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メディアグランプリ

超ブラック企業で働き始めました


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:射手座右聴き(ライティング・ゼミ秋の集中コース)
 
 
こんな会社、もうしんどい。とんでもない仕事になってしまった。
入社した日から思っている。
このしんどさ、いつまでつづくのだろうか。
毎晩毎晩、そう思う。
でも、やめられない。転職先を探したところでもう、今までとは違うのだ。
年齢制限で書類が通らない、なんて甘いものではない。
もう、51歳。就活サイトで言えば、シニアのジャンルにはいるのだ。
正社員というよりパート、アルバイトがメインだ。
よく募集がかかるのは、マンションの管理人さん、国営放送の集金スタッフ、デパート催事の販売スタッフなどだ。
全くやったことのない仕事だ。不安しかない。面接はどうする。
いままでのキャリアと結びつけ方もわからない。
 
「どうして、広告の仕事から販売スタッフの仕事をしようと思ったのですが」
私が面接官だったら、こう聞くだろう。
しどろもどろになるおじさんよりも、さわやかな女子大生を採用する方が
理にかなっている。
 
マンションの管理人も集金スタッフも、まるで結びつかない。
 
そう考えると、今の会社はまあ、辻褄があう。
ずっといた広告の世界の仕事だ。
 
しかし、業務内容が少し違った。以前在籍していた広告会社とは違った。
フリーランスで仕事をしていた時とも違った。
いままでは、ひたすら広告を作っていればよかった。
キャッチコピー、グラフィック広告、動画といった制作物を考え、
仕上げて納品すればよかった。
言ってみれば、広告会社の下請けだったのだ。
今度の仕事は、直接お客さんとやりとりしなければならない。
受注から納品、請求書の発行まで直接やらなければならないのだ。
 
「営業もやるってことだよな」
数字は苦手だった。いままでなら、間違った見積もりでも、元請けがチェックしてくれた。しかし、今回はそうはいかない。苦手なエクセルを何度も何度も見直した。
 
そればかりではない。打ち合わせが終わったら、お客さんへのお礼のメール。
挨拶の手土産。思いもよらない仕事があった。
 
営業と企画、ダブルワーク。朝の8時から夜は2時過ぎまで、仕事が続く。
「これは大変なことになった」
でも、それだけではなかった。
 
健康保険証を変えるのも、自分の仕事だった。オフィスを借りるのも自分の仕事だった。銀行と会うのも。登記簿謄本まで取りに行かされた。印鑑証明も。
 
なんという会社だろう。営業、企画、どころか、総務、人事、経理、
全部やらせる会社だ。やらざるを得ないのだ。
 
そう。
  
ブラック企業は、自分の会社だ。51歳にして、私は起業したのだ。
サラリーマンを辞めて7年。のびのびとフリーランスでやってきたのだが、
ついに会社を設立したのだ。
 
20代、30代の若者なら、わかる。
60歳定年のご時世で、仕事が減っていくはずの年代で、なぜ。
 
世の中を変える、なんて夢はない。
社会をよくする、なんて志はない。
大きな会社にする、という野望もない。
 
切実な理由があった。
 
フリーランスでやっていけない事情が生じたのだった。
税金が倍になった。国民健康保険が倍になった。
でも、儲かっているわけではなかった。
一年前の未払いが返ってきただけだった。
その前の年、ダウンした売り上げが補填されただけなのに。
年収がアップしたことになってしまったのだ。
 
滞納した税金、保険料を払ったら、あっという間にお金はなくなった。
 
さらに、フリーランスの罠があった。
仕事をしているのに、赤字がでる。それも嫌だったのだ。
個人事業主は、売り上げの10.21%を源泉徴収される。
つまり、10.21%以上の原価がかかった場合、赤字になるのだ。
どんな仕事も手間はかかる。なのに、赤字というのは少額でもがっくりくる。
 
お金のことばかりではなかった。
打ち合わせのとき、肩書きもなく、「山本さんです」と紹介されるのが辛くなってきた。「お前誰」という顔をされる。「○○会社の」という肩書きがこれほどまでに大事なものなのか、と思い知らされた。フリーランスは、自由な生き方、というけれど、ある局面では、野良犬のような気持ちにさせられた。
 
そんな切実な思いから、私は会社を作った。最初に思ったことは
「会社には、自分が知らない仕事がこんなにあるのか」ということだった。
総務、人事の方々がいてくれたおかげでどれだけ助けられていたのか。
経理の方に、「経費の振込まだですか」と言っていたのが恥ずかしくなった。
営業の人たちがどれだけお客さんと向き合っていたか。
なんにもわかっていなかった。51歳にもなって、だ。
 
昼間は営業、朝と夜は企画。週末に総務人事や事務作業を仕込む。全部一人で。やればやるほど、いままで出会った人への感謝があふれてきた。
 
会社を辞めたから、会社を作ってみたからわかる、ありがたみ。
超ブラックで働いているからこそ、わかるプロの仕事のありがたみ。
 
疲れるけれど、ありがたみを感じるのは、悪くない。
もう少しだけ、続けてみようかな。超ブラック企業。
設立の時期が終われば、グレー企業くらいにはなれるかな。
 
そうそう。保険料も決まったことだし、給料計算をしなければ。
また、知らなかった「ありがたみ」がわかるのだろうか。ワクワクするなあ。
 
 
 
 
***
 
この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。 「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、WEB天狼院編集部のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。
 

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2019-10-16 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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