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メディアグランプリ

恋と酔い


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:hr(ライティング・ゼミ秋の集中コース)
 
 
「聞いて! 話があるの!」
女友達から突然、電話がかかってきた。きっとまた好きな人ができたのだろう。彼女は恋多き女性なのだ。話を聞くと、今回惚れた相手は、彼女が通うフランス語教室の先生らしい。
 
「もう顔から性格まで、全てがほんとうに素敵なの! モデルの仕事もやっていて、趣味は料理で……」彼女はこちらの返事を待たずに話し続ける。その先生は、30代後半のフランス人で、未婚。料理が堪能で、端正なルックスを生かして日本でモデルの仕事も行なっているらしい。適当な相槌を打ちながら、私は、今回の彼女の恋が、いつまで続くのか考えていた。
 
彼女とは大学時代からの友人だ。大学生の時から、その破天荒な恋愛で周囲を楽しませてくれてきた。同じゼミの男から、留学先で出会った韓国人、イタリア料理屋でナンパしてきたイタリア人……。彼女の好きな人が変わるたびに、私たちは一緒に飲みに行き、その愉快なエピソードを肴に盛り上がった。
 
しかし、今度の彼女のターゲットは、今までと少し異なる。それは、彼女以外にも先生を狙っている女性が数多くいるということだ。彼女が通うフランス語教室で学んでいる生徒は、ほぼ女性で、全員が先生のファンらしい。また、モデル活動を行なっているため、全国各地に顔ファンがいるのだそう。
 
彼女はハードルが高ければ高いほど、燃えるタイプである。絶対に彼をものにしてみせると電話越しに息巻く彼女に、私は無責任な声援を送った。
 
お酒に酔うと自制が効かなくなって、変な行動をしてしまうように、人は恋をするとおかしくなる。恋愛は人の愚かさや妄想、うちに秘めていた変態性を増幅させる。情緒不安定になり、些細なことで嬉しくなったり悲しくなったりする。
 
彼女の言動は、日に日にそのクレイジーさを増していった。街中で突然「キスしても落ちないリップが欲しいの!」と叫んでデパートに走り、また別の日は、好きってどういうことだか分からなくなってしまったと泣きながら電話してきた。溢れ出る女性ホルモンを抑えるために毎晩5キロ走るようになり、彼に見合うセクシーでチャーミングな大人の女性になるのと言って、布の面積がやたら少ない服を大量に購入したりしていた。
 
ある日、彼女から絵を描き始めたという連絡があった。正攻法で落ちる相手ではないため、油絵で先生の肖像画を描いて、自分の想いと一緒にプレゼントするのだという。ヨーロッパか平安時代の貴族なのだろうか。
 
言い忘れたが、彼女は絵を描くのがとても上手い。大学時代は美術部に所属し、油絵を描いていた。今回、プレゼントする予定の作品は、先生の美しい鼻筋のラインを描くために、横顔を描きたいらしい。背景には、先生の得意料理を描き込むつもりだという。横顔のイケメンの背景に、びっしりと描きこまれたラタトウィユやブイヤベースを想像して、私はめまいがした。
 
恋というのは非常に危険なお酒だが、往々にして我々は、それと気づかずに飲んでしまう。そしていつも、自分がひどく酔っ払っていたことに、激しい二日酔いと後悔の中で気づくのだ。
 
彼女はなかなか特殊なケースだが、誰かを好きになって一喜一憂していた時間を、あとから冷静になって振り返ると、誰しもが頭を抱えてしまう記憶の一つや二つは必ずあるのではないだろうか。深夜に勢い余って送ってしまった重すぎる長文メールや、別れを切り出された際に見せた己の情けない言動。脳みそにチューリップ畑ができているとしか思えないポエミーな発言の数々。思い出すだけで、地面にうずくまり、そのまま石化してしまいたいという衝動にかられる。
 
結果からいうと、彼女の恋は、残念ながらうまくはいかなかったようだ。作品を完成させたことに彼女は満足してしまい、その恋心は燃え尽きてしまった。今回のお酒は度数は強いが、突然酔いが冷めるタイプだったようだ。
 
でも大丈夫。お酒の種類が星の数ほどあるように、恋する相手だって無限にいる。たまに強いお酒に当たったりもするけれど、素敵な気持ちにさせてくれるお酒だってたくさんある。
 
最近、彼女からまた連絡があった。今は芸人に恋をしているという。駆け出しの彼を応援すべく、せっせとライブに通い、出待ちする日々を送っているそうだ。今度はどんなお酒だろうか。
 
 
 
 
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2019-10-23 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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