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メディアグランプリ

煩悩クッキング 米は、続くよどこまでも編

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【2月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《平日コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:谷中田 千恵(スピード・ライティング)
 
 
その時、私はTVに夢中になっていた。
 
充電式バイクで各地を旅する番組では、久しぶりに画面へ帰って来たアイドルが笑顔を振りまいている。
その存在するだけで、人の心を鷲掴みにする様子が、あまりにも見事で、釘付けになっていた。
夕食が目の前にあることなんて、すっかり、うわの空だ。
 
ところが、何気なく白米を一口、口に放り込み、一気に現実に引き戻される。
「おいしい」
びっくりして、飯碗をのぞき込む。
 
冷蔵庫を廃棄したのは、もう3ヶ月も前のことだ。
台風の影響で、床上まで、氾濫した川の水に飲み込まれた。
たいした浸水ではなかったので、冷やす機能を保っていたが、掃除を繰り返しても、引き出しの奥から続々と現れる泥にうんざりして、結局、廃棄物の山に追加した。
 
急遽用意した、コンパクト冷蔵庫は、一辺60cm程度のキューブ型。
そう、ビジネスホテルでTVの下に組み込まれているあれだ。
いくら、一人暮らしとはいえ、中身は、常に満員御礼。
 
何より困るのは、米の保管だった。
夏場に、虫がわいてから、米は冷蔵保存と決めている。
今まで、買っていた5kgの袋が、どんなに整理をしても冷蔵庫に入らない。
 
保管ができなくても、ご飯は食べたい。
冷蔵庫を買うまで、パン食や麺食への切り替えも考えたが、白米がない食生活を思うと、暗たんとした。
 
とろみをつけた熱々の麻婆豆腐に、甘じょっぱい鶏そぼろ。
野菜がゴロゴロ入ったおうちカレーだって、白いご飯にのせてこそ。
生卵をかけるだけでも、じゅうぶん一食になり得るし、握って味噌とこんがり焼き目をつけると、立派なお弁当の完成だ。
やっぱり、私の生活に白米は、外せない。
 
密閉容器に入れてみたり、小分けにしてみたり、いろいろ試してみるが、なかなか、虫の心配をぬぐえない。
散々悩んで、購入する米の量を、2kgへダウンすることを決めた。
虫が付く前に、さっさと食べきる作戦だ。
少々割高にはなるが、心置きなく米生活を満喫できることへは変えられない。
 
解決策が見つかり、喜び勇んで、米売り場へ向かう。
やって来たのは、次の問題。
 
2kgの米の種類の多いこと!
しかも、今までの半量以下なので、どんなに有名なブランド米でもお手頃価格に見えてしまう。食費事情もすっかり忘れて、守備範囲が、ググンと広がった。
迷いに迷うこと30分。やっとの思いで、青森のとあるブランド米をカゴに入れた。
 
自宅に帰り、コートを脱ぐのも忘れて、炊飯器をセットする。
ご飯のお供は、オーソドックスに、具だくさん味噌汁と、明太子に決めた。
 
炊き上がりのチャイムが鳴るまでの1時間、待ち遠しくてたまらない。
遠くへ住む彼氏との、月一回のデートを心待ちにしている気分だ。
味噌汁の具材を刻みながら、なんとか声が聞きたいと耳をすませてみるが、極上炊きモードの炊飯器は、沈黙を保つばかり。
 
ようやく、蒸気がもれ始めると、ワクワクボルテージは最高潮。
改札の前で彼氏の姿を探すがごとく、しゃもじ片手に、炊飯器を今か今かとのぞき込む。
チャイムが鳴って、フタを開けると、そこはツヤツヤの嵐だった。
なんだこの輝きは。
新米だったからだろうか、米粒の一粒一粒に水分が、たっぷり詰まっていることが、見ただけでわかる。
蒸らし時間など、待ちきれるわけもなく、早速、茶碗によそる。
 
「わー、すごい!」
口に入れた、ご飯が甘い。お米ってこんなに甘いのね。
そして、やっぱり水分が多い。もっちりしている。
もっちりしているのに、粒の感じがしっかりしている。
口いっぱいに、粒の個性が主張する。
「うまい、うまい」
味噌汁も、明太子も忘れて、一膳ぺろっと完食してしまった。
 
二膳目は、明太子をのせる。
いやいや、明太子にも負けませんのね、あなた。
濃いめの塩分にも、なんのその。お米の味がしっかりと残る。
もちろん、味噌汁との相性も抜群だ。
 
たっぷり、ご飯を平らげて、すっかり満足するが、ご飯の凄さはここからだった。
 
翌日以降は、冷凍したご飯を温めるのだが、これがまた、おいしい。
白米を食べるのは、長年続いた習慣だ。
口に入れるその時まで、脳内はいつものご飯の味を思い描いている。
それが、口に入った瞬間、裏切られる。
「おいしい。このご飯、おいしい」
 
毎日のルーティンの一部が、突然、驚きに変わる。
今まで見慣れたものが、新しい発見となる。
 
ほんの些細なことかもしれないが、このあたたかい驚きが、日々の幸せを確実に支えてくれる。
 
米の種類を変えただけ。
たったそれだけのことで、毎日がドラマティックに変化した。
 
さらに、うれしいおまけが一つ。
 
お米のおいしさに気づき、おかずの量が半分以下に減った。
その結果、体重が2kgも減ったのだ。
毎日のうれしい驚き、プラス、ダイエット効果。
「お米を変えると、人生が変わる」なんて言ったら、ちょっと言い過ぎだろうか。
 
2kgの米袋は、すっかり底が見えてきた。
さて、次は、どんな出会いがあるか。
米食の道は、まだまだ続いていくようだ。
 
 
 
 
***
 
この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。 「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、WEB天狼院編集部のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。
 

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2020-01-31 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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