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太陽の光が大人になるための道標だった


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

 
 
記事:山田俊弥(共感ライティング)
 
「この先ってどうなっているのかな?」
 
水深50メートルの海の中で、次第に暗くっていく水の底を眺めながら
そんなことを考えていた。
 
あれが人生の分かれ道だったかもしれない。
きっと誰にでも後から思えば「あれがそうだったな」と思う出来事があるだろう。
 
僕の30才は最悪だった。仕事では突然退職してしまった同僚2人の仕事を合わせて担当することになり、いつまでたっても終わらない仕事に忙殺されていた。
 
デートの約束をしてもキャンセルばかり、休みの日も仕事に出かけていく僕に愛想をつかしたのだろう、その年の誕生日に当時、付き合っていた女性に振られてしまった。
 
僕の中では「30才=1人前の大人」という思い込みもあり、この先の結婚を意識していた気持ちもあってショックが大きかったのだと思う。今考えると幼い考え方で恥ずかしくなるのだが、「もう、女性と付き合うのは懲りた。独りで生きていこう」と考えてしまったのだ。
 
独りで生きていくのだから、これまでやりたかったけど出来なかったことをしよう。そう考えて出てきたのが、スキューバダイビングだった。
 
やっと人員の補充があって人並みに休みがとれるようになった休日、近所のショップをいくつか調べて、家から一番近いダイビングショップを訪ねた。専門のショップだけあって、週末になるとダイビング好きの常連が集まっていて、スタッフと写真を見ながらダイビング談議に花を咲かせていた。楽しそうな話を聞いて面白そうとも思った。
 
そしてその日の内にライセンス講習の予約をして帰ってきたのだった。
 
翌週、早速ライセンスを取得した。それからは、休みが取れるたびに海に出かけた。もともと海が好きだった僕は、ダイビングの魅力に取りつかれたかのようにのめりこんでいった。
独りで生きていこうと強がっていた僕にとって海は包み込んでくれる、癒してくれる存在だったのかもしれない。
 
その頃になると、ショップを通じて以外のダイビングも行うことが増えてきていた。現地のダイビングショップに直接予約をして、一人で訪れ、その日予約をしていた初対面のメンバーと潜る。顔見知りと潜る楽しさも良いが、人間関係が深まると面倒なことも増えてくる。こちらは旅の醍醐味を同時に味わえるし、ややこしい人間関係がないことが楽だったのだ。
その日は、まとまった休みが取れたため、飛行機で南の海に向かった。この日から休みに入るため、前日までの残業続きで疲れは残っていたが、天気も良好。早速潜ることになった。
 
この日はボートで無人の離島近くまで移動してから潜るとのことだった。今回は経験者ばかりなので少し深いところまでいきましょうと説明を受けた。インストラクターを含めて8人。ダイビングでは必ず2人でペア(バディと言う)を組み、お互いをフォローしあうことになるのだが、私のバディは若い男性だった。大きな水中仕様のカメラを持っており、挨拶した時に水中写真が趣味と教えてくれた。
 
潜り始めて10分ほどが過ぎた。すでに水深は25m程度。水中は薄暗くなっていた。この頃には僕前日の睡眠不足も重なり少し窒素酔いをしていたのかもしれない。バディのカメラにばかり気を取られていて、カメラを追っていった結果、僕は全く違う別のダイバーについて行ってしまった。
 
それに気が付いてその場にとどまった時にはすでに水深は40mを超えていて、更に暗さは増しており、周りには誰もいなくなっていた。聞こえてくるのは、自分の呼吸の音だけで静かだった。そして、その場所は少し崖のようになっていて、海は更に深くまで続いている。思わず深く暗い海の底を覗き込んだ。
 
この時忘れていた、いや忘れようとしていた、寂しさが蘇ってきた。
 
「どうせこれからも独りだしなあ」
 
頭の中にこんな思いがよぎってくるのを必死に振り払った。
 
「ふう」
海の底でため息をつき、空を見上げるように上を見上げた。
 
水面の方向から太陽の光が差し込んでいて、きらきらと光っているのが見えた。
 
それを見てまったく違う感情が湧き上がってきた。
 
「ああ、やっぱり独りはいやだなあ。またデートしたいなあ」
 
それからの行動は早かった。講習で習ったとおり、まず止まって、空気の残量を確認した。1/4ほど残っていることを確認して、周りを見渡す。周辺は暗かったが、光の方向に向かって水深計を確認しながらゆっくりしたペースで浮上していていった。
 
この時をきっかけにして、僕の「独りで生きていこう」という気持ちはすっかりどこかに行ってしまった。
 
また、人生のある時期に不運なことが重なったとしても、それはずっと続くことではないし、見えていなかっただけで、良いこともたくさんあったことに気が付くことができたのだ。
 
人生を変えた出来事というのは大げささかもしれないが、本当の意味で僕自身が大人になるための分岐点だったことは間違いない。
 
今家族を持って幸せを感じていられるのは、あの時の海と太陽のおかげかなと思っている。
《おわり》
 
 
 
 
***

この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。
 

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2021-02-02 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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