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メディアグランプリ

サプライズの倍返し


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:青柳里美(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
母がこのたび半世紀にわたり携わった看護師の職に別れを告げた。
高校卒業後、看護学校進学のため東京に単身上京して看護師となり、72歳で現役を退いた。
 
母は45歳の時に学校に入り直している。
東京の看護学校で取得した免許は准看護師だったため、正看護師免許取得と学び直しの目的で一念発起して病院勤めを中断し、ふたたび看護学生になったのだ。
 
地元に当時新設された医療系専門学校へ1期生として入学後、在学中に進行癌が見つかり入院手術で一時離脱を余儀なくされたが、先生方や同期生のご協力と本人の気合いで休学を回避でき、試験も無事合格して正看護師免許を取得した。
 
卒業式では母が答辞を読んだ。新設専門学校1期生の卒業式ということで地元新聞社が取材に来ていて、“現役看護師の一念発起・卒業生最年長の40代・闘病を乗り越えて卒業を迎え代表で答辞を読む”という話題性たっぷりの母に対して何故か父がインタビューに応じ、翌日の朝刊には満面の笑みの父が載っていた。
 
40代半ばで学び直しをしたのも70歳過ぎまでひとつの職を全うしたのも、わが母ながら尊敬に値する。
退職にあたり家族で退職祝いの花を贈る計画を立てる中、ふとある考えが浮かんだ。
 
学校名義でもお花を贈ったらお母さん喜ぶかも?
 
『この歳になっても働けるのは学び直した学校のおかげ』と感謝の言葉をよく口にしていたし、サプライズを仕掛けてみようかな……。
とは言え無断で学校名を語るのはよろしくないので、数日悩んだ末ダメ元で学校に相談してみることにした。
 
これまでたくさんの卒業生がいるのにこんな相談は図々しいかな?
コロナウイルスの影響で学校スケジュールの調整に忙しい時に迷惑かな?
母の在籍確認を古い名簿で調べるだろうから返事待たされるかも?
 
などなどネガティブ思考が頭をよぎったが、入学までの経緯や在学中の闘病のこと、日頃より母校に感謝していたことを説明し、『貴校に労ってもらえたら母は喜ぶと思うので、花はこちらで手配するからお名前だけ貸して欲しい』という主旨のメールを学校HPの問い合わせフォームから送信した。
 
すると1時間もしないうちに学校から電話がかかってきた。
なんと学校側の費用負担で花を手配するから届け先を教えて欲しいというのだ。
ありがたいお申し出だが、他にも多くの卒業生がいるなか母だけ花代をいただくのは心苦しいと伝えたところ、
 
「いえ、お母様にはこれまで長い間お守りや差し入れをいただいてきましたので、ぜひ当校からも退職のお祝いをさせてください」
 
え、お守り? 差し入れ?
「あの……何のお話でしょうか?」
 
「あ、ご存じなかったのですね? では詳しくはお母様から直接お聞きになってください」
 
実家の住所と電話番号を事務局の方に伝えて電話を切った。
とんとん拍子に話が進んで嬉しい誤算の半面、お守りや差し入れとは一体? 非常に気になったがサプライズ計画遂行のため花が届くまで母に訊ねるのを我慢した。
 
母の最終勤務日翌日、母から電話がかかってきた。
『学校から立派なお花が届いて。驚いて学校に連絡したら”ご家族から”って言われて。どういうことなの?』
 
サプライズのタネ明かしをし、例の件を聞いてみたところ、
専門学校を卒業した後、お世話になった母校に何かお返しをしたいと考えた母は毎年受験シーズンに後輩たちへ差し入れをしていたのだそうだ。
 
看護師国家試験は受験会場が全国に数カ所しか無いため、母も含め歴代の地元看護学生は最寄りの福岡会場まで受験に行っている。
母は卒業後、毎年福岡行き受験バスを見送りに学校に出向き、お守りや菓子類などの差し入れを渡し、引率教員の計らいで受験の心構えや看護師として働く意義を伝え、試験に挑む後輩さんたちを激励していた。
 
そしていつしか母は、〈毎年受験バスを見送りに来る1期生〉としてちょっとした名物卒業生になっていたのだそう。試験に合格した受験生から母宛てにお礼の手紙が届くこともあったらしい。
学校に相談メールを送った後すぐにいいお返事をいただけたのは、学校の先生や事務局の皆さんが母のことを認識していたからだった。
 
母は20年間バスを見送り続けた。年齢等の事情で数年前にバスの見送りはやめてしまったが、今もたまに学校を訪ねて関係は継続しているそうだ。
 
「お母さん、何でそのこと今まで黙ってたの!?」
「別に内緒にしてたわけじゃないけど、訊かれないから話すタイミング無かったし。お父さんは知ってたけどね」
「いやいや、その話自体知らないんだからこっちから訊きようがないでしょ!」
 
20年以上も知らされなかった母の一面。学校名義の花で母にサプライズを仕掛けたつもりが、こちらのほうが数倍驚かされた。でもみんなハッピー結果オーライ、思い切って動いてみて本当に良かった。
あらためて長い間ありがとうございましたお疲れ様、これからは自分の時間をゆっくり過ごしてね。
 
 
 
 
***
 
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2020-10-30 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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