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メディアグランプリ

生き方変える、〇〇の家。


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事: MDR(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
泥を足でぐっちゃぐっちゃこねる。
泥を壁にむにゅむにゅ押し付ける。
土壁は、大人の泥あそび。
 
私は建築士。土壁の家に取り組んでいる。土壁(つちかべ)は、その名のとおり土でできた壁。竹をフェンスのように編んで、そこに土を塗る。昔の家のつくり方のようだけれど、今でも作れる。いや、今だからこそ、その泥あそびに、生き方を変える力があるのだ。
 
土壁の良さはと言われれば、まず、深呼吸したくなるような室内の空気。調湿性と蓄熱性で、緩やかに室内の空気を整えてくれる。それは、泥だんごの中に住むようなもの。アフリカだって中近東だって土の家、縄文式住居だって掘り込まれているから下半分は土。その心地よさはDNAに刷り込まれている。
 
2つめは、自然素材で土に還ること。現在主流のプラスターボード壁は、解体後は産業廃棄物になり、処理がよくないと有毒ガスを発生させることもある。土壁は、壊して練ればまた壁になる。
 
そして3つめ。何よりも、つくるプロセスを楽しめる、というのが、土壁の最大の面白さ。一般的な家づくりでは、職人さんが家をつくり、普通の人は関わることができない。土壁は、みんなでワイワイ作ることができるのだ。
 
つくりかたはこんな感じだ。
まず、竹を切ってきて割る。スパーンと割るのは気持ちいい。割ってるだけで、竹を割ったような性格になれそう。次に、割った竹を編んでフェンス状の下地「竹小舞(たけこまい)」をつくる。一本一本縄で固定していくと、竹かごのような状態になる。
それから土。土のプールに入って足で泥をこねる。足の指の間に泥がむにゅっと入り込む感覚は何ともいえない。足を取られて泥にダイブする人が続出する。最後に、土を平たいアイロンのような「左官コテ」で塗る。ぐっと押し付けないと竹の下地にくっつかないから、それはまるで一日がかりの筋トレ。
 
どの工程も、慣れてくると小さなコツがつかめてきて、上手になった実感が沸いてくる。体を使ってものづくりをする楽しさ。頭でなく、体が喜んでいる。体験しないと分からない気づきの面白さ。そんな、五感を使う面白さが、土壁にはある。
 
一緒に作業をする中で、共通の話題がないような人とも話が弾む。土を手で塗ったっていいから、子どもだってできる。そのうちに、土を塗る人と土を渡す人のタイミングが合ってくる。みんな違う作業をしながら、同じゴールに向かっている。全然強制はされていないけれど、なんだかゆるい一体感が生まれる。昔の家づくりは、地域の結(ゆい)という共同体で行われ、農家の人たちが農閑期にそれぞれ得意なことを受け持って家を建てた。そんな古い共同体はちょっと重いけれど、作業を通して生まれるゆるい関係は、今また新しく面白がってもらえるだろう。
 
こんなことを、土壁ワークショップとして実施してきた。みんなで竹小舞を編み、土を塗る。一日の作業のあとには、火を囲んでお茶を飲む。空は夕暮れ。汗かいて何かをつくった充実感。作業をともにした仲間感。すでに沸き起こる筋肉痛の予感。「いやー明日は筋肉痛だー」と言いつつ、「とにかく楽しかった!」と言ってくれる。みんないい笑顔だ。
 
体を動かす気づきと、ものをつくるプロセスと、強制でないコミュニティ。そんな、今見えなくなっているものをまとめて見せてくれるのが、土壁なのだ。
 
だからきっと、土壁は生き方を変える。
 
私自身、学生時代に京都の町屋改修に関わったことで、人生が変わった。建築を勉強し始めたときは、デザイナーズ建築に興味があった。でも、土壁を体験して、その奥深さとそのプロセスに魅了された。小ぎれいで破綻してないデザイナーズハウスをノークレームで短納期で作れたからって、それが何だというんだ。当たり前だと思っていたことが、体験を通してひっくり返された。どう暮らすのか、どう生きていくのかに向き合わされた。
 
効率や確かさを求めて行き詰っているのが現代だとすれば、混ぜて、塗って、乾かすという、標準化できない不確かなものの中に、ものの見方を変えるきっかけがあるのかもしれない。
 
実は私自身、自分の家をつくり始めたばかり。先週、家族で竹を切ってきた。小学生と年長の子供が、竹を切り倒す。すぐ飽きるかと思ったら、10本も20本も竹を切っていた。暑い暑いと服を脱ぎ捨てながら。その竹は割られて土壁の下地になる。軽く100年はもつ家になるはずだから、その中でこの竹がずっと存在するのだなあ、という事実に、静かに感動した。
 
土壁のデメリットは手間と時間とコストだけれど、みんなで参加してつくりあげる物語のための時間と思えば、そう悪くはないのではないか。ちょっとひいき目だけれど。
 
プロセスを楽しむ。メンドクササも楽しむ。土壁を通して、ブラックボックスばかりになってしまった今のくらしに、「つくるテゴタエ」を取り戻したいと、思うのだ。
 
 
 
 
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この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。 「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、WEB天狼院編集部のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。
 

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2019-12-06 | Posted in メディアグランプリ

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