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メディアグランプリ

ニワトリになりたいと思った日


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:鈴木謙二(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「クワーッ、クワッ、コケーッコッコー」
「コーケコッコー」
 
結局、今日も朝早くに目が覚めた。いや、勢いよく「起こされた」と言うべきなのかもしれない。
 
ラオスの古都ルアンパバーンに来て4日目になる。海外旅行に目覚まし時計は欠かせないが、この街ではそれが全く意味をなさない。なぜなら、彼ら(ニワトリたち)が毎朝決まった時刻に必ず起こしてくれるからだ。
そのため、昨日からは私の代わりに目覚まし時計がスーツケースの中で眠ってしまっている……。
 
ラオス? ルアンパバーン?
皆さんはご存知だろうか。聞いたことはあっても興味がある人はほとんどいないと思う。ここに来るまでは、私もその一人だった。
 
では、なぜラオスに来ることになったのか? しかもルアンパバーンという(覚えづらい)街を選んだか? これにはワケがある。
毎年、私たち夫婦は夏季休暇を利用して海外に行くことにしている。それもいつからか、ヨーロッパとアジアを交互に訪れるのが暗黙のルールとなっていて、今年はアジアの番だったのだ。
 
行き先を決めるにあたり、とりあえず候補となる国をノートに書き出してみる。
行ったことがなくて行ってみたいアジアの国はどこだろう。ワクワクしながらペンを握ったが、白紙のノートを見つめたまま固まってしまった。これまでの旅行で行き尽くした感もあるが、それにしてもピンと来る国が無かったのである。
 
そんな時、何となく入った書店で一冊の本が目に留まった。
 
「ラオスにいったい何があるというんですか?」
 
これは、村上春樹の紀行文集だ。この中には、彼が過ごしたいくつかの街での体験談が書かれている。読み終えた後、不思議と「何があるか分からないが、とにかくラオスに行ってみよう!」という気持ちになっていた。
 
こうして今、私たち夫婦は、ラオスのルアンパバーンという世界遺産の街に滞在している。
 
ここでは、先ほどのようにニワトリたちに叩き起こされても不快になることはない。むしろ、涼しくて快適な朝の時間がもったいないくらいである。
そのもったいない時間を有意義に過ごそうと、自転車を借りて、ひとけのない街を爽快且つ贅沢に駆け抜ける。目指すは、街を代表する寺院ワットシェントーンだ。
 
メコン川と支流ナムカン川に挟まれた半島の先端までは10分足らずで辿り着く。寺院でお参りをした後、川が見下ろせるベンチまで来てようやく一息つけるのだが、そこから見える雄大な川の流れにしばらくは言葉が出ない。茶色く染まった川のうねりが全身を伝ってきそうな感覚に襲われる。
 
川に沿って右側に目を向けると、少し離れたベンチで同じように佇んでいる一人の青年が視界に入る。
「きっと、彼もここから眺めるメコン川の景色が好きなのだろう」と勝手に想像してみたが、少し様子が違う。気になってよく見ると、なんとタトゥーを彫っているではないか。
あまりのご執心ぶりに、この時ばかりは邪魔にならないよう静かに立ち去るしかなかった。
 
そろそろ引き返そうとホテルに戻る途中、汚そうな(実際キレイとは言い難いが)サンドイッチの屋台に立ち寄る。看板に書かれた豊富なメニューに指さしながら注文すると、おばちゃんが手際よく大量の野菜とチキン、チーズを挟み、ドレッシングをかけてくれる。これが絶品(しかも、大きくて格安)なので、昼はこれを常食にすることにした。
 
正午が近づくに連れて、気温が一気に上がる。東南アジア特有のスコールがいつ発生するかも読めないので、早々にホテルに退散するに越したことはない。油断してこの時間に出かけるといろいろな意味で後悔することになる。なので、夕方まではホテルのプールでゆったりと過ごすのが賢い選択だ。
 
このサイクルで過ごした4日間は、短いようでとても長かったと感じる。(決して「長いようで短かった」の間違いではない)
 
ルアンパバーンはとても小さな街で、4日もいれば地理にも詳しくなる。
そんな土地だからこそ、のんびりと過ごすことができたのだと思う。
 
印象に残ったのは、ニワトリの行動範囲の広さだ。時間も場所もわきまえず、目の前を鳴きながら「自由に」行き来する。まるで時空を超えて、ニワトリの世界に自分が放り込まれているようだ。
 
この光景を見て、ふと妻が呟いた。
「ラオスのニワトリって、日本のサラリーマンよりも自由なんじゃない?」
核心をついたその言葉に、私は「その通りだね」と認めざるを得なかった。
 
この時ほど、「ニワトリになりたい!」と思ったことはない。
 
明日にはここを去る私たちに、「俺たちを見ろよ。もっと楽しんだ方がいい。どうせ一度きりの人生なんだから!」と語りかけてくる親友のようだった。
 
有名な観光地なんかなくたっていい。そこに住む人々の息遣いや自然の匂い、気候をダイレクトに感じ取れるだけでも名所にふさわしい。
 
そんなラオスには、まっさらな状態で行くことをお薦めしたい。
親友とも言える彼ら(ニワトリたち)が待っていてくれるのだから、何も心配することはない。
行けば、開口一番、こう出迎えてくれるだろう
 
「もっと楽しんだ方がいい。どうせ一度きりの人生なんだから!」と。
 
 
 
 
***
 
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2021-02-14 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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