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メディアグランプリ

カレー屋さんから学んだこと


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:高橋 弘旭(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
僕はカレーが好きだ。
 
ショッピングの帰り、外でお昼ごはんを済ませようとしたとき、
 
― 何食べよう?
― カレーにしよう
 
と、心の会話のやりとりが9割を占める。カレー屋さん巡りとまではいかないが、たまに、インターネットでおいしそうなカレー屋さんを検索し、ショッピングついでに足を運んでいる。
 
カレーが好きといっても、苦手なカレーもある。例えば、ほうれん草カレー。カレーなのに緑色という違和感があり(これは個人的な偏見)、今まで食べたことがない。あとはシーフードカレー。シーフードがあまり好きではないため、ほとんど食べたことがない。
 
真のカレー好きから言わせれば、その程度でカレー好きとうたっている僕は邪道かもしれない。それでも、僕の好きな食べ物上位3つに、必ずカレーが入る。「子どもか」と突っ込みが入りそうだ。
 
僕のカレーを好きになったのは、あるカレー屋さんがきっかけだ。
 
小学生のころ、僕はスイミングスクールに通っていた。学校が終わると一度帰宅し、スクールの準備をしてから母に車で送ってもらっていた。スクールが終わると、迎えを待つ母と、ときどき立ち寄る場所があった。それはカレー屋さんだ。
 
「ハンバーグカレーがいい」
 
そのカレー屋さんで、母と夕飯を済ませることが時々あった。僕は毎回決まって頼むメニューがある。ハンバーグカレーだ。ライスの上にカレールーとハンバーグ、ハンバーグの上にスライスされたゆで卵がのっている。そしてゆで卵の上にマヨネーズがかかっている。僕はマヨネーズが苦手で、母に毎回とってもらっていた。ちなみに、今も苦手だ。
 
マヨネーズがなくなったハンバーグカレーは、当時、まぁ美味しいかなと思う程度であった。とはいいつつ、「今日はカレー屋さん行くのかな?」と、スイミングスクール後の楽しみになっていた。
 
しばらくして、カレー屋さんが閉店すると聞いた。当時は、「もう食べられないのか」と思う程度だった。そしてカレー屋さんは閉店した。僕はというと、スイミングスクールはしばらく続けていたが、辞めることになった。学校の成績が良くなく、塾へ通うことになったのだ。
 
あれからほぼ20年。僕は今でも、そのカレー屋さんを覚えている。お店の前の駐車場は車が3台止められる。濃い茶色のドアに、少し狭めの店内。ソファ席があり、テーブルは少し低かった。そのソファの色はワインレッドだった。そしてハンバーグカレー。目を閉じなくても、すぐに思い出せる。
 
そんなお店のカレーが、今でも無性に食べたくなる。ほかの人からみると、小学生が母親と一緒にカレー屋さんで食事したという、ありふれた出来事だ。しかし僕にとってはありふれてなんかいない。あのカレーは、あのお店でしか味わえない。
 
これほどに、お店のことを覚えているのは驚きだ。きっと、そのお店のカレーには、僕の心をつかんで離さない「何か」があったのだ。その「何か」が、僕をカレー好きにさせたのだ。カメラマンが一心不乱に、今しか見られない風景を撮っているときのように、そのカレーは僕の心をつかんで離さなかった。
 
時は流れ、社会人になった。そして、カレー屋さんの思い出と似た経験をした。
 
社会人3年目のとき、横浜に住んでいた僕は、仕事帰りや、休日の夜に軽く飲めるお店を探していた。そして、見つけたのだ。個人経営、カウンター席のみで、家から近く、安くて美味しい居酒屋を。初めて来店したときは緊張したが、居心地がよく、自然と足を運ぶようになった。平均すると、2週間に1回は飲みに行った。
 
それから数年後、満員電車に嫌気がさし、その地域から引っ越すことになった。おそらく、もうその居酒屋には通わないだろうと思った。案の定、引っ越してからは頻繁には通わなくなった。とはいっても、横浜に用事があったときは、ちょこちょこ飲みに行った。
 
ある日、横浜で用事を済ませた後、ふっと、あの居酒屋に寄ろうと思いついた。そしてお店の前まで行った。そのとき「えっ?」と、時間が一瞬止まった。僕が通っていた居酒屋は、別の居酒屋になっていた。
 
― もうあの料理は食べられないのか。もっと通っておけばよかった。
 
そう思っても、あの居酒屋はない。小学生のときに食べたカレー屋さんのように、もう二度と食べることができない。どう思ったってもう食べられないのだ。それ以降、深く考えることはやめた。
 
― カメラマンって、こんな気持ちなのかな。
 
帰り道、ふっと思った。天気、気温、季節、背景がまったく同じ瞬間はない。だから、最高の状態と感じたらシャッターを押す。その瞬間はもう戻ってこないから。撮り損ねて、後悔することも多々あるはずだ。しかし、その最高の瞬間に、時間を巻き戻すことはできない。だから、今「最高」と感じたらシャッターを押すのだ。そしてその写真は、忘れられない1枚になる。
 
カレー屋さんも居酒屋も、開店していた時に時間を戻すことはできない。しかし、それを食べた人々の心の中には残っているのだ。少なくとも、僕の心の中には残っている。
 
僕は、ずっとそこにあり続けることの難しさを感じた。それは飲食店だけに限らず、日常生活の中でも同じこと。行こうと思っていた場所が、行ったときにはなくなっているかもしれない。
 
だからこそ、普段の生活で当たり前になっている「場所」に、当たり前のように行けることに感謝したい。そして、僕を迎えてくれる「場所」を大切にしていきたい。
 
 
 
 
***
 
この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。 「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、WEB天狼院編集部のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。
 

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2019-10-16 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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