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気持ちを受け止めるだけでも人は楽になれる


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記事:隅倉浩信(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「死んだら楽になれるのかな」
居酒屋で、私の友人である彼はそうつぶやいた。
そう言う彼の周辺では、最近3人の方が自ら命を絶ったという。
最近、芸能人の3名の方が、立て続けに亡くなったことも偶然ではなく、全国的にも同じようなケースは、想像以上に多いのかもしれない。
 
亡くなった彼の友人は、将来を悲観して「死にたい」とこぼしていたのだという。
彼と亡くなった彼の友人は、しばしば夜にお酒を飲みに行っていたそうなのだが、成り行きで、年上の彼がいつも飲み代を払うことになり、彼は毎回飲み代を払うことに少しだけ負担を感じるようになっていた。二人の間に少し距離が出来てしまった矢先に、彼の友人が亡くなったのだという。
「今度また会おうと言っていたのに」とひどく彼は後悔していた。そして彼は、「死んだら楽になれるのかな」とつぶやいた。彼自身も、家業の跡取りとして将来の不安を抱えていた。
 
その時、私の昔の記憶が蘇った。
私は、自死念慮の方を対象にした電話相談ボランティアを5年ほどしている。
はじめたきっかけは、15年くらい前に、同じ仕事をしていた同僚が、年度末に仕事を仕上げた直後に、自死によって亡くなったことにある。当時は躁鬱病などの病気がまだ社会でも認知されていない時代でもあった。
私は、同僚の変化に気づくことができなかったことへの自責の思いがぬぐえないまま、忙しい日々が続き、それでもその出来事が忘れられず、10年ほど経ってようやく、自死念慮の方を対象にした電話相談のボランティアを始めることができた。
ボランティアをしている理由を一言で言えば、「もうあの時のような思いは二度と繰り返したくない」ということに尽きる。
 
そのようなことが脳裏に浮かびながら、私は彼との話を続けた。
彼は私に対して、「あなたのボランティア団体は何をやっているんですか。意味のある活動が出来ているんですか?」となじってきた。「もっと、苦しんでいる人に積極的に出向いて行くべきじゃないですか」と。私は心の奥の方で少しむっとしたが、確かにその通りだと思った。しかし、私はただのボランティアの一人。仕事もあり、団体をひっぱっていくほどの立場にはなく、月に2~3回、夜中に電話相談に入る程度の活動しか出来ていないので、何も反論することはできなかった。しかし、社会に積極的に出向いて解決を求める活動や社会のあり方を改善する努力はもちろん必要なことなのだが、私の任務としては、電話で出会った人のその時の「気持ち」を出来る限り、受け止めて行くことが自分に出来ることだと思っている。
 
電話のボランティアでは、電話をかけて来た方の「気持ち」にひたすら焦点をあてて傾聴することを任務としている。「死にたい」という方には、いろんな方がおられるが、ほとんどは、万策尽きて電話をかけて来る方が多い。人は相談を受けると何らかのアドバイスをしがちだが、そういったアドバイスはまったく役に立たない。できることは、その方が抱いている「死にたい」という気持ちに込められたさまざまな感情をできるだけ具体的に紐解いていくのだ。絶望感、閉塞感、後悔、怒り、周囲への期待、思いやりなど、ご本人にわき起こっているさまざまな感情をひたすら受け止めて言葉にしていく作業なのだ。電話をかけて来られた方は、今のつらい気持ちを「わかってほしい」という思いを持っている。「あぁ、私の気持ちをわかってくれる人がいたんだ」とその方が思えた時、つらい気持ちはつらい気持ちのまま、安らぎが訪れる。
 
コロナ禍のなか、社会を席巻する閉塞感はなおも続いている。コロナ禍によって、生きづらい状況がさまざまな場所で発生し、自死念慮を抱く方が増えているのではないか。人は状況が整えば、誰だって、死にたい気持ちになってしまうことがあるのだ。
もし身近な人から「死にたい」とつぶやかれると、聞いた人はびっくりするかもしれない。どう接していいのか躊躇してしまうかもしれない。病気の場合はもちろん専門のお医者さんへ行く必要があるが、日常における周囲の関わりも欠かせない。
よく「頑張れ」などの励ましの言葉は禁句、またはケースバイケースといわれる。大事なことは、何かをしてあげたいというこちらの気持ちよりも、本人が感じている気持ちが最優先されることなのだ。
慌てずに、どんな気持ちも否定せず、ありのままの気持ちを受け止めてみる。人は気持ちを受け止めてもらうだけで少し楽になれる。やってみるとやっぱり簡単ではないけれど、「気持ち」を受け止めることを焦らず根気強く続けていると、時間はかかってもいつか状況も変わってくる。
 
いま私が友人の彼に対して出来ることは何か。
まずは、彼が抱える後悔や憤り、そして、日々の閉塞感、理想や願望と現実の狭間で生じる葛藤、家族をはじめとする周囲の人への思いなど、さまざまな気持ちを、小刻みに受け止めていきたいと思う。
 
 
 
 
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2020-10-24 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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