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メディアグランプリ

我が家からテレビが永遠に消え去った日


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:いわちゃん@理系エンジニア(ライティング・ゼミ特講)
 
 
小学4年生のある日、学校から家に帰るとテレビが無くなっていた。えっ? なんで? 最初は部屋の模様替えをするのかな? そう思った。ただどこを見渡してもそんな気配はない。時計の針は午後3時になろうとしていた。じきに友達が遊びにくる。今日は一緒にテレビゲームをする約束をしていたのだ。テレビがないとゲームができない。
 
部屋を見渡すとスーパーファミコンのカセットが部屋の隅に幾つか散らばっていた。ただ何度見渡しても、あるべき場所にテレビとスーパーファミコンがない。今朝、学校に行く前はあったのに。
 
僕は嫌な予感がした。まさか本当に実行するなんて…… 僕はぼそっとそう言った。嘘であって欲しい。僕は台所で夕ご飯を作っていた、おかんに聞いた。
 
「テレビが無いよ。あとファミコンも。」
 
すると、
 
「今日、捨てたよ。」
 
「えっ! なんで? 今から友達来るよ!」
 
「外で遊びなさい。」
 
僕はこの日のことを忘れない。それは僕にとって世界の全てを奪われた日、ゲームが全てだった小学4年生の僕から。ただ、それと同じくして、子供ながらにこういった日がいつか来るかもしれない、と薄々感じていた。
 
家からテレビとゲームがなくなったのは、おかんの独断だった。僕は妹と弟を味方につけ、おかんに猛抗議した。おとんは静かに静観。だが、おかんは頑固だった。
 
おかんは、僕の友達の家が、テレビが無い生活を送っており、それを真似たのだ。その友達の家の両親、祖父母ともに学校の先生だったこともあり、色々と話をする中で、確かにそうだ、と思ったらしい。そして、厄介なことに、その友達は運動も勉強もできる凄い奴だったから説得力が増す。おかんはきっと、ご飯のときにテレビを見ずに家族でしっかりと話をする、ゲームは不要、外で遊ぶ、するとしっかりとした子に育つ、など素敵な青写真を思い浮かべたに違いない。
 
僕たち兄弟が子供ながらに色々と理由を並べて説明、説得するも、学校の先生という肩書きを持つ人たちの意見の影響を受けたおかんを説得することはできなかった。ニュースが見れない! と言っても新聞を読みなさい。もう僕は諦めた。
 
そこからテレビとゲームが無くなった我が家の生活が始まる。テレビを見ていないから、学校でお笑いの話についていけない、ギャグが分からない、音楽も分からない。なんだか周りの話についていくことが出来なくなった。
 
そのおかげで、当時、流行っていた「同情するなら金をくれ」が名セリフのドラマ。あるとき、学校でこんなことがあった。学校の担任の先生が、このドラマを見ている人は手を挙げて、と言った。すると、クラスで僕だけが手を挙げることが出来なかった。女子やイケイケな男子からは、えー、信じられないー、などの声が上がるもテレビが無いのだから仕方がない。おかげで人より少し強い精神力を持てるようになった。
 
テレビとゲームが無くなった家の子供はどうなるのだろうか? 引きこもり? いや残念ながら家で引きこもることが出来ないのだ。家に引きこもりたくても、引きこもれない。引きこもるには何か引きこもるのに必要なアイテムがいるのだ。当時はまだスマホはもちろんのこと、パソコンなどもなく、Youtubeという画期的な暇つぶしアイテムもない。「暇だなぁー」そう思いながら時間だけが過ぎていく。
 
もしかすると、家からテレビを無くすというのは、今の時代だとスマホを子供から取り上げる、ということに近いかもしれない。きっと大人の中にもスマホを取り上げられると発狂する人がいるかもしれない。もし、今のあなたの生活からスマホが取り上げられるとどう思うだろうか? そう考えるとそれを実行したおかんは中々の勇気がいったに違いない。
 
結果的に僕はテレビとゲームが無くなったおかげで、図書館や書店に引きこもって本を読むという習慣を得た。お気に入りの青いマウンテンバイクに乗って出掛けて。そして、夜はラジオにハマり、それを聞きながらマンガを読む。なぜか勉強も好きになった。どうやら、20年以上たった僕のライフスタイルの原形はどうやらテレビとゲームが無くなったことで手に入れたらしい。
 
大人になって思うこと。テレビとゲームは必要かどうか。それは、どっちでも良い。あってもなくても良いということ。あれば面白い番組を見るし、なければ見ない。今はテレビがあるがそれでも殆どテレビを見ることはない。たまにテレビがついていて面白ければ見る。
 
僕はふと、テラスハウスという番組を思い出した。それは番組が素敵なお家と素敵な車を素敵な男女の出演者に提供して、彼らが恋愛物語を展開していく。その場所にテレビやゲームは関係ない。話のネタになるかもしれないが、別に無くても良い。素敵なお家と素敵な車に出演者がいたらいいのだ。昔の僕にとって大事だったのは、素敵なテレビと素敵なゲームと友達。ただそこからテレビとゲームが消えただけ。そしてゲームで繋がっていた友達も消えた。ただ、素敵な何かが消えれば、また別の素敵な何かに出会えることを学んだ。それは、素敵な本とラジオに、素敵なマウンテンバイク、そして新しい友達だった。
 
素敵な何かは成長と共に何か別のものに変わっていくかもしれないし、同じ言葉でも意味が変わってくるかもしれない。今の僕にとっての素敵な何かとは、素敵な空間と素敵な時間があればいい。きっと、人が楽しんで生きるには、素敵な何かと何かが必要なのだ。その素敵な何かと何かが新しい出会いを引き寄せて、楽しい人生にしてくれる。もしも、その大切な何かが無くなっても、また別の素敵な何かに変わっていく。人というのは、きっといつまでも素敵な何かと何かを探して、楽しめるに違いない。別に何かが無くなってもいい。執着する必要もない。最初は悲しいかもしれないが、それはまた別の素敵な何か、を探すことになるキッカケなのだから。
 
テレビとゲームが消えた当時の我が家に感謝しながら、今日も僕は素敵な何かと何かを日々探している。
 
 
 
 
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2019-09-16 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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