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Kさんへ、感謝をこめて


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:Risa(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「1月いっぱいで辞めることになった」
 
去年の12月、職場の友人Kさんが告げてきた。
 
なんとなくずっと一緒に働けると思っていたから、ショックだった。
 
でもショックの後に湧いてきたのは、出会えたことへの感謝だった。
 
特に、このコロナ禍で友達になれたことは本当にありがたかった。
 
Kさんと会ったのは去年の秋だった。
 
彼女は派遣で、私は直雇用。
 
私は去年の9月から入ったから、春から働いていた彼女は少し先輩だった。
 
年末までの短期で働く派遣の方も多かったけど、彼女は少なくとも10月の時点では、「無期限です」と明るく言っていた。
 
まだ慣れない時に、「一緒にがんばっていきましょう」と言われて、どれだけ嬉しかっただろう。
 
1つ前のバイトを一週間でクビになっていたから、なおのこと彼女の存在は私の中のささやかな支えであり癒しだった。
 
ロッカーも隣りで、はじめの頃からKさんはよく声をかけてくれた。
 
私は恥ずかしがりで、自分からは挨拶くらいしかしないから、どう話していいのか悩みつつ、明るい笑顔に精いっぱい応えていた。
 
私は彼女よりも10歳ほど年長だったが、パートの主婦が多い職場では二人とも文句なしに若い部類だったから、仲良くなるのは自然の成り行きだったかもしれない。
 
きっかけは何だったのだろう。
 
帰りのバスで先に降りるKさんが私に手を振ってくれたり、一緒に作業をしたり、そんなことが積み重なってだんだん親しくなっていった。
 
決定的に仲良くなれたのは、私が週に一回Kさんと二人組でやる仕事を任されるようになってからだろう。
 
他の人たちとは離れた場所でやっていたため、他愛もないおしゃべりをしながらのびのび取り組んでいた。
 
「Rさんに友達として片思いしている」とある日彼女に言われた。
 
冗談っぽく、「じゃあ両想いになろう」と私は言った。
 
こうして、友達としてのお付き合いが正式にはじまった。
 
こんな仲がいつまでも続くのかな、と何気なく思い、私は新しい職場ながら安心感に包まれていた。
 
昨年末までは。
 
思い返せば、予兆はあった。
 
二人で作業をする時に、「若いといろんな雑用を任されて大変」とKさんはぼやいていた。
 
Kさんが雑用をやっているようには思えなかったから、「雑用ってどんなこと?」と聞いたけど、はっきりとした応えはなかった。
 
私は、むしろいろんなことを任されていてすごいと思っていた。
 
小さな不満やがんばりは段々と積もっていったようだ。
 
年末のある日、上司から言われた「まだできてないの?」という言葉で彼女の感情のダムは決壊した。
 
こんなにがんばっているのにどうしてわかってくれないのか、とKさんは泣き喚いた。
 
私はその場にいなかったが、仕事の後で海に沈む夕日を廊下の窓から見ているときに、帰り支度をした彼女がやってきて打ち明けてくれた。
 
その時点ですでに、派遣元と相談して1月末でやめると決まっていたことも知った。
 
年が明けてからは、一緒に働けるのはあと少しだとわかっていたから、もっと仲良くなろうとどちらからともなく思った。
 
仕事帰りに遊びにいくようになった。
 
約束していくこともあったし、積もる話がある日には、当日「今日終わったらお茶しよう」なんてノリで遊びにいったりもした。
 
そんな日は、彼との思うようにいかない恋の話を私は聞かせてもらった。
 
彼女の存在は私にとって貴重の一言だった。
 
職場に友人がいることが、どれだけ嬉しいことなのかを彼女は教えてくれた。
 
行き来が難しいこのコロナ禍において、対面で会える唯一の友達でもあった。
 
しかも、約束しなくても職場で週に数回会えてしまう。
 
去年は気軽に会えた遠くの友人に、緊急事態のため思うように会えなくなっていたので、これがなんとありがたいことなのかを特にこの一か月で実感した。
 
そして、楽しい日々がいつまでも続くわけではないことも教えてくれた。
 
人との関係の断続性とでも言うのだろうか。
 
昨年の11月、12月、Kさんと二人でおしゃべりしながら働き、お互いに他愛のない会話を楽しんだあの日々はもう戻ってこない。
 
ただ貴重な思い出として残り、今度会う時には、また違った関係性を築くことになるだろう。
 
新たな仲が始まっていく。
 
1月31日が彼女の最後の勤務日だった。
 
彼女は備品とロッカーのカギを返して職場を去った。
 
私も自分の身の振り方を考える時が来ている。
 
思えば、私はどの進路に進むのか、しばらく様子見をするために今のバイトを選んだのだ。
 
方向が少し見えてきた今、もうこのバイト先にこだわる必要はない。
 
彼女と出会たこの職場に感謝しつつ、私も新たな居場所を探す時なのだ。
 
彼女と次に会う時は、何らかの新しい報告ができるように、その日までがんばってみたい。
 
 
 
 
***
 
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2021-02-02 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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