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メディアグランプリ

コマはまわるよ、どこまでも


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:浦部光俊(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
はぁ、さっきからため息が止まらない。今日は久しぶりのいい天気。子供たちは幼稚園の友達と一緒に遊んでいる。せっかく公園にきたというのに、僕の頭の中はさっきから昨日のことばかり考えている。  
「お前、本気で仕事やってんのか!」 最近、異動してきた部下のモーリー君が作った資料、見た瞬間、きつい言葉が出た。  
何度、同じ質問をされても丁寧に答えてきたつもりだった。この仕事、本当に僕がやるべき仕事なんですか、なんて言われても、自分で仕事の範囲を決めないで、チャンスだと思ってやってみよう、思わぬ発見があるかもしれないよ、優しく接してきたつもりだった。  
それなのにこの資料かよ。「森、お前、ふざけてんのか」  
つい感情が出た。しまった、これじゃ相手は心を閉じてしまうだけ、そう思って顔を見ると、モーリー君はガッツリ落ち込んでいる。あー、また、やってしまった。  
正直、部下との接し方が分からない。しばらく前までは、俺について来い、背中を見て学べ、できないやつには、ふざけんな。難しいことはなかった。でも、いまどきこんなことやったら、すぐにパワハラだ、ブラックだってなってしまう。  
もっとコミュニケーションをとって、部下と同じ目線で。僕からしたらそんなソフト路線で仕事が覚えられるのか、疑問はあるが、きっと世の流れなのだろう。はっきり言って、何が正しいんだかぜんぜんわからない。  
「お父さん、これ、ぜんぜんうまくいかないよ」  
駆け寄ってきた娘の声にハッとする。手には、幼稚園で作ったコマと紐。自分で色を塗ったお手製、赤、紫、緑と色鮮やかだ。友達みんなで回しているのだが、確かにさっきから誰もうまく回せていない。グラグラとしてすぐに止まってしまったり、うまく回ったと思っても、ほかのコマとぶつかって、弾きとばされてしまったり。試しにと思って、自分もやってみるのだが、これがなかなか難しい。  
なるほど、コマに大事なのは、安定した軸と相手との距離感か、まるで人間関係みたいだな、そう思った時、胸にチクリと痛みを感じた。果たして、僕は自分の軸をもっているのだろうか。相手との距離感を正しく測れているのだろうか……  
昨日までのモーリー君とのやり取りを思い出した。確かにモーリー君にも改めるべきところがあるのは事実。だけど、僕はそれを責める資格があるのだろうか。  
最近のトレンドと言われて、大した納得感もなく取り入れてきたソフト路線の部下指導術。上澄みだけの理解で試してみて、うまくいかないと嘆いたり。やっぱり昔のやり方がいいんじゃないか、そう言いだしたって、深い信念があるわけじゃない。昔からの流れで、なんとなくやっているだけ。軸なんてどこにもないグラグラの自分。  
相手のとの距離感にしたって同じだ。部下と同じ視線でと、急にモーリー君なんて呼んでみたって、距離が縮まるわけがない。下心を見透かされて、かえって怪しまれているだけだ。
くそっ、僕はいったい何をやっているんだ、ため息をついたとき、耳に飛び込んできたのは大きな歓声。  
「できた、できた」 子供たちが大喜びしている。見ると、全員のコマがそろって回っている。それぞれのコマがオリジナリティあふれる色、とてもきれいだ。  
考えてみれば、公園に来た時から、ずっと練習していた。どうしたらきれいに回るのか、どうしたらほかのコマとぶつからないか、みんなで話し合っていた。上手にできない子には教えてあげたり、お互い助け合っていた。きっと、何度も失敗したに違いない。それでもあきらめないで、みんなで協力してすこしずつ積み上げて。  
そうか……、色とりどりのコマを見たとき、少しわかった気がした。  
自分の軸も、相手との距離感も、少しずつ、人の中で作っていくものなのかもしれないな。ぶつかり合って失敗したって、また、やりなおせばいい。あきらめないで、みんなで協力して、それを繰り返していくうちに、自分色のコマが回り始めて……  
モーリー君との関係だって、まだまだ始まったばかり。グラグラしているのはお互い様だ。接し方が分からない、なんて言うには早すぎる。僕が与えられるものも、モーリー君が与えてくれるものも、きっとある。二人が自分の色を出していく関係が築けるはずだ。  
よし、そう簡単にあきらめてたまるか、やる気を取り戻した僕は子供たちに声をかけた。「おーい、お父さんにも、コマのやり方、教えてよ」 見上げた空は、雲一つなく晴れ上がっていた。 
 
 
***
 
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2021-02-02 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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