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日本に生まれただけなのに……


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

課題:松本宏子 (ライティング・ゼミ集中コース)
 
 
「日本人に生まれた自分と、この国に生まれた人たちとどこが違うっていうんだろう」
カンボジアの田舎を通り過ぎる道すがら、目の前に広がる田園と遠くに見えるヤシの木々を車の中から眺めながら、よくそう思っていた。
 
自分が、先進国に生まれたというだけで、指導的立場にいるのではないか。
生まれた場所の差は大きいのだろうか。教育が違うだけで、後はそれほど変わらないのではないか。
 
「地政学」という学問がある。
国の地理的な条件をもとに、他国との関係性や国際社会での行動を考える学問だ。
 
先進国の国々の発展には理由があると「地政学」では言われる。日本で言えば、島国であり、シーパワーを持つため、他の地続きの国々より攻め込まれる可能性が低くなり、独立性が高くなる。
 
「年収は住むところで決まる」という本もあった。年収が、自分の努力だけでなく、置かれた環境やシステムに大きく左右されるという、ちょっと信じたくない話だ。
 
先進国の日本に生まれた私は、国際医療協力のコンサルタントとして、技術移転のために十数回、当地を訪れている。コンサルタントとして働く私は、地政学で言うと、日本に生まれたからこそ、こういう状況にあるのだろうか。
 
1975年からのポル・ポトによる内戦で、200万人以上、4分の1の人口が失われた国。特に、知識層・富裕層が殺され、内戦が終わったときに生き残っていた医師は4人だったと聞く。他の国ほど、部族がはっきりと分かれていないこの国での内戦は、同じ国民同士が戦うという悲劇だ。
 
色が白かったから(中国系のカンボジア人はクメール人より肌の色が薄い人が多く、富裕層が多かった)、眼鏡をかけていたから(知識層と思われた)、そんな理由で殺されていった。
 
1993年に内戦が終わった後、この可哀想な小国に、国連や諸外国、あるいは国際NGOなどから援助が集中した。知識層を失った国民は、援助に頼り、自立が遠のいていった。
 
私が初めて、カンボジアに赴任したのは、2004年のことだ。国としてはだいぶ落ち着いてきたように見えたが、地雷がまだ埋まっている所もあったし、まだちょっと物騒だった。私は、赴任前に護身術を学んだほどだ。まぁ後から考えると、逃げ足を鍛える方が先だったかもしれない。
 
さて、そのような状況での、技術移転は困難を来した。技術を移転する相手側であるカウンターパートの働く意欲が高くないからだ。彼らは、援助慣れしており、私自身は幸運にも目にすることがなかったが汚職も多かったようだ。世界で最も腐敗している国ワースト5位になったこともあるぐらいだ。
 
政府で働いている職員は、かなりの割合で、プライベートビジネスをしていた。公給では、食べていけないからである。仕事は、午前8時から12時、長い昼食を挟んで、午後2時から5時という感じで、午前午後と時間通りにきちんと出勤するスタッフは少なかった。プライベートビジネスがあるからだ。午前は私に付き合って一緒に仕事をしてくれ、午後帰ってこないなど頻繁だった。
 
そんな国だったが、国際機関や諸外国も工夫し、援助のシステムを変えたり、低い公給を援助で補い他に仕事を得なくても暮らしていけるようなサポートをしたりというように、自立を促せるような形に変わってきた。そうすると、スタッフも1日職場に居れるようになってきた。
 
驚くのは、ここ10年ぐらいの発展だ。経済発展と土地の高騰で、日本のバブル期を髣髴とさせる。道路には、日本にもあまり走っていないような、大型高級車がバンバン走っている。プノンペンを走っていると、ここが開発途上国とは思えないほどだ。カフェといえば、道端に小さなテーブルと椅子の置いてあるベトナムコーヒーのような濃いコーヒーに練乳をたっぷりいれたものを出すところだった。おしゃれなカフェは皆無で、建物の中が見えない怪しいタピオカ屋が多かった。それが今では、カンボジア資本のおしゃれカフェや、タイやアメリカからコーヒーチェーン店が乱立し、お金持ちの子どもたちの勉強部屋と化している。日本のイオンがショッピングモールを開店し、地元客に人気だ。知り合いは、トイレの綺麗さに感動していて、イオンのトイレになら住めると豪語した。
 
戦争を知らない若い世代が育ってきた。英語が話せる人も多い。レストランなんかに行くと東京より英語が通じるんじゃないかと思う。プノンペンは国際都市だ。若い優秀な世代が育ってきており、彼らはやる気もある。ぐんぐん成長し伸びている。彼らに大いに期待したい。
 
私自身は、住むところが違っていただけだということを、心に深く刻んでおきたい。そして、指導する立場にはあるが、驕ることなく謙虚に、お互いに学びながら、彼らと一緒に一歩ずつ歩んでいきたいと思う。
 
 
 
 
***

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2020-11-10 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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