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あなたを突き動かす「心の声」はなんですか?


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:前田理香(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「お前が『もうこれ以上頑張れない』と思うほど頑張った結果なら、帰ってきていいぞ」
 
海上自衛隊に入隊して2週間。
「辞めて帰りたい」と泣きながら電話をした私に、父はそう言った。
 
私は、帰れなかった。「限界まで頑張った」と言えなかったからだ。
 
海上自衛隊で整備員として航空機に乗っていた父は、私の憧れだった。その上、毎週のように自宅に遊びに来る父の部下や同僚が、「理香ちゃんは自衛官になった方が良いよ」と言ってくる。
「人と違った仕事がしたいなぁ」とふわっと思っていた私は、運動が苦手なことも忘れ、高校3年生の春にはすっかりその気になっていた。
 
なんとか採用試験に合格した私は、横須賀教育隊に入隊。訓練が始まった。
これまでとは全く違う時間に追われる生活。朝は6時起床と同時にランニング。食事は食堂まで行進して行かなければならず、常に団体行動。時間がないからと食事を抜くことも許されない。食堂から戻って来ると、急いで教務の準備。放課後の時間には水泳とランニングの基礎トレーニングが続く。そして夜には洗濯とアイロンかけと靴磨き。初めての経験で上手くできないうえに時間もかかる。出来上がらなくても22時には消灯ラッパが鳴り響き、ベッドに入らなければならない。消灯後には当直教官が見回りをし、起きている者は厳しく𠮟られることになる。「寝る」ことも訓練だからだ。
 
1週間で、入隊したことを後悔した。
 
生活リズムには慣れていったが、1000m走は必死に走っても6分台がやっと。腕立て伏せや懸垂も、筋肉痛がひどくなるだけで、一向にできるようにならない。
運動部だった同期が、走り終わった後に楽しそうに話をしているのが恨めしく思えた。
生まれて初めて、自分が何の役にも立たない人間のような気がした。
 
「もう嫌だ! 無理! 帰りたい。辞めて良いよね!」実家の父に、泣きながら電話を掛けた。
 
父はしばらく黙って聞いていた。そして「お前が『もうこれ以上頑張れない』と思うほど頑張った結果なら、辞めてもいいぞ」と静かに言った。
私は返事ができなかった。暫くの沈黙の後、ようやく「考えてみる」と答え、電話を切った。
 
「私は本当に限界まで努力したのか?」「これが私の限界なのか?」自分に問いかけた。
 
私は速く走るためにどんな努力をしたのだろう?
筋力をつけるためにどんな工夫をしただろう?
「もう走れない」と諦める前に「あと10m!」と自分を鼓舞しただろうか?
悔しかった時、「見返してやろう!」と思っただろうか?
弱い自分、できない自分をちゃんと受け入れただろうか?
 
走りながら、筋トレしながら、訓練を受けながら、お風呂に入りながら、食事をしながら、布団に入りながら、必死に考えた。
 
数日かけて出た答えは、「私はそこまで頑張っていなかった」ということだった。
 
そこから私は必死になった。足の速い同期に走り方を教わり、腕立て伏せや懸垂が得意な同期には、筋トレのコツを教わった。恥ずかしいとか格好つけたいといった安いプライドを捨てると、仲間が助けてくれるようになった。
 
3か月の教育期間で、腕立て伏せは同期みんなと同じくらいできるようになり、懸垂は鉄棒にぶら下がるのがやっとだったのが3回もできるようになった。
1000mは4分台で走れるようになり、ゴールの後みんなと笑い合えるようになった。
走ることが大嫌いだったのに、自分から7Kmのジョギングをするようになっていた私は、卒業式に来た両親に胸を張った。
 
そして一昨年、入隊2週間で辞めようとしていた私は、定年退官を迎えた。
 
人には、自分を突き動かす「心の声」というものがある。
この「心の声」は、小さい頃から保護者や教育者から教えられ、求められたものが自分の中の価値観として根付き、時には励ましたり、時には縛り付けたりするもので、次の5つといわれている。
 
1 完璧であれ(常に完璧であることを求める)
2 努力せよ(一生懸命、常に努力することを求める)
3 他人を喜ばせろ(自分や身内を犠牲にしても他人を優先しようとする)
4 強くあれ(強くあること、我慢することを大切にしている。弱音がはけない)
5 急げ(じっとしていられない、テキパキしないと気が済まない)
 
1つだけを持っている人もいれば、複数を持っている人もいるが、どれもこれまでの自分を支えてくれた大切なものなので、良いも悪いもないし、正しいも間違っているもない。
 
自衛隊を定年まで勤めあげた私の「心の声」は、2番目の「努力せよ」だったと思っている。この「努力せよ」という「心の声」は、自分に甘くなりがちな私を支え、成長させてくれた。そして壁にぶち当たるたびに、壁を乗り越える原動力にもなった。
 
そして今も、私の人生を支えてくれている。
 
さあ、あなたを突き動かす「心の声」はなんですか?
 
 
 
 
***


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