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息子の頭突きで開いたトビラ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:赤羽 叶(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「ゴツッ」
 
一瞬、何が起こったかわからなかった。
 
いがぐり坊主が急に迫って来たかと思うと、次の瞬間にはもう、その場でうずくまっていた。
目から火花が出て、じわりと涙がにじむ。
 
小6の息子が、悪意をもって私に頭突きをしたその時、パッカーンと扉が開いてしまった。
 
開けたくないと思っていた扉の向こう側にある思春期の反抗期というステージに、私は勢いよく突き飛ばされてしまったのである……。
 
子供が生まれた時からずっと、彼の思春期の訪れを不安に思っていた、と書いたら、鬼が笑うにもほどがある、と笑う人もいるかもしれない。
 
でも、私にとって思春期の反抗期は、仮に模範解答というものがあったとしても、全く信じられないくらい難しい問題だった。激しくても困るし、なくても困る……。何がいいのかが見当もつかない。
 
というのも、私の場合、記憶に残っている思春期の反抗期とその結果があまりにも悪すぎるから。
 
もちろん、大抵の人が思春期の反抗期の記憶は多少なりともあるに違いない。自分自身が激しくて大変だったから憂鬱、という人もいるだろうし、逆に自分は反抗期らしい反抗期がなかったから、どうなるのか不安、という人もいるかもしれない。
 
いずれにしても、目の前の子供は別の人格だから、全く参考にはならないと言い聞かせても、自分の記憶がモノサシとしてきっちりとはまり込んで外せないというのは案外苦しい。
 
特に私が、なぜ思春期の反抗期に不安を感じるのか、というと理由は二つある。
 
まず、私の弟の反抗期はなかなかで、家の壁に穴が開く、万引きで補導される、タバコを吸う……など、両親もほとほと手を焼いていた、ということ。
 
そして、もう一つは、私自身の記憶。私は逆に、その時期に反抗らしい反抗をしてこなかった。両親の質というものを見抜いていた私は、真っ向から対立してもいいことが何一つないと、どこかあきらめているような節があった。だから、陰に隠れて好きなことをして、親に対しては、ソツなく接していた。実際、その当時の中・高校生にしては、親子関係は良好だったと思う。
 
しかし、大学生を過ぎてから、ひょんなことから反抗期に入ってしまったのだ。こじれにこじれた挙句に、そのくすぶりが20年以上たった今でも残っている。そして、どうすれば正解だったのか、ということにいまだにたどり着けていない。だから、反抗期がほとんどない、というのは反抗期が激しいよりもさらに不安になるのだ。
 
そんな答えの出ないモヤモヤは、息子の頭突きで一挙に飛んでしまった。
朝、ちょっとしたことで、息子ともめて押し問答になった挙句の出来事だった。
 
ついにきた、この日が来てしまった……!
 
これから何年も、もしかすると一生こんな子に育てた覚えはないとつぶやき続けなければいけないかもしれない……。
 
でも、その後、息子は、もう学校に行きたくない、と絞り出すように泣き始めた。
その様子を見て、痛みが一瞬で吹き飛んだ。マイペースな息子の異変を感じて慌てた。
 
「それは、私のせいで行きたくないの? それとも……学校で何かあったの?」
 
嫌な予感に心臓が高く鳴り出した。もしかして、学校でいじめにあっているのか……も? でも、つい先日、クラス内でも穏やかでトラブルなく生活しています、と聞いたばかりなのに? しかし、最近は陰湿になっているとも聞くし、先生の目が届かない陰で何かが起きているのか?
 
息子が興奮気味にしゃくりあげながら、
 
「両方」
 
とつぶやいた。
ああ、いけない。何かが起きている、と思ったら、とっさに息子のことをぎゅっと抱きしめていた。
 
言うことを聞かないことにばかり気を取られて、彼の意地の裏にある、トラブルに合いながらも気持ちを立て直して学校に行こうとしているということに気づくことができていなかった。
 
「ごめん、ごめんね。今日は、学校休もう? そうだ、お母さんといっしょにドライブに行こうよ」
 
努めて軽い感じに話しかけたのが功を奏したのか、息子がかすかにうなずいた。
 
家で話をすると気づまりになりそうで、とっさにドライブに行こうと提案したのは正解だった。車を運転していたら、過剰に話に入れ込むこともないし、相手が多少無反応でもイライラしない。
 
息子が落ち着くのを見計らって事情を聴いてみたところ、クラスの子と少し言い合いになったという件を話してくれた。話を聞いた雰囲気だと、それほどこじれているわけでも重たいわけでもなさそうだったのが不幸中の幸いだった。深呼吸をしながら、慎重に息子のペースに合わせて、軽んじるわけでもなければ、大げさに受け止めすぎないように細心の注意を払いながら、話を聞いた。
 
結果、息子自身がどうしたらいいのか、というのを導き出して、本人も納得したようだ。これからも何かがあったら言うね、と照れくさそうに言って、翌日からは何事もなかったかのように学校に通いだした。
 
それからも、私自身が全く理解できないところで自分の意思を貫こうとする場面が増えている。私がなだめてもすかしてもガンと聞き入れない。こちらも腹が立ってくるが、息子も親がやり方を通すために付け焼刃な理由をつけてごまかそうとか、丸め込んで思い通りにしようとしている部分を見抜いているようで、反論されてぐうの音もでない、ということも多くなった。
 
でも、思春期の反抗期……なんだ、イライラするけど、思ったよりも面白いぞ。
 
闇雲にあまのじゃくな態度をとっているわけではない。やろうとしていることはちぐはぐだし、ツッコミどころも満載。けれど、本人がやりたいという言い分は彼なりの理屈がある。
 
例えば、宿題をきちんとやっていかなければいけない、ということを貫くために、学校には遅刻するのは自分の中では二の次。親としては、遅刻しないように早めに行って、学校で終わっていないものをやればいいじゃないか、と思うが、本人は、宿題を終わらせてから学校に行きたいので押し問答になる。悪と正義が対立しているのではなく、お互いの正義と正義が対立しているのだ。
 
親として『事なきをえたいという気持ち』で、息子の言い分を徹底的につぶすことは、あるいは可能かもしれない。けれど、それをしたら息子が大人として自立することを阻害することになるだろう。
 
思春期の反抗期を乗り越えていけるのか、それはまだまだ始まったばかりだから、正直、どう転ぶかわからない。
 
でも、子供が生まれた時から反抗期を不安に思っていた私は気づかなかったのだ。
 
親としての私は、子どもと少しずつ築いてきた時間が10年以上にもなっているのだということを。長い間見つめてきた息子の性格や行動や考え方のクセなどを踏まえた上で、一人の人としての息子との人間関係をより丁寧に磨き上げていけばいい。解消しきれていない思春期の反抗期の記憶を抱えてはいるけど、それは、親との人間関係がうまくいかなかっただけで、全く別物だった。
 
私は、彼自身を変えようと磨くのではなくて、彼とこれからどうありたいのか、という人と人の間を磨いていこう。
 
頭突きのゴングで始まった息子の反抗期がどのように展開するか、全ては私次第なのだ。
 
 
 
 
***
 
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2020-10-30 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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