fbpx
メディアグランプリ

遠くの国の危険はフィクションでもエンターテイメントでもなかった

thumbnail


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:福田大輔(ライティング・ゼミ7月通信限定コース)
 
 
5年前のある日の水曜日。
その日以降、南アフリカのヨハネスブルグにいるTのLINEが既読になることはなかった。僕だけじゃなく周囲の友人も同様だった。
 
そしてTの状況は僕らの想像を超えるほど危険な状況になっていた。
 
Tとは同じ社会人バスケチームのチームメイトだった。
30歳を過ぎてからまさかこんな仲のいい友達が出来るとは思ってもみなかった。
 
僕とTは同い年だが対照的な性格をしていると思う。
 
僕は割と俯瞰的にというか冷めた感じで物事を見てしまう。冷静に物事を見られるとか大人だね、何ていい意味で捉えてくれる人もいる。でも自分では共感力が欠如しているんじゃないかと思っている。
 
一方でTはとにかく感情移入が激しくて熱苦しい男だ。ある飲み会で僕とは離れた席でTが女の子の悩み相談を聞いていたようだった。気付いたらTと女の子の二人で泣いているのだ。何でもその悩みの内容に深く共感してしまったそうだ。
 
オレは絶対にそうは出来ない。
それが出来るTは本当に優しくて人間臭くて魅力的なヤツだと思っていた。
 
そして僕もTもサービス精神が旺盛だったのでチームメイトの誕生日会なんかを二人でよく企画していた。
 
彼はその当時、勤めていた会社を辞めてフリーランスとして働き始めたばかりだった。
そんな折に知り合いのカメラマンから仕事が入ったという。
海外で取材をするためアシスタントとして同行をするというものだった。
 
ただその取材先はヨハネスブルグだった。
 
南アフリカにある最大の都市である。
インターネットで検索をすると危険エピソードが大量に出てきて「世界最恐都市」なんて異名が付いている。とにかく治安が悪いということが詳しく調べなくても分かってくる場所だ。
 
危険地帯の取材だが現地の通訳も付けるので安全だ……というわけではなく何が起きてもおかしくないと言っていた。
まあ、そんなことは言っても何だかんだ無事に帰ってくるのだろう。それぐらいにしか思っていなかった。日本で安全に浸りきっている自分にはそれ以上の想像力を働かせることは出来なかった。
 
Tが南アフリカに渡航してからLINEでちょこちょこ近況連絡をしていた。同時に無事であることを確認するためにだ。
 
ところが水曜日に送ったLINEがいつまで経っても既読にならなかった。周りの友人に確認しても同様に水曜日以降のLINEが既読になっていないという。
 
僕らは本当にざわついた。
何か起こっているんじゃないか、大丈夫だよな。
どうにかして確認できないのか。
 
ちょっと迷惑じゃないかと思いつつもホストをやっていてイケメンだという彼の弟にFacebookのメッセンジャーで連絡をしてみた。もちろん、これまで一方的に話を聞いたことがあるだけで面識は全くなかった。
 
Tの弟から返信が来た。
メッセンジャーにはこんな内容が記載されていた。
やっぱりみんな水曜日から連絡が取れていないこと。兄貴から色々と引き継いでいてこちらもバタバタしているが何か分かればすぐに連絡をすると。
 
やっぱり今のところ待つしか手段がないようだった。
これ本当に大丈夫なのか?
いや、まさか大丈夫だよな。
 
そして次の日だった。
 
TのFacebookに衝撃的な投稿がされていた。Tではなく弟が代理で投稿をしていた。
内容はこうだった。
 
弟です。兄貴が迷惑を掛けています。
兄貴ですがポンテタワーで現地の人に捕まっています。
今は信じて待って下さいとしか言えません。
また状況が分かりましたら連絡します。
 
捕まっているって何だ?!
ポンテタワーって何だ??
 
あまりの非現実的な事に実感が何も湧いてこない。
映画や漫画でしか聞いたことがなかったエンターテイメントやフィクションでの世界の出来事が現実に起こっている。
 
ポンテタワーを検索すると出てくるのは、入ったら15秒で死んでしまうとか衝撃的なものばかりだった。
ポンテタワーは54階建てで173メートルの高さがある超高層の円柱型のマンションだ。ギャングが侵入して全ての居住者が退去し、ギャングや麻薬の密売人や売春婦の巣窟となっているそうだ。
こんな嘘か本当か分からない内容に今ばかりは真実味を感じえてしまう。
 
そして僕らは何もすることが出来ない。
この状況に対して圧倒的に無力な傍観者でしかなかった。
凄腕の元傭兵を誰かが見つけてくれて、現地でTを助けてくれるなんてことは当たり前だが起こりえなかった。
 
そもそも最初はカメラマンの方と現地通訳の方がポンテタワーで取材をしているところ捕まったらしい。
そんな状況でカメラマンの身代わりを名乗り出て代わりに捕まったらしい。
 
本当にバカなんじゃないかと思った。
そうだよな、お前はそんなことが出来ちゃうぐらい優しくてかっこいいヤツだよな。
何でそんな勇気があること出来ちゃうんだよ。
かっこ悪くても情けなくてもいいから自分の身を最優先に考えて欲しいのに。
 
無力な僕らは無事に解放されたという知らせを待つしか術がなかった。
現実感をずっと感じられず無事を願うだけしか出来ないまま日が過ぎていた。
 
その後、カメラマンの人が日本に助けを求めて何かしらの交渉が実行されて開放されたらしい。
 
それからTはなんとか帰国することが出来た。
 
無事に再会したのだがムカついたから一発ぶん殴っておいた。
……いや、実際は殴らなったがそんな気分だった。
 
神社に行って厄払いをして、バスケの練習をした。
いつもの日常だ。エンターテイメントじゃない普通の日常だ。
 
今、目の前にTがいることは現実でいつものことだ。
そんな当たり前のことがこれほどありがたいと思えるとは考えてもみなかった。
 
そして遠い国には僕らの想像できない世界が確かに存在していることを思い知らされた。
 
でも結局のところ何だかんだ無事に帰ってきているじゃないかと思いましたか?
Tは拘束されているとき何事もなかったのか?
丁重に扱われていたのか?
 
拘束されている間、当然ながら丁重に扱われているはずもなくTは暴行を受けていた。一緒に捕まっていた現地通訳の人は打たれたという。
 
拘束されていた時のことは断片的に聞いただけでも詳細を書けないほど凄惨なものだった。この時の出来事は今でもトラウマになるほど今もTに深く刻まれている。
 
ポンテタワーを検索している時にスリルと好奇心を求めている人がたくさんいることも分かった。その湧き上がる衝動は自分も持っているものだから理解は出来る。
 
でも交通事故に遭うぐらいの確率じゃなく、危険地帯に行ったら何かがあなたの身に確実に起こりえることもぜひ覚えておいてほしい。
 
 
 
 
***
 
この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

お問い合わせ


■メールでのお問い合わせ:お問い合せフォーム

■各店舗へのお問い合わせ
*天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。


■天狼院書店「東京天狼院」

〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
TEL:03-6914-3618/FAX:03-6914-0168
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
*定休日:木曜日(イベント時臨時営業)


■天狼院書店「福岡天狼院」

〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階
TEL:092-518-7435/FAX:092-518-4149
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00


■天狼院書店「京都天狼院」

〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5
TEL:075-708-3930/FAX:075-708-3931
営業時間:10:00〜22:00


■天狼院書店「Esola池袋店 STYLE for Biz」

〒171-0021 東京都豊島区西池袋1-12-1 Esola池袋2F
営業時間:10:30〜21:30
TEL:03-6914-0167/FAX:03-6914-0168


■天狼院書店「プレイアトレ土浦店」

〒300-0035 茨城県土浦市有明町1-30 プレイアトレ土浦2F
営業時間:9:00~22:00
TEL:029-897-3325


■天狼院書店「シアターカフェ天狼院」

〒170-0013 東京都豊島区東池袋1丁目8-1 WACCA池袋 4F
営業時間:
平日 11:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
電話:03−6812−1984


2020-10-11 | Posted in メディアグランプリ, 記事

関連記事