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母が愛される理由


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:一ノ瀬 朔(ライティング・ゼミ平日コース)
 
母は大事にするべき存在。
 
これは我が家の共通認識である。
 
父、兄、私の間で、その認識を声にして交換し合ったわけではないが、これは、暗黙の了解というやつだ。
 
どうして母は愛されるのか。
 
その答えは、母が我が家で一番強いスーパーマンであるからだ。
 
私の中で、その答えが発見されたのは、まだ私が中学生の頃の話だ。
 
その日は、午前中に部活動があり、家に帰った後、夕方の時間帯に病院に行く約束を母と交わしていた。
 
部活が終わり、部活仲間と一緒に帰る。電車に乗り、乗り換えの駅で仲間と別れ、私はいつものように、乗り換えの駅にある公衆電話で母に電話をかけた。
 
「もしもし、お母さん? 今、帰り途中だよ」
 
帰りが遅い場合は、母は最寄りの駅まで車で迎えに来てくれるのだが、その日は、まだ日中だったので、私は「駅からは歩いて帰るね」と伝えた。
 
母は「気をつけて帰ってきなさいね」と答えた。
 
しかし、最寄りの駅から自宅に向かって歩いていた私は、途端に空腹を感じることとなる。
 
そして、そう言えば……と、近くに幼馴染の家族が営んでいる蕎麦屋があることを思い出し、家に向いていた足を方向転換させてしまった。
 
「あら、いらっしゃい。久しぶりね」
 
出迎えてくれたのは、幼馴染の母親だった。小学生の頃は毎日、遊びに来ていた私を笑顔で迎え、「今日、S君いるよ。呼んでこようか」と、嬉しい提案をしてくれたくれたので、私は「会いたいです! お願いします!」と元気よく答えた。
 
少ししてから、お店のお上にある家から、幼馴染のS君が下りてきて、お互いに「久しぶり」と言い合った。1年ぶりの再会に、私はすっかり有頂天になっていた。
 
お蕎麦を食べながら、S君とは色々な話をした。近況報告であったり、思い出話であったり。幼馴染特権として、お蕎麦を食べ終わった後にアイスをもらったりして、楽しい時間はあっという間に過ぎたのだ。
 
帰る頃には、外はすっかり暗くなっていたけれど、幼馴染との久々の時間を楽しんだ私は、夜道も恐れず、足取り軽く家に帰った。
 
しかし、玄関のドアを開けて「ただいまー」と言った私を待っていたのは、怖い顔をした母の姿。
 
「今まで、どこに行っていたの」と、低い声で聞かれて、瞬時に、しまった、と思った。
 
母と交わした病院に行く約束を、綺麗に忘れていたことを思い出したのだ。
 
「S君の家に、お蕎麦を食べに行ったら、つい、盛り上がっちゃって……」
 
「今、何時だと思っているの」
 
「19時、くらい……です」
 
恐る恐る答える私は、この後やってくるお説教タイムに身構えたのだが、母は「本当に、心配したんだからねっ」と、喉から絞り出したような声で言うと、次には、ポロポロと泣いてしまった。
 
申し訳なさを通り越して驚いたし、とてつもなく焦ったことを今でも鮮明に覚えている。
 
「ごめんね、本当に、ごめんなさい」と謝る私に、母は、「ちゃんと、連絡くらい入れなさいよ。悪いことに巻き込まれたと思ったじゃない」と泣きながら言うと、それ以上、私を叱ることなく、自分の部屋にこもってしまった。
 
当然、仕事から帰ってきた父には怒られた。母を心配させたことを反省なさい、と。
 
大人になった今でも、母の涙は思い出せる程度しか見たことがない。
 
私が連絡なく遅く帰ってきたその日と、あとは、大切にしていた愛猫の具合が悪くなってから天国に行くまでの時期。本当に、そのくらいだ
 
仕事や祖父の介護の忙しさで心身ともにボロボロになっていた時期だって、咳の繰り返しであばらの骨に罅が入ってしまったときだって、母は涙の気配すら見せることのない強い人なのに、家族に良くないことがあると、途端に感情を見せるのだ。
 
母は、誰よりも明確に、家族のことを“大切な存在”と認識していたのだと思う。
 
車での送り迎えや家事はもちろん、くだらない仕事の愚痴も最後まで聞いてくれるし、家族が病気になったときは誰よりも熱心に病院を調べたりしてくれる。自分がどんなに疲れていようと、当たり前のように家族を優先することができてしまう母には、スーパーマンの精神が備わっているのだ。
 
大切な存在は大事にして当たり前。
 
そのマインドを徹底することは、シンプルなようで、とても難しい。
 
たとえ大事できたとしても、心のどこかで“いつも~してあげている”と思ってしまうことが多い。それは、誰かのために動くことを“当たり前”と思っておらず、サービス精神として動いている証拠。結局、心のどこかで見返りを求めてしまっている。
 
サービス精神とスーパーマン精神とは全くの別物なのだ。
 
だからか、スーパーマンの母が活躍する我が家では、不思議と“家族サービス”という言葉が使われない。父でさえも「その言葉はあまり好きではない」というくらいに、流行らない。
 
果たして、私も母のように誰かのために尽くすことができているのだろうか?
 
時折、自問し、いや、まだまだ母には追いつけていないな、と首を振り、母の偉大さを痛感する。
 
だからこそ、私は、私たち家族は、母が大事でならない。
 
仕事帰りに、母の好きな栗スイーツを買って帰りたくなるし、母が「渋谷にあるお店に行ってみたいな」と言えば、次の休みには母の希望を叶えるために家族みんなで外出する。一緒に夕飯の買い物に行く時にいたっては、母には重たい荷物を絶対に持たせない。
 
人は鏡。この言葉の意味を身をもって理解できたのは、母の存在あってこそだと思っている。
 
当たり前のように人を大事にできる人は、自然と相手からも愛されるものである。
 
私も、いつかは母のように“愛されるスーパーマン”になりたいものだ。
 
 
 
 
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2019-11-20 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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