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メディアグランプリ

肉体労働を、取り戻せ。


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事: MDR(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「えーこわーい」と言っていた女子が、
スライド丸ノコを駆使して、フローリングを切りはじめる。ギュイーン。
「はーい、1275ミリ、切れましたー!」
この瞬間が、好きだ。
 
私は建築士。参加型の場所づくりに取り組んでいる。一般的な建築現場は職人のみで作業をするが、そこに一般人が関わるプロセスをつくる。フローリングを張ったり、しっくいを塗ったり、土壁下地の竹を編んだり。つくるプロセスを共有することで、その場所は特別な場所となる。そして何よりも、体を動かしてモノをつくる、肉体労働の「テゴタエ」を共有したいのだ。
 
肉体労働は3Kと言われる。キツイ、キケン、キタナイ。そのとおり。
でもその中に、何か、人間として大切なものがあるんではないかと思う。
 
原点は、京都の町家改修に関わった学生時代。
作業はおよそ、こんな感じだ。
まず、ワークマンに行って作業着を買う。
空き家になって久しい町家から、ホコリまみれの荷物を運び出す。
柱や梁を、何度も何度も雑巾掛けをする。
崩れかけた土壁を、バールのようなもので壊す。
土を一輪車に乗せて運び出す。
土に水を入れてぐっちゃぐっちゃと練る。
竹の下地を編み、その上に土を塗る。
塗装作業で、柿渋という塗料を塗る。
ずっと上を向いているから、首も肩もカチカチになる。
一日作業すれば、鼻の穴は真っ黒。
夜は丸太のように眠る。
翌日は全身筋肉痛。
 
最初はびっくりした。うわ、こんなことまでやるんだ。うわ、こんな重いもの運べない。
 
でも、すぐに楽しくてたまらなくなった。
それは、縄文人のモノづくりの喜びのようなものだった。
体を動かして何かをつくる。何度も試して、試行錯誤する。失敗して、やり直す。みんなで協力して重いものを運ぶ。そして何かが形になる。原始的かもしれないけれど、人間が動物からホモサピエンスになって、住みかをつくったり、土器をつくったりし始めた時の喜びって、こういうものだったんだろうなと思った。ワクワクする肉体労働。自分で何かをつくること。
 
今の生活は、体を動かす作業から遠く離れている。一日パソコンの前に座って、頭で考えるだけ。頭で考えたものだけが価値を生むと、それこそ頭で考えすぎなんだろう。体は声高に主張しない。でも、体を動かしてみると、頭と体をどっちも使って、はじめて人間はバランスがとれる、ということに、きっと気がつくはず。
 
体を動かせばいいなら、ランニングやウォーキングでいいと思うかもしれない。確かにそれも素敵だ。でも、スポーツがもともと産業革命でヒマになった貴族が発明したものであるように、しょせん「余暇」の過ごし方、と言っては言いすぎだろうか。もっと暮らしの一部に、肉体労働を取り戻せないかと思う。薪割りとか、畑仕事とか、DIYとか。
 
DIYはブームでもあるけれど、それも当然だと思っている。DIYは、分かりやすい「出来た!」という喜びを、ダイレクトに感じられるから。普段の生活では、効率よく、結果を出して、業績も上げつつ社会貢献もしてとか、求められることは増える一方。そんなの複雑すぎて無理ゲーだ。メンタルを病んでしまう人も多いのも当然と思える。
 
つまりは、人の暮らしがブラックボックスになってしまっているのだろう。スマホやら車やら家電やら、モノはあふれているけれど、それが何で動くのかは分からない。Amazonで何でも届くけど、何で届くのかは分からない。すべてのものはインターネットにつながって、スマートになったようだけれど、何となく不安で、何となく混沌としている。どこかに、手がかりが欲しいと思うのは当たり前かもしれない。
 
モノをつくることはもう少しシンプルだ。
木を切って、穴をあけて、ネジでつないで。一本の木の重さを感じて。木くずの匂いをかいで。お金を払ってAmazonでモノが届くことでは得られない充実感が、そこにはある。仕上がりは、買ったものほど小ぎれいではないかもしれない。もしかしたら、買った方が安いことだってあるかもしれない。でもそこには、そのモノと向き合った時間がある。だって、自分でつくったんだから。だって、壊れたら直せるんだから。そのテゴタエが、自信になり、生き方になる。
 
フローリング貼りワークショップに来てくれた50代の男性は、脱サラしてビールバーを始めた。お店はセルフビルドでリノベして、ワークショップのメンバーが、壁やら床やら手伝いに行った。
お母さんに連れられてきてしぶしぶ床を貼っていたように見えた中学生は、高校で建築科を選んだ。
 
一日の作業が終わった夕方。
木っ端を燃やしていると、作業を終えた人たちが何となく集まってくる。
おじさんはタバコを吸い、ある人はコーヒーを飲み、ある人は火に木をくべる。
だれも声高に言わないけれど、そこはかとない充実感。
だれも声高に言わないけれど、そこはかとない一体感。
この空気感は、縄文と何一つ変わらないはず。
 
肉体労働は、生きる原点だと思う。
 
ブラックボックスを出て、「自分でもできるかも」というテゴタエに気づく人を、少しでも増やしたい。
 
 
 
 
***
 
この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。 「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、WEB天狼院編集部のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。
 

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2019-11-14 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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