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メディアグランプリ

山歩きしてたら、空を飛ぶことになった話


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:本間佳奈子(ライティング・ゼミ 日曜コース)
 
 
パラグライダーを始めた理由を訊ねると、
 
「子供の頃から空を飛んでみたかった」
「鳥人間コンテストをやってたことがある」
 
なんて、「いかにも!」な答えをする仲間もいる。
 
しかし、私が空飛びを始めたきっかけは、「山を歩いてたら誘われて」だ。
 
こう書くと、富士山にでもいったのと思われるかもしれないが、それは、近所の標高300メートルくらいの低山を歩いていたときのこと。
 
その山は何度も行ったことがあり、山頂から100メートルほど離れたところに、見晴らしの良い斜面があることは前から気づいていた。自然にできた斜面ではなく、人為的に切り取ったような形の斜面で、足場を整えるためのシートが敷かれてあった。ふつうの山にはない地形で、ちょっと気になる場所だった。
 
その日は、斜面に、中高年のおじさん達が5人ほど集まっていた。彼らは、低い山には不釣合いな、大きな荷物を持っていた。その荷物を開けると、化学繊維っぽい布でできたモノが出てきた。どうやら羽根型のもので、空を飛ぶ道具らしいということが読み取れた。それを広げるのかと思ったが、彼らは手を止めて「風がよくないね」「待ったほうがいいね」と話し始めた。
 
一緒にハイキングしていた友人と、女2人でその様子を眺めていると、それに気づいたおじさんの1人が話しかけてきた。
 
「山登り?」
 
「はい。ここから飛ぶんですか?」
 
「そう。歩いて下りるよりも、飛んで降りたほうが楽しいよ」
 
「飛べるんですか?」
 
「風がよければ、練習すれば、誰でも飛べるよ」
 
風がよいっていう言葉が何を意味するのか、その時の私にはよくわからなかった。でも、空を飛んで山を降りるという発想が面白いなと思った。そして「誰でも飛べるよ」の「誰でも」には、学生のときに「苦手な教科は?」と聞かれたら「体育!」と即答するような私も含まれなのだろうと思った。
 
友人とは「いろいろな趣味の人がいるね」と軽く笑った。ハイキングを続けるために、私たちはその場を立ち去った。
 
たった300メートルの山だが、この山の山頂は開けていて、なかなか見事な眺めなのだ。見晴らしのよい高台という表現がしっくりくる場所で、行くたびに「山はいいな」と思う。山頂で見晴らしの良い眺めを楽しみつつお弁当を食べて、歩いて下山して、その日は解散した。行き・帰りの移動も含めて半日程度の、気軽なハイキングだった。
 
家に帰って、1人になって、私は「歩いて下りるよりも飛んで降りたほうが楽しい」という言葉を思い出した。半日山登りしても、山頂にいられる時間はせいぜい30分だけ。それ以外の時間は、木立の中を歩いたり、電車に揺られたり、日常生活の延長のようなものだ。飛んでいる間、ずっとあの「見晴らしのよさ」を堪能できるなら、そっちのほうが楽しいのかもしれない……と考えて、だんだんと興味が湧いてきた。
 
そして、私は、パラグライダースクールの門を叩いた。
 
それから2年半ほど、この趣味を続けている。
 
しかし、「見晴らしのよさ」を堪能したいというもくろみは、狙い通りだった。なんといっても、飛んでいる最中は360度を見渡すことができる。山頂の高さから下に向かっていくだけでなく、運がよければ上昇気流に乗って山より高く上がって、山の向こう側を見渡すこともできる。
 
歩いて下りるか、風に飛ばしてもらうか、という決定的な違いはあるが、パラグライダーは山登りとよく似ている。山登りは、日本人なら、誰しも1度はやったことがある身近なスポーツ。小学校の遠足の定番でもある。それに比べて、パラグライダーは専用の装備がないとできない、たまに事故が起きてニュースになる、なんだか仰々しいものと思われがちだ。
 
でも、山も空も、自然のなかで遊ぶには、それなりの準備がいる。たとえ低い山でも転んで動けなくなることはあるし、近所の山でも雨風のなか歩いていたら方向がわからなくなることはある。
 
以前、高尾山だから別に山の道具は必要ないよ……といったら、サンダルで来た友人がいて困った。それは極端な例だが、準備なしで山に入るのは、どんなに身近な場所でも危険なことだ。
 
そして、どちらも楽しみ方は人それぞれ。どんどん高い山・難しい山にチャレンジする人もいれば、近所の山を何度も訪れて季節の変化を楽しむ人もいる。
 
パラグライダーも同じで、できるだけ長い時間飛んであわよくば遠くに出かけようとする人もいれば、「楽しく色々なところに飛びに行ければいい」という人もいる。登山もパラグライダーも、10年以上続けている人と話すと、それぞれ自分に合ったスタイルで趣味を楽しんで、良い顔をしている。
 
あの日のおじさんから聞いた「誰でも飛べるよ」の言葉は、真実だった。私はとても良いかたちで新しい趣味に出会うことができたと思う。名前も知らない人だが、感謝している。
 
そのおかげで私の家計簿の「娯楽費」の項目は膨らむいっぽうだが、それはまた別のはなし……。
 
 
 
 

***
 
 
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2019-09-26 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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