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メディアグランプリ

誕生日にすべきたったひとつのこと


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記事:yokon(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「ママ、おたんじょうびおめでとー」
目をこすりながら階段を下りてきた4歳の娘が抱きついてきた。
昨年までは言わされていた感満載だったのに、今年は誰に教わったのか、ちゃんと私の誕生日を覚えていて朝一番に言ってくれた。素直に嬉しい。
 
そう、今日は私の30回目の誕生日。
 
特別変わったことはない。洗濯物を干して、イヤイヤ真っ盛りの2歳の息子を起こして着替えさせ朝ごはん。ふたりを保育園に送って、2ヶ月の娘の授乳とおむつ替え。寝てくれたら急いで台所シンクに残っている皿を洗う。
ガラケー時代のように日付が変わる瞬間にデコメが来るわけでもなければ、学生の頃のように朝まで友人と一緒に飲んではしゃぐわけでもない。今年も、ケーキのろうそくは子どもたちに消されてしまうし、飾りのイチゴやチョコのプレートだって私のものにはならないだろう。
 
それでもこの特別感への期待と、安心感を覚えている。
そして、30という節目はなんだか特別だ。
誰にとって……?
 
3人の子の母になって思う、やっぱり誕生日は母にとって特別だ。
そう、言い換えよう。
今日は、私の母にとって母親30周年記念日だ。
 
やっと一息ついたので、コーヒーを淹れようとドリッパーに手を伸ばし、やめた。今日は、あまーい紅茶の気分だ。母が遠足の日だけ水筒に入れてくれた黒砂糖3杯も入った母の味。
 
私は4人兄弟の第一子として産まれた。微弱陣痛と言われ促進剤を打たれたそうだ。産まれてすぐに心房中隔欠損症、多呼吸ということで保育器に入ったらしい。お世辞にも可愛いとはいえない一重でつり目の赤ちゃんだった。母乳はたくさん出なかった。義母、つまり私の祖母からは愛のあるおせっかいを受けたであろう、今なら容易に想像できる。
 
自分が産まれた時のことをちゃんと聞いて理解したのは、私が第一子を産んでからだ。
何度も聞いていた話だったが、実体験を通して母の記憶が私の中を駆け巡った。その当時の母の気持ちに寄り添うことは、自分で産んでみるまで本当に、本当にわからなかった。
 
私が長女を産んだ時、陣痛を感じ始めてから24時間、子宮口全開から数時間、結局、回旋異常で緊急帝王切開になった。ちゃんと産めなかった無念。全然完璧じゃなかった。満足いくお産ではなかった。娘が産まれたその日、つまり娘の誕生日、当事者は私だった。
 
保育器に入れられ手術室からでた娘を写した写真がある。お世辞にも可愛いとはいえない、くしゃくしゃの私そっくりの赤ちゃんだった。それでも、愛おしいとはこういうことか、と思った。
 
助産師さんに、「おかあさん」と呼ばれるこそばゆい感じを母も感じていたに違いない。
私が産まれた日、母は初めてお母さんになったのだ。そんな当たり前の事実にびっくりした。
 
まったく違う世界だった。持っていた知識を経験した、とでもいうべきか。
世の中のお母さんが急に尊敬の対象に変わった。抱っこ紐の肩にかかった重圧は想像以上だった。顔の作りが多少悪くても我が子は本当に可愛かった。
自分の世界と違うところは、読めば知ることができると思っていた。でも、違った。
旅行記を読んで行った気分になっていたイタリアで、実際に食べたパスタの幸せな匂いだった。モンゴルの大草原で、実際に満天の星空の下に立った時の孤独感だった。
 
人それぞれ、母を認める瞬間は違う。私にとっては、それが娘の出産だっただけだ。しかし、あなたの誕生日は、あなたのお母さんが頑張った日。これだけは、かぐや姫や桃太郎でない限り事実である。
 
その事実に気づいたら、遅いことはない。ちゃんと伝えよう。
 
携帯電話を持ち始めてからだったか、進学のため一緒に住まなくなってからだったか、誕生日当日の産まれた時間に母からメッセージが届くのが恒例になっていた。
 
でも、今年は待たずにLINEした。
「お母さん30周年記念日おめでとう」
 
誕生日にすべきことは、これだけだ。産んでくれた母への感謝だ。
もちろん、夫からサプライズがあれば嬉しい。久しく会ってない友人からメッセージがくるのも、嬉しい。ヘアカット10%OFFなのも嬉しい。でも、娘の出産を通して「祝ってもらって嬉しい」よりも、母に共感し「生まれてきて嬉しい」に変わってきた気がする。
 
母への感謝。
当たり前だろ、そう言える人もいれば、わかっちゃいるけど気恥ずかしかったり、ピンと来なかったりする人もいるだろう。
 
それぞれのライフステージによって、誕生日の意義は変わる。それでいいと思う。
 
でも、もしそれに気付けたら、
「〇年前のお母さん頑張ったね! おつかれさまだったね」
そう言えたら最高に幸せだ。母が生きているうちに、それに気づけたことは私の人生で一番の収穫かもしれない。歳を重ねるだけで、ありがたい。それを気付かせてくれた娘にも感謝だ。
 
LINEの返事が来た。ちょうど私が産まれた時刻。
「今産まれた! おめでとう!」
 
 
 
 
***
 
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2019-12-21 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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