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メディアグランプリ

17年ぶりに開いた引き出しの中に


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:浅井睦子(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
再結成を知ったのは去年、ネットの記事でだった。
大学時代に友人が薦めてくれて見事にハマったバンドの事だ。
「え」声が出たと思う。
始めはちょっと信じられないと思ったが発表があった公式のホームページに飛び、
メンバーの声明を見て本当なのだと理解できた。尚且つ声明が潔い短文で再結成という事に対して何の曇りもない理由であったのでそれを読んでようやく「あ、嬉しいな」と。
あんなに夢中になって聴いていてライブにも行っていたけれども何かちょっとクールに受け止めているような気がしていたのが我ながら意外で、私もとうとう落ち着いてしまったのかなどと一瞬思ったが、いや違う。
再結成を待ち望んだ事が無かったからだ。再結成するというのが想定外だった。
解散発表後のライブにも足を運んだし、最終日のライブ音源もCD化されているし聴いている。大好きなバンドだったので本当に残念には思ったけれど解散を受け入れる事が出来ていたのだと思う。又、メンバーの後に組んだバンドも続けて聴く事が出来たので楽しめていたし、ただ時間が経ったというだけだった。
 
さて、ライブツアーが発表されているという事は
「行きたい、ライブに」行かない選択肢は無い。
あの頃をもう一度! ではなく、現在の彼らを見たいと思った。
が、しかしどうにもチケットがなかなか取れない。
解散ライブの時でもチケット取れたのに……ふとTwitterで解散後にファンになったからライブに行けると思ってなかったチケット取れました感激。のような、つぶやきを見かけると、チケットの取れない苛立ちで一瞬、新規に厳しい鬱陶しい古参ファンになりそうだったが、解散して17年という年月にそういう事もあるわなと思った。
 
そして悔しい思いもしながらようやくチケットを無事手にしてライブへ。
その日は休みを取ったのでちょっと早い目に会場に向かい、軽くアルコールを入れる。
これは17年前にはしていなかった楽しみ方だ。まず学生だった頃は時間が無いという事も
そんなになかったし、休みのまだ明るい時間帯にアルコールを飲むという事がなんと贅沢な楽しみかと液体なのに噛み締めた。
このバンドのジャンルはロック、やや激しい目。ボーカルは何かに怒っているかのごとく顔を歪めて絶叫するし、ギターはギャンギャン爆音で好まない人にはウルサイ音かと思う。
よって、座席のあるタイプではない。ライブハウスでオールスタンディングが常である。
42歳、オールスタンディングが多少しんどく思う事があるが、今のところまだライブでは
楽しめている自分でいる事は20代の自分に報告したい。大学生の頃に40代の自分なんて想像する事も出来る事もなかったけれども、ライブをいつまでも楽しめる大人でありたいとは思っていた。
荷物はコインロッカーに詰め込み、身軽な状態にして会場に入る。適当なポジションで
始まるのを待つ。一人で来ているので周囲の人の会話に耳が行く。
私の後ろに立つ男性3人組、おそらく20代前半でフレッシュさがある。彼らはこのバンドのライブは映像等では見ているが実際には初体験な様子。彼らの会話の中に漂うワクワク感が伝染してくる。ライブ終了後呑むのはあそこでいいよな? などと話ししているのを聞くと、羨ましくて堪らない。
一人で来るのは誰に気を遣う事もなく全身全霊で楽しむ事が出来るのだが、楽しさの共有が出来ないのだ。ライブ後にあれが良かった、これが良かったと言いつつビールを呑みながら、なんて……思わずご一緒させて! と言いたい気持ちにもなったがライブ前に見ず知らずの若い男性達に声をかけるなんて私には無理だ。
そんな事を思っていると、会場内が暗くなり、また明るくなってライブが始まった。
 
このメンバーが揃って、このバンドでのライブを見る事ができるとは、と思ったのも束の間。
その後は17年のブランクを全く感じさせる事のない素晴らしい内容だった。
 
あの曲懐かしい! ではなく、あの曲を聴いていたあの頃が懐かしいというか、もう忘れてかけていた記憶がパーンと脳裏に浮かび、不思議な時間感覚に何度か陥った。
通学していた頃に乗っていた電車の揺れ、見ていた風景やその時に歩いていた道の感じ。
時間だけは持て余す程あった夏、ダラダラと過ごして強い日差しが夕方に伸びていたのを
暑いなと思いながら眺めていた事、
時としてセンチメンタルでノスタルジーを感じさせる歌詞と相まって浮かんだ。
目の前で音をかき鳴らして歌っているのは? 身体を揺らして聴いている私は?
ああ、これは今か。と一瞬にして時間旅行をしたかのよう。初めての経験だった。
熱狂に包まれている中で思った。
この中にいる一人一人に、音楽の出会いがあり見える景色をそれぞれ持っているのだなと、
当時から聴いていた人も、今日が出会いだったかもしれない人も。
冒頭にも書いたが、私はよく音楽の話をしていた友人の薦めでバンド名を知り、聴き始めた。その友人は20代半ばで突然この世を駆け抜けて逝ってしまった。
もう長い事開けていない引き出しの中にその友人と一緒に写った写真が入っている。
その友人との何気ない会話と笑顔を思い出した。楽しかったな。
 
今回17年ぶりの再結成で行ったライブはそんな引き出しの中のようだと思った。
 
 
 
 
***
 
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2020-02-22 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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