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メディアグランプリ

厳しい師匠から憧れの上司へ。10年越しに気づく本気ゆえの愛情


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:石田友希(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
あれは大学4年の夏、2000年代初めの頃だ。
超氷河期と呼ばれる時代に就職活動していた私は、まだ1社も内定をとれず
内心とても焦っていた。
そんな時に、大学の就職相談室でふと目に留まったのが、のちに入社することになる
D社のポスターだった。正直なところ、これまでノーマークだった業界だ。
予備知識も無いのでダメでもともと、まずは現状を打破するしかないという一心で
受験したので、勝算はゼロ。けれども巡りあわせというのか、運よく拾ってもらうことが
でき、私は翌年4月に晴れて新入社員となった。
 
それはすなわち、試練の始まりでもあった。
働き方改革なんて、まだ存在すらしなかった時代だ。地元企業のD社には、手厚い
研修体制など無く「現場で見て覚えよ」が当たり前という職人気質な環境だった。
その時の上司というのが、Mさんである。
5歳上といえば、いまなら誤差の範囲だが、新卒の私にしてみれば、
果てしなく上の先輩だ。ハキハキと力強い語り口で、女性ながら男性とも対等に
渡り合っていけるような頼もしい人だった。
ゆえに部署のメンバーに注意する時も「ここがダメだ」と一刀両断。
歯に衣着せぬ物言いで、当時の私はMさんがいるだけでかなり緊張していた。
 
その状況に追い打ちをかけたのが、遠方への営業同行だった。
車の助手席にMさんを乗せ、片道100キロを超える長距離を私ひとりで運転し
プレッシャーは並大抵のものではなかった。走り慣れない道ゆえ、ルートを外れぬ
ように注意を払い、Mさんとぎこちない会話を続け、取引先にたどり着く頃には
疲労困憊だった。担当の方に企画提案するだけのエネルギーは残っておらず、
説明はグダグダ、挨拶がてらの雑談も盛り上がらず、見かねたMさんに助け舟を出して
もらう始末だった。帰りの車中では、当然のごとく大反省会が始まった。
「企画の説明が分かりにくい」「会議の中で企画意図をしっかり話し合ったのに、
全然伝わらなかった」「声が小さい」「あの担当さんは、うちと付き合いが長いから
いいけれど、新規のお客さんのところにいくなら、もっと想定質問を考えないと」
とにかく耳が痛かったのは、すべてが的確な指摘だったからだ。
それ以上にMさんに圧倒されてしまい、返す言葉もなかった。
 
できのわるい社会人一年生は、以降も様々な注意を受けることになる。
「気が利かない」は日常茶飯事で「時間に余裕をもって動くように」「段取りがわるい」
などなど、よくもまぁこんなに指摘されるなと思うくらい叱られた。
 
けれども幸か不幸か多忙を極める職場ゆえ、落ち込んでいる暇もなく、私は仕事を覚える
ことに必死だった。つまずきながらも前へ進み続けることができたのは、Mさんが
「褒める達人」でもあったからだ。
たとえ失敗しても、それが挑戦だと分かれば、ちゃんと認めて改善点を示してくれた。
わずかな心配りでも、こちらの配慮を汲み取って、心から感動してくれた。
苦手なところを指摘するだけでなく、得意なことを見つけ出し「その力をもっと伸ばしたらいい」と励ましてくれた。
私が大クレームを受けた時には、何も言わずに取引先に同行し、一緒に頭を下げてくれた。
「いいものはいい、わるいことはわるい」という厳しくも温かいリアクションは、
すべてが自分へのフィードバックになっていたのだ。
 
さらにMさんの仕事ぶりにも目を見張るものがあった。
手ごわいクライアントでも臆することなくコミュニケーションをとっていたかと思えば
関連会社の人達と綿密に連携をとり、無駄のない段取りで全方向に気を配っていた。
企画立案時には「なぜ」を突き詰め、顧客ニーズを洗い出し、感度の高いアイデアを
生み出していた。そうしてMさんは、日々の言葉で、そして誰より真剣な背中で、
部署のみんなに指針を示していたのだ。
だからチームの士気が上がり、気づけば過去最高の売り上げを叩き出していた。
 
それから色々あってお互い別々の道を歩むことになったのだが、縁とは不思議なもので、
再びMさんと一緒に仕事をしている。お互い年をかさねたことに加え、Mさんが
一児のお母さんになったこともあり、心の距離がグッと近くなった。
いつかの遠方営業が嘘のように、今では数時間おしゃべりしても足りないほどだ。
優しさと柔らかさが増したMさんは、以前にも増して若いスタッフの魅力を発見して
くれる。
「Aさんに質問したら、予想を上回る答えが返ってきてびっくりしたよ」
「Bさんは、新卒2年目と思えないくらい安定感があるね」
「Cさんは説明が的確で、いつも助けてもらっている」
慌ただしい現場ゆえ心がすり減りそうになるのだが、愛のある言葉の数々に、どれだけの
スタッフが救われているだろうか。
そしてMさん自身もライフステージを進みながら、自分の新たな可能性を模索している。
歩みを止めないMさんは、やはり刺激を与えてくれる存在だ。
新卒の頃、試練だと思った出会いは、約20年の時を経て人生の原動力になっているのだと実感する。温室で育つより、叱咤激励してくれる上司のもとで、走って転んで経験を積む方が、私には合っていたようだ。今度はバトンをつなぐ番だ。
Mさんに追い付くのは簡単ではないけれど、まずは気持ちをちゃんと言葉にして、後輩に届けていきたいと思う。のびのびと働く人を育てることが、何よりの恩返しになるはずだ。
 
 
 
 
***
 
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2020-12-13 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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