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プロフェッショナル・ゼミ

“要人取材に成功!”と思いきや……〜「冬季五輪に魅せられて」——天狼院書店特派員ライター・関谷智紀が行く!ピョンチャン五輪紀行〜


 

予想外の激戦となった女子アイスホッケー

 

「だまされたぁ!」
真相がわかった瞬間、私は地団駄を踏み、その場に突っ伏したい気持ちになった。

その日の私はそんなことになるとも知らず、予想以上の激戦となった女子アイスホッケーの予選リーグ、「日本」対「コリア」(南北合同チーム)の試合を観戦していた。

参加国中、明らかに一番弱いと言われていたコリアが、会場にぎっしり詰めかけた韓国人ファンの後押しも受けて、大健闘。第2ピリオドを終わって、日本がリードしているとはいえ「2−1」と非常にタイトな接戦となったのである。韓国のファンたちは、白地に水色の朝鮮半島が描かれた「統一旗」を振って、コリア選手たちがパックを持つたびに「ウォー」という雄叫びを上げ、それが会場中に響き渡った。

結局、試合はアウェイの雰囲気にも負けず、第3ピリオドに日本チームが2点を奪って、最終的には「4−1」と逃げ切り、オリンピック初勝利を挙げたが、応援の持つものすごい力を再認識させられた試合でもあった。

そんな熱い戦いの余韻が残るなか、アイスアリーナの外周通路を歩いていると、前方に人だかりができている。近づいてみると、複数のヨーロッパのテレビクルーが、黒いコートを着た1人の大柄な男に群がっている。

はて、誰だろう、と覗いて見ると……。

 

世界中のメディアが注目するあの人物に遭遇!?

 

なんだ、あの特徴的な髪型は? 頭の下半分をぐるっと1周刈り上げて、髪は真ん中分け。そして、特徴的な黒いメガネ。
もしかして、あれはもしや……!

男は、記者の質問に対して、流暢な英語で答えていく。私のつたない英語力をフル回転して、耳をそばだてると、
「世界の平和と友好のために僕らはここへ来た」
「すばらしい戦いを観ることができて満足している。きっとよい方向へ向かうだろう」
などと話しているようだ。

その堂々たる話しぶりに、私も思わず記者の輪に加わり、彼らの肩口の隙間から、スマートフォンをねじ込んで、ビデオ撮影を試みたのである。

ビデオを撮ること数十秒……。

はて? この人なんか違う。
独特の髪型でメガネもかけているけれど、どう考えても、テレビで見ている「あの人物」とは思えないのである。
そもそも、あの重要人物がここに来るわけがないよね……。

ということで、ようやく「何かが違う」と気づいた私は、近くにいたボランティアに「あの人はどなたですか?」と聞いてみた。

すると、ボランティアの方が一言。
「モルゲッソヨ(わかりません)」
あー、やっぱり違うよね……。

「でも、別の重要人物かもしれない」というわずかな可能性を信じ、根が小心者の私はスクープを取り逃がすのが怖くて、せめてヨーロッパメディアのインタビューが終わるまではと腕をプルプルさせながら必死に、前の記者の頭越しにスマートフォンを高く掲げ、レンズをその彼に向け続けたのであった……。

2時間後、確認のため韓国在住の友人にそのビデオを見せたところ、
「あー、この人ですか(笑)。韓国ではけっこう有名人ですよ。香港の人で今はオーストリアに住んでいるとかいう、金正恩氏のそっくりさんですよ。そうそう、彼は今回の開会式にも来て、メディアから取材されてましたよ。ドナルド・トランプ氏のものまねする人と一緒にポーズをとってましたね」
とあっという間に「答え」を教えてくれたのであった。

「あちゃー。もしかしたらあの国の重要人物かもと思って、僕は必死にビデオを回してたんだよ」と言って思わず天を仰いだ私は、友人と二人で大笑い。

そうなんです。オリンピックに来るのは、選手とスタッフ、そして観客だけではないんです。
世界中から注目が集まるイベントだからこそ、「何か一発かまして目立ってやろう!」と考える目立ちたがり屋の人たちが、世界中から集まってくるんです。

私だって嫌いじゃないですよ。オリンピックならではのお祭りのような雰囲気は。
でもねぇ……。
ああっー、悔しい。だまされたぁ〜。

そんな空振りをしながらも、取材活動はまだまだ続きます。
オリンピックは、一瞬たりとも気が抜けないイベントなのです。

 

【プロフィール】
関谷智紀(せきや・ともき)
フリーライター。大学卒業後、TV制作会社にてスポーツ中継や情報番組などのディレクターをしていたが、会社解散にともない紆余曲折を経て情報誌のライターになり、グルメのお店情報から経済関係まで記事を執筆。その後、単行本・ムック本の企画・ライティングも担当。スポーツライターとしては、アイスホッケーをはじめとした冬季スポーツ、バスケットボール、野球などを中心に取材を続けている。

 

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