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認知症は楽しいかもしれない


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:花咲花子(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「おとうちゃん出かけるよ! あれ靴がない! なんでないの」
何かの間違いであってと祈りながら恐る恐る居間の扉を開けるが誰もいない。
「どこへ行った?」
双眼鏡を持って2階に上がり、辺りを見るが、今日は爽やかな五月晴れ。田んぼの苗や畑の野菜が持ちよさそうに日に当たっているが、父の姿はもちろん、ご近所さんもだれ一人姿が見えない。
「困った」
まず家の中から「お父ちゃん。どこ?」「お父ちゃん 出かけるよ。仕事にいくよ」と大きな声で呼んでみても反応なし。
「しまった。2階で洗濯物を干している間に、父が家から出て行ってしまった。注意していたつもりなのに玄関を開ける音に気付かなかった」いくら悔やんでも後の祭り。
 
父は、75歳。1年くらい前から気になる症状があった。カレンダーに予定が書いてあっても会議への出席を忘れていることがあった。また機械を触ることが好きだったのに田植え機の使い方が全くわからなくなるなど、今までの父からは考えられないことが起こっていた。
それだけではなく、会議を忘れていたときも「自分は連絡をもらっていない。事前に連絡をしてもらわないと困る」と連絡してくれた方に怒ったり、田植え機は「ここがおかしい。ここもおかしい」とあちこちのネジを外してしまい、回復不可能な状態になり、「そんなことしなくても良い」と言っても「何を言っているんだ」と逆切れされ、手を上げ掴みかかられそうになるなど手に負えなくなっていた。
 
かかりつけ医に症状を説明すると「認知症でしょう。薬を処方しますので、様子を見てください」とのこと。薄々は気付いてはいたが、何か別の事情で混乱していると思いたかったが、「認知症」と診断された。
 
とは言っても父はすこぶる元気で力もあるし、会話も普通に出来る。新聞も毎日読んでいるし、テレビも楽しそうに見ている。
 
しかし、突然、「ここにあった。財布がない。お前どこか隠したやろ」と騒ぎ出したときには、目が吊り上がり、体も戦闘モードで迫ってこられる。こちらも「何であんたの財布を隠す必要があるの。自分で仕舞ったところを忘れているだけやろ」と答えてしまうと「なんやとー」と手が上がり殴られそうになる。
 
物を亡くした騒動は、鍵や財布、時計等ほぼ毎日、日課のように発生した。何を探しているのか聞いても「何を探しているのかわからない」と返事されることもあり「何を探しているのかわからななら見つかるはずないやん」と、こちらも口調がきつくなり、毎日喧嘩ばかり繰り返してしまっていた。
 
喧嘩ばかりでは、お互いに良くないので、何か解決方法がないかと介護の本を読み漁った。本によると物探し症状が現れたときには、「父と同じ世界に入ること、女優になって演技
をしましょう」と書かれていた。演技に自信はないが今の状況を少しでも改善しなければならないと思い実践することにした。
 
「車の鍵がない」と引き出しを探している父に「あれーどこ行ったんやろうね」「一緒に探そうか」と声をかけると「そうか」と予想外に素直な返事。車の鍵は運転をすると危ないので家の中には置いていない。いくら探しても見つかるはずがない。
こうゆう場合には、「今日はどこ行くんやった?」とか「おなかすいてない?」とか「今日おもしろいテレビがあるよ」と探し物とは違う話をして興味を別のものに向けないといけないらしい。
 
「鍵ないね。困ったなぁ。ところで今日はどこへ行くんやった?」
「今日は仕事に行くんや」
「えっ! もう退職して何年も経っているのに? 仕事に行くの?」と、心の中でつぶやき、「私は女優。次のセリフを考えなければならない。そういえば困ったときは、本人の言葉を繰り返す」という介護の本に書かれていたことを思い出し、
「そうやなぁ。今日は仕事に行く日やったな。私が送っていこうか」
「おまえ車運転出来るようになったんか。お前の運転では心配やなぁ」と少しうれしそうな父。
「運転出来るよ。任せて」
 
無事「もの探し騒動」から解放された。
「出かける準備があるので少し待ってて」と時間を稼ぎ、洗濯を済まそうと欲張ったことが失敗だった。
 
「もの探し」からは解放されたが、父は家から出て行き、新たな問題を発生させてしまった。
 
家の中で姿が見えなかったので、父が通勤に使っていた道を探すために車で向かう。車を運転していると道端で楽しそうに談笑している父の姿を発見。
「おう! こっち! こっち! 迎えに来てくれたんか。ほな帰るわ。これうちの出来の悪い娘。わはは!」と私のことを紹介し車に乗り込んで来た。
「えっ! こんなに努力しているのに、出来の悪い娘なん」
 
 
 
 
***
 
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2019-11-14 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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