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メディアグランプリ

『12月24日の魔法使い』


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:高遠にけ(ライティング・ゼミ平日コース)
 
12/24の空気を吸い込むと、心はいつも温かくなる。
 
ケーキやごちそうを片手に、せかせかと歩くお母さん。
大きなプレゼントを大事そうに守りながら、窮屈な電車に乗り込むサラリーマン。
浮足立つ街と反するように、手を繋ぎながら歩くゆっくりゆっくり老夫婦。
 
いろんな人に12/24の思い出があり、懐かしかったりやさしかったり、ひょっとしたら悲しかったりする記憶。
 
私にも、12/24には大事な記憶がある。
 
子どもの頃、毎年クリスマスになると、実家にはどこからかホールケーキが届いた。
子どもなりに、クリスマスシーズンになるとケーキ屋の前を通れば山のようなケーキが売っていたし、テレビでもCMしていたし、プレゼントはサンタクロースが届けてくれるけれど、クリスマスケーキは母が仕事帰りに買っているのだと思っていた。
しかし、母に尋ねるとどうやら違うらしい。
 
「じゃあ、このケーキは誰が買ってくれたの?」
「12/24に全国の家にホールケーキが届けられるようになっているんだよ」
 
母の答えの意味がちょっと分からなかったが、ケーキ工場みたいなのがあって、そこから届けられているということで理解していた。
 
12/24にケーキを食べることも、サンタクロースがプレゼントをくれることも当たり前だった。
ホールケーキが魔法のように家に届くことも、当たり前だった。
 
ホールケーキは毎年ショートケーキの白いホールケーキだったが、ある年に「今年はチョコレートケーキが食べたい」と母に訴えると、無事にその年はチョコレートケーキが届けられた。
こちらの希望も知っているなんて、本当に魔法のようだった。
 
不思議なのは、12/24に母がどこでそのケーキを受け取っているのかだ。
当日いつの間にか食卓のセンターにケーキが鎮座しているのだ。
 
きっと魔法使いが魔法を使ってケーキを届けてくれたに違いない。
魔法で作ったケーキだから、その辺のケーキなんかより全然美味しいんだ。
チョコレートケーキがいいと願ったら、希望も叶えてくれたし、素敵な魔法使いに違いない!
 
妄想は膨らむばかりだった。
 
小学5年生くらいになってサンタクロースが誰なのかの秘密が解けても、ケーキの謎だけは解けなかった。
どうせ母が買っているのだろう、と問い詰めても、違うと言い張る。
いったい誰がケーキを届けてくれているのだろう。
ケーキの謎が解けたのは、中学生になってからだった。
 
私がまだごく小さい頃、叔父叔母が私を預かってくれていた。
共働きに出ていた両親が帰宅するまで、叔父叔母が面倒を見てくれていた。
叔父にはたいそう可愛がってもらったし、叔母曰く「小さい頃は本当に可愛かった」らしい私は、たいそう甘やかされていたのだろう。
小学生になっても、何かにつけて叔父叔母の家に遊びに行っていた。
 
そして中学1年になった12/24のクリスマス・イヴ、叔父がホールケーキを携え自宅を訪ねてきてくれた。
 
私は「あ!」となった。
 
小さい頃から届く、不思議なケーキ。魔法使いの正体は叔父叔母だった。
ずっと叔父叔母が買ってくれていて、母に手渡してくれていたのだ。
その年は図書券も添えられていた。
なんで気づかなかったんだろう!
 
そこから高校卒業の18歳まで、12/24になると2人の魔法使いはホールケーキと図書券を贈ってくれた。
お陰で私はたくさん本に触れることができ、たくさん読書ができた。
本という世界へのめり込ませてくれたのは、この図書券のお陰である。
 
12/24にクリスマスケーキをホールで食べ、翌日本屋に直行して、好きなだけ本を買って読み耽ることがルーティーンとなった。
 
本を買うことは特別だった。
図書館で読む本と違い、本屋で納得するまで本を選び、自分で買った本を自宅で大切に読むことは、とても贅沢に思えた。
そんな本との楽しみ方を教えてくれたのも、魔法使いの叔父叔母のお陰だ。
ホールケーキと図書券は、全て私の血となり肉となった。
 
12月になると、私は必ず叔父叔母のことを想う。
 
大きくなった私を目の前にして、「小さい頃はそりゃあ可愛かったんだよ」なんて、目を細めて語る叔母は、今日も元気だ。
そりゃもう私は可愛くなくなった中年だけれど、今も愛嬌はあるんだよ、と苦笑いしながら、叔母と笑った。
2年前に空へ帰った叔父も、笑っているに違いない。
 
今年もクリスマスがやってきた。
私は誰に言われるまでもなく、ホールケーキを買って家路についた。
12/24はホールケーキを食べ、明日は本屋にいってたくさん本を買おう。
昔から、そう決まっているのだ。
 
これからも毎年この日は、2人の魔法使いのことを想うだろう。
 
 
 
 
***
 
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2020-01-10 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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