、タクシー! フォー!!!」というイケイケなかけ声が効いたのか、見事タクシーをゲット!
おおっとぉ、ロシアチームもタクシーが来るたびにダッシュで駆け寄るという肉弾アタックが効いたのか、タクシーをゲットし、満面の笑みで乗り込んでいきます。

 

そして誰もいなくなった……

 

さあ、各国無事にタクシーを捕まえ、選手たちの数も大分減ってまいりました。
おおっと、いよいよ実況している私、関谷の前にもタクシーがようやく……。
ああっとぉー、ここで予想外の角度から選手が乱入してまいりましたあ! 飲み会帰りで顔が真っ赤な韓国人男子学生集団が私より先に運転手に駆け寄って、交渉を始めております(泣)。

さあ、ついに、ついに、私以外の選手は無事帰途につき、誰もいなくなってしまいました。奥ゆかしい日本人の感性がそうさせるのか? はたまた選手としてタクシーゲットのスキルが足りないのか。時刻は夜中の3時20分を回ってまいりました……。

通常、マラソンで最後にゴールする選手には観客からあたたかい拍手が送られるのですが、もう周りには誰もいません。マイナス10度、吹きすさぶ寒風のなか頑張っている自分に拍手を送りたいと思います。パチパチパチ……。

おおっ、関谷選手の目から涙があふれております。
この涙は感動の涙でしょうか、それとも……。
さあ、明日深夜の試合(タクシー争奪戦)での日本代表・関谷選手の健闘を祈りつつ、実況席からマイクをお返したいと思います。それでは、スタジオどうぞ!

 

【プロフィール】
関谷智紀(せきや・ともき)
フリーライター。大学卒業後、TV制作会社にてスポーツ中継や情報番組などのディレクターをしていたが、会社解散にともない紆余曲折を経て情報誌のライターになり、グルメのお店情報から経済関係まで記事を執筆。その後、単行本・ムック本の企画・ライティングも担当。スポーツライターとしては、アイスホッケーをはじめとした冬季スポーツ、バスケットボール、野球などを中心に取材を続けている。

 

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