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メディアグランプリ

予想外のおもてなし


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:みた なほこ(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「え、何してるの?」
彼は突然、助手席のヘッドレストを外し始めた。
「この方が前がよく見えますから」
 
いろいろなことが様変わりした令和2年も残すところ、あと2ヶ月。
Go TO TRAVEL! GO TO EAT! キャンペーンで、人の動きや外食はいくらか増えてきてはいるようだが、年末の恒例行事はきっと、どこも中止だろう。
 
年末の恒例行事といえば、忘年会。
職場の忘年会に関しては、近年いろいろな意見があるようだ。
若い人は飲み会に行きたがらない。上司に合わせるのが面倒くさい、などなど。
 
私も、もうそんなに遅くまで遊んでもいられなくなった。若い人が言うように、特別親しいわけでもなく、話も盛り上がらないような飲み会は、正直そんなに楽しくはない。自分の時間は貴重だから、好きなことに使うとか、その分身体を休ませたいと思ってしまう。
 
ところで、私は横浜の方のクリニックに水曜と木曜のみ勤務している。
自宅から車で約1時間、電車だと1時間半かけて、通っている。
 
昨年の忘年会は、土曜日の夕方、クリニックのある駅近くで行われた。
勤務日ではないのにわざわざ忘年会のために1時間以上かけて行くのは、正直、ちょっと面倒くさい。
普段なら車で行く方が楽だが、お酒は飲みたいので、電車で向かった。
カジュアルな肉バルのお料理は美味しくて、ワインもたくさんいただいた。
30人近く、席順によっては、話につまるのだが、ちょうど前に座った先生と共通の話題があり、盛り上がって、楽しかった。
 
20人くらいが残って、二次会は近くの居酒屋へ。
もう10時を過ぎていた。
事務スタッフのAさんが、隣の席に座った。
 
「先生とお話しするの、楽しみにしてたの」
そんな風に言ってもらえたら、光栄です。
 
酔いも回り、話も弾んでいたが、そろそろタイムリミット。
「あ、もうそろそろ行かないと。終電に間に合わない」
するとAさんが、
「あのね、主人が迎えに来るの。車で送りますから、もう少し飲みましょう」
「え、私の家、遠いのよ。高速使って1時間かかるんだから」
「知ってますよー。うちの主人、運転好きで、いつも千葉の方までも行ってますし、私もドライブ好きだから、大丈夫です。いつもお世話になっているし」
 
そんな特別なお世話をした覚えはなかった。
こんな夜中に、ご主人をアッシーに使っていいのだろうか?
東京まで往復したら、2時過ぎになってしまうだろうし、
往復の高速代もガソリン代もずいぶんかかってしまうのに。
 
遠慮したのだが、彼女の押しは強かった。
Aさんとの会話は楽しかったし、本当のことを言えば、電車で帰るのは面倒くさい。実にありがたいお話だ。
恐縮しながらも、お願いすることになった。
 
ご主人から連絡が来たので、他の人たちを残して、外に出た。
待っていたご主人は、カジュアルなパーカーにダボっとしたジーンズ、帽子をかぶっていて、50過ぎの私から見たら、若いおにーちゃんという印象だった。
 
「初めまして、お言葉に甘えてしまって、すみません。ありがとうございます」
「いえ、初めまして。あ、これどうぞ」
彼はお水のペットボトルを用意してくれていた。
気がきくなぁ!
 
後部座席に座ると、彼は妙なことをし始めた。
なんと! 助手席のヘッドレストを外しているのだ。
「え、何?」
「この方が前がよく見えますから」
 
なんて気遣い! 確かに視界がグーンと広がって、気持ちいい。
そんなことしてもらったの、初めてだ!
 
Aさんも私の隣に座り、真夜中のドライブが始まった。
いつもの通勤コース。慣れた道だったが、誰かの運転でここを通ることなんてないから、なんとなく新鮮だった。
そして気がついた。
 
すごく丁寧な安全運転!
 
話を聞くと、昔はやんちゃなこともしていたそうだが、今は仕事で車を使うので、運転には気をつけているという。
 
うーむ、やるなぁ!
 
その後、高速道路に乗ってからも、至極快適な乗り心地!
 
若い頃から運転好きな私は普段自分の好きなように運転している。首都高速のカーブなども、どこでギアを変えてアクセルを踏んで、など、体が自然に覚えているから、たまに友人の車やタクシーで、ちょっと危なっかしい運転だったり、加速の仕方やブレーキのタイミングなどが自分の感覚と違うと、とても違和感を覚えるのだが、彼の運転は全く文句のつけようがないものだった。
 
スピード感と揺れが超心地いい!
視界は広く、高速道路のライト、ベイブリッジの夜景が美しい!
 
「トイレ、大丈夫ですか? サービスエリア寄りますんで、言ってください」
 
彼の心遣いは完璧だ!
 
「本当にありがとう!」
マンションの前で私を降ろして、彼らはまた帰って行った。
時刻は1時過ぎ。
ほろ酔い気分に心地よい真夜中のドライブ、幸せな気持ちでベッドに入った。
 
本当に素晴らしい「おもてなし」だった。
 
「おもてなし」という言葉は、2013年のオリンピック招致のプレゼンテーションで滝川クリステルさんが使ったことで、一躍脚光を浴びた。
お客様の事を考えて何かを提供し、お客様の感動、満足度を引き出すと言うこと。ホスピタリティとは似ているが、そこに日本人ならではの精神性、感性をいかしたもので、日本人の心が溢れていてこそのもの。
見返りを求めず、押し付けでなく、決して主張はしないけれどお客様の立場に立ち、お客様に徹底的に寄り添い、お客様が喜ぶことを粛々とさりげなく行う。
 
相手を思いやって、心を込めての「おもてなし」
身の丈に余る超特別なこととか、大金をかけるとかではなくてもいい。
思いもかけないところでそれが受けられると、感動はさらに大きくなる。
 
ただし、してもらって当然という気持ちでいたら、その感動は生まれない。
 
「おもてなし」はもてなす側の慈しむ気持ちと受ける側の謙虚な気持ちがないと成り立たないものなのだ。
 
オリンピックは延期になったし、忘年会も今年はなさそうだ。
でも、私は年末になると、真夜中の「おもてなし」ドライブを思い出すだろう!
 
私も日本人ならではの精神を大切に、「おもてなし」をしていきたいと思う。
そして同時に、ありがたく「おもてなし」を受けていきたいと思う。
 
***
 
 
 
 
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2020-11-08 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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