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700年越しの恋《週刊READING LIFE Vol.64 日本史マニアック!》


記事:丸山ゆり(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
 
 

「ふ~、暑いな……」
 
いったい何段あるんだろうか、ここの階段は。
いや、段数ではなく、問題は傾斜のようだ。
後ろを振り返ってはダメだな、足がすくみそうだ。
初夏の陽ざしは、午前中から容赦なく私たちに降り注ぎ、一歩踏み出すごとに汗が吹き出る。
鎌倉駅から、バスで10分ほど登ったところにある住宅街。
そんな中にひっそりと建つ、大休寺跡へと行ったのは、5年前のことだ。
当時、大学に入ったばかりの娘のたっての希望で訪れた。
 
足利直義の菩提所跡は、いつ、廃寺になったのかもわかならいような寂しいところだった。
一人で来るには、少々気後れしそうなその廃寺を後にして、すぐとなりにある浄妙寺へ移動した。
ここが、足利直義の墓所と言われ、位牌もこちらで祀られているという。
 
日本史というと、高校時代、必死に勉強したことを思いだす。
それは、日本史に興味があるという訳ではなく、ただ、テスト勉強のために、ひたすら暗記をしたという記憶しかない。
 
ムシコロサレタ(645年)大化の改新。
 
イイクニツクロウ(1192年)鎌倉幕府。
 
こんな具合でとにかく覚えていったことが懐かしい。
例えば、今でもクイズ番組で出題されたら、その流れを答えることはできる。
若い頃に覚えたものは、記憶としてしっかりと頭に残っているものだ。
しかしながら、その時代を生き抜いた一人ひとりの人物に関しては、深く知ることはなかったのだ。
どんな政治を司ったのか。
どんな寺を建てたのか。
そんな記録としての情報しか知らない。
 
ところが、娘はあるとき私にこう言った。
 
「理想の男性は、足利直義」
 
その言葉を聞いて、しばらく返答が出来なかった。
歴史上の人物だということはわかる。
でも、何をした人なのか?
好きになるということは、その人となりを知っていなければ無理であろう。
 
そこで、娘に聞いてみたのだ。
足利直義の魅力を。
 
足利氏で有名なのは、足利尊氏だ。
ところが、その弟である足利直義がいなければ、室町幕府はできなかったと言われている。
足利直義は、政治、策略に長けていた人物だった。
武力に関しては、カリスマ的なのは兄の足利尊氏だった。
なので、戦において直義は負けることも多く、兄の尊氏に助けを求めたり、兄弟で協力しあうなど、すごく仲が良かった。
二人三脚で鎌倉幕府打倒を目指し、頑張っていた。
 
ところが、それぞれの部下どうしが争って、いがみ合っていったのだ。
すると、嫡男嫡子の問題で、直義が良かれと思って預かっていた尊氏の隠し子がいたのだが、それも誤解を招くようになっていった。
そのいざこざで、隠し子問題もからみあって、とても仲が良かった兄弟だったのに、日本を真っ二つにするくらいの兄弟げんかをした。
 
源氏の源の頼朝と義経は、元々生まれもバラバラで、お互いに面識もなく兄弟感はなかったけれども、足利兄弟の方は小さいころから本当に仲良く、政治も、戦も、協力してやってきたのに、時代の歯車に狂わされた。
 
足利直義のポジションは、歴史作家の書き方によってそれぞれである。
今、残っているのは、直義がやったことは、こんなこと、というだけ。
思惑や策略については、いろいろな解釈ができる。
本当は良心でやっていたのか、下心100%でやっていたのか?
どちらともとれるようなものだから、それがミステリアスで魅力的だと思う。
ただ、本当に頭が良く、賢い人だったというのはわかる。
最終的に、尊氏に負けたということは、本当に直義が良い人だったということがわかる。
下心100%、策略100%で頭の回転が良くて、自分が得をしようと思ったら出来た人だったからだ。
情に負けたのか、兄のためだったのか、わからないが。
 
死因も謎が多く、もしかしたら、自分がこのまま生き延びていたら、天下泰平を目指していたが、違う方向へ行くと思い、自殺したか、兄の尊氏に毒殺されたか、わかっていない。
仲の良かった兄弟が、時代の流れの中で対立していく様や、その最期が謎であるところ、そんな中でも兄弟愛に魅力を感じた。
古の時代を国のために戦った、兄弟の物語にとてもロマンを感じるらしい。
 
そんな話を聞いて、私も古き時代へとタイムトリップをしたように感じられた。
そうか、歴史上の人物も架空の人物ではない限り、それぞれの人生があったのだ。
そこには、様々な葛藤もあり、今の時代とはかけ離れた、理不尽な常識もあっただろう。
そうやって考えてみると、日本史は面白いものだと初めて興味を持った。
 
そして、歴史学者それぞれの解釈によって、そのヒーローたちはいかようにでも描かれているのだ。
何が正しいとかではなく、自分がその解釈を選び、さらに自分の思いを飛躍させてもいいのだ。
まさか、そんな面白みがあることを、学生時代から何十年も経過した今、わかるようになるなんて、人生とは楽しいものだ。
 
かわいい猫がその入り口で拝観者を迎えてくれる、浄妙寺。
足利氏にゆかりのある寺とされ、事実上、足利直義の墓所と言われているところでもある。
 
娘は、理想の男性のお墓参りを希望し、3年間連続で鎌倉詣でをした。
その、3年目にして初めて直義の墓碑を見つけたのだ。
娘本人も、この寺に足を運ぶことが夢で、墓碑はないものだと思い込んでいたようだ。
3年間通った娘のために、直義が引き合わせてくれたのか。
それとも、暑い中、庭園をブラブラしたことで、たまたま見つけたのか。
真意はわからないが、二人で感動したのを覚えている。
それは、あまりにもひっそりとしたところにあって、うっかりと見過ごしてしまいそうなそんな墓碑だった。それでも、しっかりと足利直義と読み取れるその墓碑に出会えたときには、私までもが感動した。
 
「あなたのことを700年以上過ぎた今、思っている娘の母です」
 
そんな挨拶をして、手を合わせた。
歴史の1ページを紡いだ人物。
そんな古に思いを馳せることは、事実の情報以外にも、様々な想像の力でその人物の功績以外にも魅力を見出せるものだ。
それこそが、歴史のロマンなのかもしれない。
 
また、鎌倉のあの寺を娘と訪ねたくなってきたな。
実は、私もすでにちょっぴりファンになってきている。
出来る限りの想像力を持って、直義という偉大な人物に敬意をはらいたい。

 
 
 

◽︎丸山ゆり(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
関西初のやましたひでこ<公認>断捨離トレーナー。
カルチャーセンター10か所以上、延べ100回以上断捨離講座で講師を務める。
地元の公共団体での断捨離講座、国内外の企業の研修でセミナーを行う。
1963年兵庫県西宮市生まれ。短大卒業後、商社に勤務した後、結婚。ごく普通の主婦として家事に専念している時に、断捨離に出会う。自分とモノとの今の関係性を問う発想に感銘を受けて、断捨離を通して、身近な人から笑顔にしていくことを開始。片づけの苦手な人を片づけ好きにさせるレッスンに定評あり。部屋を片づけるだけでなく、心地よく暮らせて、機能的な収納術を提案している。モットーは、断捨離で「エレガントな女性に」。
2013年1月断捨離提唱者やましたひでこより第1期公認トレーナーと認定される。
整理・収納アドバイザー1級。

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