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髪を伸ばせよ、呪いを解けよ!


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:三木 幸枝(ライティング・ゼミ平日コース)
 
「あんなに伸ばしてどうするつもり?早く切りに連れて行きなさい」
母からまた言われた。小学5年生になる娘の髪の毛のことだ。
娘は、髪を腰まで伸ばしている。前髪の長さも、ゆうに鼻が隠れるほどだ。
 
同居している私の母(娘からすると祖母)は、それが気に入らない。
娘本人にも「髪の毛、切りな」とことあるごとに言っているし、私にも、イライラしながら言ってくる。
 
しかし、娘は首を縦に振らない。「切るの、やだ。もうちょい伸ばす」だそうだ。
なんでそこまで伸ばしたいのか?と聞いてみた。
習っている日本舞踊で、髪を結うことがあるが、それも肩まで伸ばせば十分である。また、はまっている『鬼滅の刃』の禰豆子ちゃんに憧れてるの?と。しかし、別にそういう理由でもないらしい。
 
「ただ、なんとなく」とのこと。
 
しかし、母があんまりしつこく切れ切れと言うもんだから、今度は、逆に母に聞いてみた。「なんでそんなに切った方がいいって言うん?」
 
すると母は言った。
「短い方が子どもらしいでえ! 子どものうちからあんなに伸ばすのはいかん!」
 
私は拍子抜けした。こちらも、はっきりとした明確な理由はないのだ。
同時に私は、ものすごい違和感に襲われた。
娘は小5で、確かに子どもの年齢なのかもしれない。が、それにしても、母の思う子どもらしさを押しつけるのはいかがなものか。
 
私は「女らしく」とか「母らしく」など、人から言われたり強制されるのが大嫌いだ。
母の言葉を聞いたとき、自分が「らしさ」を押しつけられたときと同じ感覚を抱いた。
 
そういえば、私も、幼い頃から母にそう言い続けられていた。
子どもは子どもらしく。大人に従順で。
子どもという役割を強制されて、それに添ったような行動や態度をとると褒められる。褒められているうちに、その型にいつの間にかはまってしまい、疑問に思うことすら無くなってしまう。
 
ふと、子どもの頃の記憶がよみがえる。苦々しい思い出だ。
中学生の姉が友人と初めて美容院に行ったときのこと。姉は友人とおそろいのウルフカットで帰ってきた。その当時の流行りだったのか、不規則にカットされた髪型がとても格好良くて、いつもと違う姉の姿に、私もとても高揚した。
 
しかし、母の反応は違った。姉を見るなり大声で叫んだ。
「こんな不良みたいな髪にして!」と怒り狂い、いやがる姉を庭に引きずりだし、大きな裁ちばさみで姉の髪を切り始めたのだ。
「やめて! やめて!」と最初は姉も抵抗していたが、母の怒声に圧倒され、だんだんとおとなしくなった。みるみるうちに、姉の髪は短くなり、最終的には、とても短い、幼稚園児のようなおかっぱ頭になってしまった。中学2年生の体にはとてもアンバランスであった。お世辞にも似合っているとはいえないものだったが、母は、最後に「これで、子どもらしくなった」と、大きな声で言い放った。
 
私は、一部始終を家の中のカーテンに身を潜めて覘いていた。
母の狂気じみた行動におののきながら、思春期の姉の心中を察し、いたたまれない気持ちになった。そして、母の言うところの子どもらしくいなければあんな目に遭ってしまうのだと、なんとも塞いだ気持ちになった。
 
そのあと、どうなったのかはあまり覚えていない。
髪の毛はいずれ伸びるものだし、また、今となっては何十年も昔のことだから、もう母と姉の間には、わだかまりはないのかもしれない。でも、私には、今思い出しても胸が痛む衝撃的な出来事であった。
 
今回の娘の髪の毛のことで、すっかり忘れていた「母と姉の散髪事件」を思い出した。そして、あのとき姉をかばえなかった代わりに、今度は、私は娘の味方でいよう!と強く思った。「子どもらしく」の呪いをかけられていた私の、遅ればせながらの抵抗だ。
 
今日も「早く髪の毛を切るように!」と母が言ってくる。
「学校のクラスで、あんなに伸ばしているのはあの子だけちゃう? 前髪が目に入って視力が落ちるよ! 何か理由があって伸ばしてるん? 無いなら切りな。子どもらしくない!」
 
理由がないとダメなの? ただ、なんとなく伸ばしたい、というのも、それこそ子どもらしいじゃないか。
視力が落ちることを理由にされそうになったら、私はこっそりピンを渡し、娘にささやく。「はやく前髪とめときな」娘はさっと、ピンで前髪をとめて「ありがとう」とにっこり笑う。
 
子どもらしさって何を求めているのだろう。子どもを自分より下にみて、自分の意に添わないのを「子どもらしくない」と感じているのかな。それならば、私の母はとても哀れだ。
 
私自身も、この「子どもらしく」の呪いをかけられてきた。
そして、大人になった今も、母に限らず様々なところで「女らしく」とか「母らしく」の呪いをかけられ続けている。
 
幸いにも私は、いろんな出会いがあり学びを得られた。そのおかげで、それらが呪いであることに気づくことができた。それでも、体と心にしみついてしまった呪いを完全に払拭することはなかなかできず、家庭や社会でもがいている。
 
母にも、「~らしく」は呪いだよという話を試みたことがある。しかし全く受け入れられずに終わった。長い時間かけてすり込まれてきたものはそう簡単に解けるものではない。粘り強くやっていかないといけない。私のためにも、そして母のためにも。
 
私自身も、娘にうっかり呪いをかけないよう、細心の注意を払わなければならないと思う。いろいろと先回りしてアドバイスしたり、自分の先入観を押しつけたりしてしまいそうになるけど、さまざまに思いをめぐらし思いとどまる。
 
「らしく」に縛られず、自分の心の求めるまま生きて欲しい。腰まである娘の髪をとかしながら切に願う。娘よ、髪を伸ばせよ、呪いを解けよ。
 
 
 
 
***
 
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2020-10-24 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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