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メディアグランプリ

茶人は“ダンサー”だった


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:住田薫(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
私の茶の師匠(男)は、美しい人だ。
 
ジャニーズばりのカワイイ男の子、とかいうわけではない。
“女形”のように美しい顔立ちをしているわけでもない。
鍛えられた美しい肉体美をもっているわけでもない。(たぶん)
初めて会ったときの印象は、「ずいぶん声の小さな人だな」だったと思う。
 
でも、美しいのだ。所作が。
もう、惚れ惚れしてしまうレベルで。
 
もう5年ほど前になるだろうか。
寒い冬の日の夜、この後どハマリすることになる、茶道教室をたずねた。
 
お茶の世界には、ずっと興味があった。
会社の先輩たちが通っている教室の先生が面白いと聞き、私も連れて行って欲しいとねだっていた。だけど先輩方はもう熱が冷めているのか、「今は忙しくて」とかいい、欠席が続いているようだった。
こらえきれずウズウズしているところに、ドイツ人の男の子がインターンに来た。――チャンスだ、と思った。
わざわざ日本に来ているくらいだから、きっと日本文化に興味あるに違いない、茶道体験したいよねと、半ば強引に誘い、「外国人のインターンの子が興味あるらしい。日本にいる間に見学に行きたい」と彼を口実に連絡をとってもらった。
 
そんな私達を、先生はあたたかくもてなしてくれた。
 
「今日は他の生徒さんもいないので、お客として二人をもてなします。ゆるりとくつろいでください」
 
通された部屋には、夜の暗い室内に、ロウソクの灯りと、釜の中で湯が沸く音だけ。
そこで静かに、ゆっくりとお茶を点てていただいた。
 
びっくりするくらい、美しい時間だった。
 
道具を運び入れ、一つ一つ丁寧に清め、茶を点てる。
静かに、おごそかに、淡々と繰り広げられる、儀式めいた立ち居振る舞いに、ただただ見惚れた。
 
――そうか。師匠は、“ダンサー”なんだ。
あれから数年間、稽古に通った今、思う。
 
あのときの、美しい所作のヒケツは、“カラダの動かし方”を徹底的にトレーニングし、コントロールすることにあった。
 
お稽古では、様々な“カラダの動かし方”を習う。
身体のそれぞれの部位を、どの位置におき、どこの関節をどの向きにどのくらい曲げて、どのくらい力を入れ、あるいは抜くか、息の仕方、礼の仕方、座り方、歩き方……などなど。
新しく習い始めたのはエクササイズだっただろうかと錯覚しそうなくらい、細やかに身体を動かすよう指示がでる。
 
たとえば、衝撃的だったもののひとつに、棗(なつめ、粉状の抹茶を入れる容れ物)の清め方がある。
左手に棗をもち、右手に畳んだ帛紗(ふくさ、ハンカチのようなもの)をもち、棗のフタの上を上、下と二回軽くなぞるのだが、このとき、左側の腕や手は、「なにもしない」のではなく、「動かさない」ことをしなさいと教わる。
「なにもしない」、つまり左側の手に何も意識を向けていないと、実際にはぶらぶらと上体の動きに合わせて動いてしまう。だから意識して同じ位置に留めるよう「動かさない」ということをする必要がある、というのだ。
 
――「動かさない」ということをする?
 
最初は、意味不明だ……と思った。
でも。ためしに左手左腕に「動かさない、動かさない……」と意識を向けると、師匠のような、ピタッと美しい構えが出来ていた。わお。
身体って、こんな風にコントロールすることが出来るものなんだ……!
 
「軽いものを、軽々しく持ってはいけない。逆に重いものは、重さを感じさせないように」
「手先だけで持つんじゃなくて、身体の中心から伸びるライン全体をつなげるように」
「取りに行こうとしないで、息を吐きながら身体を倒して……」
 
……稽古中はつぎつぎと、“身体の動かし方”に対する指摘がとぶ。
身体の動かし方ひとつで、動きが引き締まって見えたり、複雑な動きが楽になったりする。
人体って、すごい。
 
飛んだり跳ねたりするわけではないけれど、これはもう、“舞”と呼んでもよいのではないか。
身体を徹底的にコントロールし、その美しい所作で、人々を魅了する。
究極的に静かな“舞”、なのだ。
 
そんなことに気がついたら、もうこの妄想は止まらない。
 
稽古の中で、師匠がよく口にし、大事にしていると思われることの一つに、「始まりのテンポ」がある。
亭主(茶を点てる人)が最初に部屋に入る際、じんわりゆっくり静かに入ると、場はおごそかな雰囲気になるし、逆にサクサク入ればカジュアルな雰囲気になるのだそうだ
 
もうひとつ、よく言われるが、進行のスピードだ。
茶を飲む前の、準備していく段階は、ゆっくり丁寧におこなうと味わい深くなるが、後半の片付けはサクサク進めたほうが、場が間延びしない、という。
つまり場の全体にスピードにメリハリをつけて、飽きさせない工夫をしているのだ。
 
もてなしの時間全体が、ひとつの曲のようになっている。
その音のない曲を、身体全体をつかって“おどる”。
 
私も師匠のような美しい人になる日を夢見て、今日も“ダンス”の稽古に精を出す。
 
 
 
 
***
 
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2020-12-21 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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