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息子を追い詰めた先生に言いたいこと


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:武田かおる (ライティング・ゼミ日曜コース)
 
「スペイン語の先生に、もう僕はスペイン語を勉強するのは無理だからやめたらって言われた」
 
息子は学校から帰って来るなり困惑した様子で言った。
それは2年前、9月に新学期が始まってから2ヶ月位経った頃だった。
 
我が家はアメリカに在住していて、息子はアメリカの公立中学に通っている。スペイン語は第二ヶ国語の教科で日本で言う英語に相当する教科だ。
 
「やめるって、どういう事? スペイン語は必須科目でしょ」
 
「うん、だけど、先生が僕は日本語も勉強しているから、もうスペイン語は勉強しても無理だって」
 
私の頭の中は、はてなマークで埋め尽くされた。
 
まず、アメリカは高校までが義務教育で、中学校のスペイン語等の第二ヶ国語はやめたくてもやめることはできない。それに、二ヶ国語以上話せる人は世界中に五万といるので、日本語と英語ができるからといってスペイン語を学べないという理由になり得ない。そんなことは教育や語学に素人の私にだってわかる。私はスペイン語の先生が、息子を見放したような言葉を本人に投げかけた事が信じられなかった。
 
私は夫に相談し、すぐに校長先生にメールで事情を説明し、解決案を提示してもらうように依頼した。
 
校長先生は即座に対応してくれて、翌日から息子は別のスペイン語のM先生のクラスに移動した。息子の他にも、そのスペイン語の先生からM先生に変わってきた生徒がいたようだった。
 
M先生がしばらくして私と夫にメールを送ってきた。
 
「息子さんがクラスについていけてないので心配している。また、息子さんが習い事が多くて、家でスペイン語を勉強する時間がないとも言っている。
オンラインでスペイン語を学べるサイトがあるので、宿題に加えてそれを自宅で毎日10分間続けるように。心配事があれば何でも知らせてほしい」
 
やはり、息子はスペイン語が苦手のようだった。でもM先生は前の先生とは違って息子の学力を上げるためにどうすれば良いのか具体案を示してくれた。とても熱心な先生だなと思った。先生が指摘されていたように、息子のためにと思って習わせていた空手や数学の塾の習い事も見直すべきだと改めて考えさせられた。その結果、息子と相談して、学校の勉強に比重を置くために、いくつかの習い事は辞めることにした。
 
数カ月後、M先生からまたメールがあった。それは、アメリカの学年末の6月の事だった。やはり息子はスペイン語のクラスについていけないのかとドキドキしながらメールを開いた。
 
「息子さんは、当初クラスの内容を理解するのに苦労していましたが、今では、学年相応のレベルまで達しています。
彼のこの数カ月間のスペイン語の上達はめざましく、クラスでも積極的に発言するようになりました。本当に良く頑張ったと思います。
彼を教えることができてとても光栄です」
 
私は胸をなでおろした。
その翌年も、M先生が息子のスペイン語のクラスを担当してくれたおかげで、息子のスペイン語に対する苦手意識もなくなったようだった。
 
先日、中学の最高学年になった息子が言った。
 
「僕、学校のワールド・ランゲージ・クラブでスペイン語のリーダーになりたい」
 
ワールド・ランゲージ・クラブとは、M先生が組織しているクラブで、放課後に生徒が集まって、第二ヶ国語(スペイン語、フランス語、中国語)を得意とする生徒がリーダーになり、それらが苦手な生徒に教えるというグループだ。数名のリーダーは他の生徒の語学学習をサポートするだけでなく、グローバルの一員としてのリーダーシップのスキルを身に付け、他の生徒にもそれをコーチングしていくという内容だ。
 
私は息子にM先生に相談してみたらとアドバイスした。
 
数週間後にM先生からメールを受け取った。息子がスペイン語のランゲージ・リーダーに選ばれたという内容だった。
 
家族皆で喜んだ後、私は息子に言った。
 
「前のスペイン語の先生、あなたにもうスペイン語の勉強はやめてしまいなさいって言ってたよね」
 
「うん、そんな事言われた」
 
「あのときは悩んだけど、あの先生があんなひどい事をあなたに言わなかったら、あなたはワールド・ランゲージ・リーダーになってなかったような気がする」
 
「うん、僕もそう思う」
 
私は最初に息子にスペイン語を教えた先生の言動は、息子のスペイン語の学力を復活させるためのカンフル剤だったのだと思った。
 
理不尽な事を言う先生ではあったが、あんなにひどい事を言われなかったら、息子はスペイン語に苦手意識を持ったまま、成績も悪いままずっとそれなりに過ごすことになったのかもしれないし、私に助けを求めることもなかっただろう。あの先生のおかげで、M先生に教えてもらうことができて、スペイン語の苦手意識を克服し、さらにワールド・ランゲージ・リーダになることができたのだ。
 
「あの先生にありがとうって言いたいわ」私は息子に言った。
 
「うん、僕も同じこと思ってた。ありがとうってあの先生に言いたい」
 
息子も最初のスペイン語の先生を嫌ったりせずに感謝していることを知って嬉しかった。
 
もし、あなたの前に理不尽な言動を取る人が現れたなら、実はその人は、あなたがより精神的に成長できるように行動を起こすためのカンフル剤なのかもしれない。
 
そうだとしたら、その理不尽な人を目の前にして悩む前に、その状況から抜け出すために何をすれば良いのかを考える事に時間を費やした方が建設的だといえるだろう。それを行動に移した時、将来的にその理不尽な人や物事に「あの時はありがとう」と言いたくなるような事が待っているのかもしれない。
 
 
 
 
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2019-12-06 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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