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天職がこぼれ落ちたあとに


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:鈴木かおる(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
*この記事は、実話をもとにしたフィクションです
 
 
「ちょっと何が言いたいのかよくわからないんだよね」
 
僕は、絶望していた。
またか。心の中で大きなため息。
もう何度目だろう? この資料。上司から、再三のダメ出し。
 
いやー、でもそうだよね。
自分でもこれはイマイチだよな……と思いながら提出しているんだから、
そりゃ「わからない」って言われるだろうよ。
 
でもおかしいよな、去年の資料の一部分を更新してるだけなんだから、
これは僕のせいというより、前任者のせいなんじゃないか?
 
気づけば自分以外に、言い訳を求めるようになっていた。
 
あのことに気づくまでは。
 
ぶっちゃけこの仕事オモシロクナイシ、キョウミナイシ……。
日々、提出しては差戻し、直してはなかなか完成まで辿りつかない資料たち。
自分ってこんなにできない奴だったっけ。自己肯定感ダダ下がりである。
 
そんな腐った僕にさらに追い打ちをかけるのが、
 
「この言い回しは前頁と整合性がとれていないので、修正したほうがいいと思います」
「このスペースは半角ですが、こちらは全角になってますよ」
 
と、同僚からの細かい指摘。
 
じゃあもう任せるからあんたがやってくれよ……。
そんな言葉をぐっと飲みこみ、「ありがとう、確かにそうだよね、指摘助かるわ」と返す。
 
僕は今、社内向けのセキュリティ関連ルールを整備する部署にいる。
今年、ここにトばさ……いや、組織変更で異動してきた。
毎年新しくなる法令や社内規定、通達などを整理し、従業員として知っておくべき基本ルールとして再構築して社内に浸透させる、いわば整理整頓の要、のような部署だ。
 
ミスマッチ!
 
最初に辞令が出たとき、一番にそう思った。
 
いやー。そもそも掃除は嫌いなんだよ……。
細かいことには全然気づけないし、家の鍵もよく忘れる。
過去あるものを整理するより、
未来に向かって思いついたことにイケイケドンドン進んでいくのが好きなんだよ。
 
そう思うにつけ、昨年まで担当していたイベント企画の仕事は驚くほど性に合っていた。
 
できる出来ないに関わらずガンガンアイディアを出していい環境で、
関連部署に根回しして、業者と連携して、上司を説得して、
イベントが終わった後参加者に「参加してよかった!」と言われることが最高の幸せだった。
 
そして、この仕事をきっかけに、コミュニケーションの場づくりの知見を広げたくて、
休日を使って大学に通い、ワークショップデザインの勉強もした。
それなりに自信をもって仕事してきたし、成果も出してきたはずなのに、なぜだ。
 
我が会社では通例となっている、数年に一度ある大きな組織変更で、
天職ともいえる仕事は僕の手からこぼれた。
 
そして、全く未知の仕事に就いたのだ。
ああ、サラリーマンの悲哀、なのか?
 
それからというもの、全然調子が出ない。
やりたいことはこんなことじゃないんだ。
こんなふうに腐ってこの先10年20年と過ごしたいわけじゃないんだ。
どこかに、ここを抜け出すすべはないだろうか。
いっそ転職したほうがいいんじゃないだろうか。
 
SNSを眺めながら、ぼんやりと考えていた。
 
ああ、高校同級生のあいつは、教師になって誇りをもって日々を過ごしているな。
ああ、大学の頃の彼女は、3人子育てしながら仕事して、
忙しそうだけど充実していそうだな。
 
僕には一体何があるんだろう。
好きな仕事もなく、家族もなく、誇りを持てずに今を生きている。
30代、こんなんじゃ瞬く間に年をとってしまう。
焦りだけがどんどん積もっていった。
 
そんなある日、社内教育用に、とある動画コンテンツの共有があった。
資料作成方法についてだからぜひ見てみるといいよ、と上司。
どうせあたりさわりない、よくある「資料作り虎の巻」みたいなやつだろ?と高をくくり、興味本位でそれを覗いた。
 
そして、興味本位を、猛省した。
 
それは、プロモーション提案資料について、
プロのコンサルタントが講義した内容だった。
 
まず全体の骨子をストーリー化して、
ストーリーの中で言いたいことを見出しに落とす。
主張である見出しを、本文で詳しく表現していく。etcetc……。
 
言葉にすると至極ふつうで当たり前のことなのだが、
そのコンサルタントの言葉は淡々としながらすんなりと耳に入ってきた。
何よりすごいと思ったのは、その動画で使われていた資料が、
講義のとおりに作られていていることだった。
最後の最後にそれに気づいて、感動した。
講義全体で講義の中の主張を裏付けていたのだ。プロ、すごい。
 
そして、気づいてしまった。
 
参加する人たちに何を持って帰ってもらうか、目的と全体のストーリーを考え、
それがより伝わりやすくなるように関連部署と連携して、プログラムを作っていく。
去年まで、好きだと思ってやっていたこと。
伝える必要があることを、受け取り手の立場に立ってストーリーを考え、
それがより伝わりやすくなるよう見出しを考え、本文をつくっていく。
今、自分がやっていること。
 
あれ、もしかして、同じなのか?
 
僕は、猛烈に、恥ずかしくなった。
上司は僕にそれを気づかせ、育てようとしてくれていた。
 
ただただ、意味もなくダメ出しされていたわけではなかった。
僕が腐っていることに気づいていて、
自分で大事なことに気づくように、根回しをしてくれていたのだ。
 
そこから2週間。
 
「OK! めちゃくちゃわかりやすくなったよね!」
「ですよね! 僕も自信作です」
 
資料は完成し、納期どおりリリースすることができた。
心が乗った資料はこんなにも違うものなのか。
 
いまやっていることが、どんなに向いてないと思っていても、
実は根で繋がっていたり、未来に繋がっていたり、するもんだ。
 
嫌いとか、苦手とか、言っておきながら、実はそうでもないこともあるかもしれない。
 
ここで、もっともっと、皆に喜んでもらえるモノが作れるかもしれない。
僕は今、整理整頓に未来をみて、ちょっとわくわくしている。
 
 
 
 
***
 
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2020-10-30 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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