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そうだ お寺、行こう


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【2月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《平日コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:瓜生 とも子(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
南無大師遍照金剛(ナム ダイシ ヘンジョウ コンゴウ)。
 
とっさの思いつき。
 
懐かしさに、肩の力がスーッと抜けていく。
 
話の続きを聴きながら、私は、探していたものをようやく見つけた気がしていた。
 
その頃の私は、毎日のように怒っていた。私が家事と育児でいっぱいいっぱいなのに、自分からは動かない夫に対して。
 
怒るのはよくないと頭では分かっていても、ワンオペで余裕がなく、ちょっとしたことで怒る。直後に自己嫌悪で落ち込む。しばらくしたら、また怒る。
 
家事と育児は夫婦ふたりで分担すればいい。こんな単純なことに気づいたのは、出産後4年も経ってからだった。
 
私たちは今以上に「家事と育児は女の役割」と刷り込まれてきた世代。その意識を変えるには、時間と根気が必要。夫婦で冷静に話し合わなきゃいけないのに、怒りのループで身動きが取れない。
 
何とか抜け出そうと、色々やってみた。
 
SNSでもリアルでも夫の愚痴を吐きまくった。映画や観劇などリフレッシュにも出かけた。全く効果がなかった。
 
マインドフルネス瞑想の本を買ってみた。「今この瞬間に意識を集中させ、不平が頭に浮かんでも流して、目の前の作業に集中」? つまり、洗う、磨く、たたむ……って結局、家事に縛りつけられるやん! 怒るで!
 
怒りをおさめる方法が見つからず、すでに数年。夫は以前に比べたら動くようになっていたが、3日も経てばもとに戻る。また私が怒る。一体いつまで、これを繰り返すのだろう。終わりが見えないことが辛かった。
 
そんなとき、不要紙の整理をしていて目に入った、アンガーマネジメント講座の案内。怒りの感情のコントロールねえ。できるかな、私にも。
 
開催日が迫っていたが、問い合わせると、まだ空きはあるという。1回だけなので通う必要もない。気分転換のつもりで行ってみることにした。
 
会場に集まったのは約20人。4人1組のグループに分かれ、それぞれの怒りについて語る。私のグループでは4人中3人が家事をしない夫への怒りをぶちまけた。
 
講師の先生は言う。怒りは自然な感情。なくすのではなく、上手に出していけばいい。衝動に任せて後悔しないよう、カッとなったときに自分を落ち着かせる、呪文のような言葉を考えてみよう。
 
パッとひらめいた、漢字8文字。
 
南無大師遍照金剛(ナム ダイシ ヘンジョウ コンゴウ)。
 
「大師」とは弘法大師、つまり空海のことだ。故郷では「お大師さま」と慕われる。
 
私が生まれ育ったのは四国の田舎。実家の近くには寺があった。住職の娘が同級生だったこともあり、境内でよく遊んだ。信心深い祖母に連れられてお参りし、様々な行事にも参加した。
 
その寺は、四国遍路八十八ケ所のひとつ。ゆかりのある「お大師さま」を信仰し唱えるのが、この言葉。私も小さい頃、祖母の真似をして何度も唱えた。その頃はごっこ遊びのような感覚だったが、今改めて口にしてみると、不思議に気持ちが落ち着く。
 
講師の先生によると、カッとなったとき呪文を唱えて6秒辛抱したら、怒っても後悔する確率がグッと低くなるとのこと。さらに、自分の怒りを分析してみたり、怒りのメカニズム解説があったりと、講座の内容はとても興味深かったのだが。
 
私は、自分自身の口をついて出たアイデアに、飛びついた。
 
そうだ。お寺、行こう。
 
ここ、京都やし。
 
大人になってから、初詣でも観光でもなく寺の山門をくぐるのは、新鮮だった。手を合わせ、心の中で、仏様に相談するような感じで、悩みを打ち明けてみた。何年もこういう状況で、どうしたらいいか分かりませんと。
 
これを続けていると、気持ちが少しずつ軽くなっていった。
 
生まれて初めて写経をやってみた。一字一字なぞっていると無心になれた。おっ、私でもできるやん、マインドフルネス的なやつ。
 
仏像や建築を鑑賞するのも楽しい。縁側できれいな庭園を眺めながら、美味しいお茶とお菓子で、リフレッシュの時間。
 
状況は少しずつ良くなっていった。
 
自分にまだ余裕がある段階で、夫や9歳になった息子に、家事のヘルプを頼めるようになった。落ち着いて状況を説明し、具体的な指示を出すと、ふたりともよく動いてくれる。
 
男ふたりの生活スキルが上がると、私も安心して留守にできる。その間ちょっとぐらい家事がたまっても、まあええか、と思える。
 
SNSで毒を吐くこともなくなった。リアルでは今でも愚痴が出てしまうことがあるが、それで怒りが増すことはない。
 
この頃の夫は、以前のことを思うと奇跡のようだ。昨年末は、何と浴室の大掃除をひとりでやった。夫がピカピカにしてくれた湯船、最高。
 
あたたかい湯につかりながら、怒りのあまりカチコチに冷凍してあった、夫を思いやる気持ちも、解凍した。夫は夫で大変なのだ。相手を思いやれないくせに、自分には思いやりを持ってほしいだなんて、無理な話だった。反省。
 
今でも、時には怒る。ただ、自己嫌悪に陥るような怒りは減った。
 
講座で教わったのとは別の方法でアンガーマネジメントしてるなんて、講師の先生に怒られるかもしれないけど。
 
お大師さまに免じて、許してほしい。
 
 
 
 
***
 
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2020-01-24 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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