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メディアグランプリ

全国の森林を巡ったライターが唯一涙を流した森林


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:成田陸(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「今まで旅してきたなかで、一番良かった森林はどこですか?」と、ある懇談会で質問された。正直この手の質問には困る。
 
今まで読んできたマンガの中で一番面白かったマンガはなんですか? と聞かれるようなもので、スポーツマンガだったら、「ハイキュー!!」が挙がるし、バトルマンガだったら、「鬼滅の刃」を答えるし、恋愛マンガだったら「赤髪の白雪姫」をわたしは勧める。今挙げたマンガは面白いし、好きだが、ジャンルが違うものを比べたりすることはできない。
ジャンルごとの面白さって違うじゃないですか。同じジャンルだったら、比較ができるかもしれないけど、マンガってくくりだと難しい。
 
だから、今までで一番良かった森林はどこかって答えられない。手入れを細やかに行った大きい木が並ぶ森林と、カラマツの黄葉がきれいな森林と、カエデやブナがきれいな森林を比べられない。それぞれの良さがあって、みんな違ってみんないいみたいな話で、やっぱりどこも好きだから、すんなりと答えはだせない。
 
しかし、迷いながらも答える場所が一番印象に残っている森林が一カ所ある。
そこは唯一わたしが現場に足を運んで“涙を流した森林”だった。
 
わたしは北海道から沖縄までの全国の森林を巡っているライターだ。
 
わたしが取材している林業という産業は、時間スパンが非常に長い。刻一刻と変化するIT産業やシーズンごとの流行り廃りが激しいアパレル産業とは対極な存在だろう。
同じ第一次産業である農業と比べても、時間の流れが全く違う。
以前、ベテランの農家さんのお話でこんなフレーズがあった。
「私はまだ種付けから収穫までの試行錯誤を50回程度しかしたことがありません。なので、まだまだ、わからないことがたくさんあります」と謙遜するように話した。
 
もちろん、その方は日々試行錯誤していた。大規模面積を経営されている方で、小面積での実験も繰り返されていた。けど、50回程度というのだ。
高校を卒業して御年70歳にもなる方が、苗付けから収穫までの一連の流れを50回しか経験できていない。
50回というのは、毎週あるこのライティング・ゼミのフィードバックであれば、1年あれば達成できてしまう。
農業でこんなタイムスパンなのだ。では、林業はどうだろうか?
 
ざっとこれの50倍から70倍ぐらいだと思って、問題ない。国土の67%を占める森林のほとんどは、50年から70年前に苗木を植えて、今、収穫迎えていると言われている。つまり、なにが起きたかというと、植えたときと収穫期では全く違う状況になってしまったことだ。テクノロジーが発展して、物品の輸出入は盛んになり、物価や人件費なども上がった。山村や農村からは若者が都会に出ていった。他にもここには書ききれないほどの変化が起きている。
変化の中林業は、いっとき丸太一本、10万、50万、100万の値がつく黄金期を経験したが、そんなの長く続かなかった。逆に黄金期の経験が足を引っ張って、終わったあとの変化に対応できなくて斜陽産業に突入した。
 
さて、わたしが涙を流した森林というのは、荒波のような変化を受けながらも、日々懸命に森を育て、少しでも木を高く売ろうとするビジネスの現場だった。
 
そこは鳥取県智頭町の丸太市場だ。智頭町は岡山県と兵庫県の県境に位置し、400年以上前から林業で栄えている地域だ。市場は築地市場をイメージしてもらえば助かる。
丸太市場とは、ようは山から降ろした丸太のオークション会場だ。
その市場は山から運ぶなかで付いた傷などをあえて、表に見せていた。普通、欠点があつたら隠すはずなのに、そこは正直な商売をすると決めていたからそうだ。
 
時間になり、カラン、カランとセリ子さんがもつ鈴が鳴る。いよいよ、セリ(競り)が始まった。はじめは1万円、様子見のゾーンから始まる。1万1千、1万2千、1万2千が繰り返され、落札される。
セリを繰り返し始まって40分ぐらい経った頃だった。ようやっと本命のコーナーにセリ子さんがやってきた。
セリ子さんは、丸太の状態を見て、セリの開始値段を決め、良いところをアピールする営業マンだ! 声の張り方やテンポでその場の雰囲気を操作する。だから人によって盛り上がりが違って、120年以上の丸太が並んでいる本命コーナーになると、ベテランのセリ子さんにバトンタッチする。
 
3万円からセリが始める。3万5千、4万、5万、5万2千、5万2千! 今回の市場で最も高かった丸太が落札される。まだ、本命コーナーは続く。
「3万から始めるヨー、3万、3万、3万。あれ買わんかね、では2万8千、8千8千、これでもダメかぁ~? 2万5千、5千、5千」買い手が付かないと値段はどんどん下がっていく。「これ以上は山が作れないよ~」泣くようにセリ子さんが声をだし、買い手の情に訴えかける。「わかったよぉ、買うよぉ」といって買い手がついた!
 
ここまで身に迫った「山が作れない」という言葉を聞いたのは、今までここだけだった。そんな泣き言いうなんて、ビジネスをなめている、とあなたは思ったかもしれない。しかし、先にも書いたが、林業はタイムスパンがまるで違う。あの買われた丸太は120年前、世代でいうと5代か6代前の先人が植えたから収穫ができて、その日の市場に並べることができた。裏を返せば、今、植えないと120年後の人は丸太を収穫できないのだ。彼の言葉には、今まで手間ひまをかけてきた先人への感謝と子孫への想いがのっていた。それを聞いたときツゥーと涙がでてきた。
 
目の前にある仕事が、タイムカプセルのように未来に直結する産業は林業以外にないだろう。もし、少しでも興味がでたら、山に訪ねてみてほしい。日本の67%は森林なのだから、身近なところで彼のような人に会えるはずだ。
 
 
 
 
***
 
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2020-11-15 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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