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同居してみたらまさかのハズレ嫁だった


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:南園 貴絵(ライティング・ゼミ特講)
 
 
同居してみたらまさかのハズレ嫁だった。
 
これは義父母からの言葉でも、夫からの言葉でもない。自分で、自分にかけたい言葉だ。
 
結婚と同時に義父母と同居を始めて、気づけばもうすぐ6年になろうとしている。
月日が経つのはあっという間だ。
 
この6年で、私は嫁として、この家で一体何ができるようになったのだろう。
そんなことを考えながら振り返ってみたら「ハズレ嫁」というキーワードが出てきたのだ。おみくじで凶や大凶を引いてしまったような、ガラガラの福引で白玉のティッシュしか当たらなかったような、そんな気分。なんとも、残念である。
直接聞いたことはないけれど、義父母も、夫も、少なからず1回、いや年に1回、もしかしたら月に1回は「あー、ハズレだな」「こいつはハズレ嫁だ」と思ったことがあるだろう。あるいは、1日に1回はそう感じる日々があったかもしれないし、現在進行形でそう思っているかもしれない。
 
結婚したら同居するというのは、交際中からずっと聞かされていた。「俺は、長男だから」と。
 
長男の嫁。同居。
迷いもあったが、新居を探すのも、家具を揃えるのも面倒。もう家も家具もあるなら悩まなくていいか、という安易な気持ちで同居に踏み切った。
結婚前に家を建て替えるか、大規模リフォームをするという提案もあったが、丁重に断った。
玄関、風呂、キッチンはひとつ、トイレは1階と2階にひとつずつ。1階は義父母の、2階は私たちの生活スペースという、完全同居だ。
 
私が嫁ぐまで、家事全般は義母がひとりでこなしていた。
 
義母も正社員。私も正社員。
嫁いですぐ、私に与えられた役割は、“私の休日に夕食を作ること”と“2階の掃除”で、他の家事は今まで通り義母がしてくれた。洗濯も、「別にする? 一緒に洗う?」と確認され、義父母の洗濯が終わるのを待ったり、待たれたりするのは面倒だと思い、下着を見られる恥ずかしさと申し訳なさを捨てて、一緒に洗ってもらうことを選んだ。
 
同居してしばらくは、これから生活していくこの家のリズムに慣れることで精一杯。
他の家事も義母のやり方があるので、私は努めて出しゃばらないようにした。
 
初めのうちはこれでよかった。
 
義父は優しい。義母も表裏のないさっぱりした性格。
結婚前に「同居 長男嫁」と調べて読み漁ったブログに出てくるような意地悪な姑や、ねっとりとした厭らしい空気はなかった。
 
同居生活はどうかと尋ねられれば
「お義父さんにも、お義母さんにも、一分一秒でも元気でいてほしいし、ずっと一緒にいたい」と私は答えた。
同居して半年も経たないうちからそう思っていたし、この気持ちは今日までずっと変わらない。
 
その答えを聞いた人は
「若いのにえらいね」「立派だ」「お義父さんも、お義母さんも、こんなお嫁さんが来てくれて幸せだね」なんて言うが、決してそうではない。
 
同居して2年が過ぎた頃、義母から大きな雷を落とされた。
「もう、ふたりで出ていってもらってもいいよ! 出ていけば?」
 
「私もフルタイムで働いているのに、どうして貴絵ちゃんばっかり好きなことしてるの? 私に全部やらせればいいと思ってるの?」
 
頭を、ガーンと殴られたような感覚で、体が動かせなかった。声も出せなかった。
 
同居にも慣れ、新たな学びを始めたり、旅行を楽しんだりする一方で、独身時代と変わらないような仕事の仕方で残業が続いたりと、家を空けることが多くなっていた。私がいなくても家族が安心して生活できるようにしてくれていた義母に、完全に甘えていたのだ。
 
申し訳なさと、もう取り返しがつかないという絶望感。
言わなくてもわかってくれていると思っていた。なんて勝手な考えだっただろう。
義母が怒るのも当然だ。
 
「……出ていかない」
やっとの思いで絞り出せた声は義母に聞こえるかどうかわからないほど、小さく震えていた。
 
「出ていったらふたりで自由に生活できる」
 
「出ていかない」
 
「好きにやったらいいじゃん」
 
「……」
 
長く暗いトンネルから早く抜け出したいのに、足が進まない。でも、もう引き返せない。そんな感覚だった。
 
どうやって許してもらえたのかは覚えていないが、今もこうして同居させてもらっている。
 
あれから約4年。
義父は定年退職し、義母も正社員からパートになった。夫は変わらず働いてくれているが、私はヘルニアで腰痛が悪化したこともあってパートになった。
私に与えられた役割は、“私の休日に夕食を作ること”と“2階の掃除”のまま変わっていない。
 
そんな時、勉強会で聴いた言葉が心に響いた。
 
一般的に仕事とは
「給料をもらって行う特定の作業」
 
働くとは
「傍を楽にすること。誰かの幸せのために奉仕すること。そして誰かの幸せを心から素直に喜べる自分に成長すること」
 
ハッとした。
賃金労働だけでなく、お金をもらっていなくても家族を楽にすることも「働く」ということだと知ったとき、真っ先に義母の顔が浮かんだ。
義母はいつも家族のために、家でも外でも働いてくれている。
 
私が義母にできることは何だろう。
まずは義母の心配ごとや日常の小さなストレスを減らすことから始めてみよう。
 
そしていつの日か、「ハズレ嫁」ではなく「当たり嫁」と思ってもらえる日が来るだろうか。
おみくじで大吉を引いたり、ガラガラの福引で金色の玉が出て来たときのようなあの喜びを、義母に。
 
 
 
 
***
 
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2020-01-24 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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