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穴だらけの君に、魅せられて


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:大村沙織(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
しゃきっとした歯ごたえ。
肉厚な身の中に潜む、ほくほくの食感。
後からやってくる、素材本来の自然な甘み。
ああ、先週も食べたばかりだけど、またあれが食べたいっ!
私の体は、今れんこんを求めている―。
 
小学館の「デジタル大辞泉」によると「(1)蓮の地下茎。食用とする。はい。はす。はすね」とある。
2つ目の意味として、「警察や暴力団の隠語で『拳銃』を意味する」らしい。
「回転式拳銃の弾倉の形が似ていることからいう」ようだ。
お断りしておくが、私が求めているのは1つ目の意味の「れんこん」であって、2つ目の意味の「れんこん」ではない。
2つ目の意味の「れんこん」を求める人だと、ただの危ない人になってしまう。
ここでは食材としての「れんこん」について語らせていただくことを強調しておきたい。
 
一般的な家庭では、お正月の煮物の具材としてお馴染みではないだろうか。
日本でれんこんは穴が開いていることから、「先を見通す」ことに通じて縁起物として扱われてきた。
思い返してみると今年のおせちの中にも、確かにれんこんは入っていた。
ただ、少し考えてみていただきたい。
それ以外に「これはれんこんである」と明確に意識して食べる機会があったかというと、正直疑問ではないだろうか?
お弁当用に買った冷凍食品に入っていたれんこんのきんぴら、蕎麦屋で頼んだ野菜天セットのれんこんの天ぷら、出張で買った駅弁のおかずのれんこんの煮物、思い返してみるとれんこんを食する機会は意外とあるように思う。
しかしながら、れんこんは脇役。
特別な意識を向けることなく、あったらただ食べるだけのものだった。
スーパーで見かけても手には取らない。
土がついた状態で売られているから、調理するまでの手間がかかりそう!
でかくて重そうだし、持って帰るのが面倒そう!
同じ土がついた状態で売られているならば、じゃがいもの方が使い回しがききそう!
自炊を始めたばかりの5年前の私がれんこんに抱いていたイメージは「とにかく面倒そうな食材」だった。
それが今やれんこんをメインやおかず用の食材として日常的に使い、れんこんを積極的に求めるまでになってしまった。
れんこんが土がついた状態で売られるのは、流通中の光や空気かられんこんを守り、鮮度を保つためだということも後で知り、その涙ぐましい努力に感銘を受けたのを覚えている。
 
ここまで私がれんこんにはまった大きな理由は、勤務地が変わったことだ。
昨年の夏、コロナ禍の中で都内からの異動辞令が出た。
時期的にコロナ感染者の数は減っていたが、毎週末異動先で物件を探したり、引っ越し業者を確保することは楽なことではなかった。
そして新たな異動先での生活にも慣れ始めた秋頃、スーパーでこんもりと積まれるれんこんの山に、私は目を見張った。
 
「茨城県はれんこんの出荷量、作付面積共に日本一です」
 
遠い昔に、おそらく地理の授業で習ったであろう記憶が、まざまざと脳裏に浮かんだ。
特に私が住む茨城県南部はれんこん生産が盛んな自治体が多く、「れんこん長者」という単語もあるくらいだということを、後に職場の人の話で初めて知った。
週末の食材買い出しの度に目にするれんこんの山。
それを見続ける内に、気持ちの変化が訪れた。
 
「せっかくの日本一の県の生産品なんだもの。もしかしたら相当おいしいのでは?」
 
しかも秋はれんこんの旬だった。
旬の野菜は栄養価も高く、価格もお手頃なことが多い。
実際に100グラム当たりの価格が68円と、ちょっと試すにはちょうど良い価格設定になっていた。
まずは簡単なものからでも作ろうと、小ぶりなものを買ってまずは1品レシピを試してみることにした。
持ち運びの大変さというハードルは、徒歩5分圏内にあるスーパーでれんこんを買うことでクリアした。
 
そうして作ったれんこんとしらすの甘辛炒めのおいしさに、またまた私は目を見張った。
皮をむいて切った後、酢水に10分ほどさらしてあく抜きをして水気を切るという手間は確かにあった。
しかしれんこんのしゃきしゃきな歯ごたえへの驚きの方が、その手間をぐんと上回った。
砂糖としょうゆで甘辛く味付けしたれんこんに、しらすのほんのりとした塩気がマッチして、素朴な、いかにも家庭的な味わいが口の中に広がる。
茶色いおかずだし、お弁当に入れるには地味かもしれない。
だけど作り置きメニューとして日持ちするし、何よりもおいしい!
茨城県のれんこんだからこんなにおいしいのか、今でもそれは分からないが、食いしん坊な私の胃袋を黙らせるには十分な威力だった。
 
以来、2週間に1回はれんこんを買って、新しいレシピに挑戦した。
作れば作るほど、れんこんの懐の深さに感服した。
ど定番のきんぴらといった和食にはもちろん、オイスターソース炒めなどの中華料理、ラタトゥイユなどの洋風料理、何にでも合うマルチプレイヤーぶりをこれでもかと見せつけられた。
最近気に入っているのは薄切りしたれんこんを少なめの油で揚げて、塩をまぶしたれんこんチップス。
ポテトチップスが食べたくなったときに代わりに食べるようにしているが、罪悪感が少なくて済むところが良い!
塩の代わりにカレー粉をまぶして、味の変化球を楽しめるのもナイス。
れんこんは切り方によっても様々な食感を楽しめるのも魅力の1つだ。
シャキシャキの歯ごたえを楽しみたいときはサラダやきんぴらに、ほくほく感を味わいたいときは乱切りにして他の根菜類と一緒に煮物にする。
いずれのレシピでもあく抜きは欠かせないが、その手間を全く惜しまないほどに、仕上がるおかずの数々は私を満足させてくれた。
 
れんこんは私にとっての「たまごっち」だと思う。
たまごっちを知らない方のために説明すると、たまごっちは1990年代後半に流行したキーチェーン型のキャラクター育成ゲームで、育て方によって最終的な形態が変わるというものだ。
餌をあまりあげないと蛇や草に似たかわいくないキャラに成長してしまい、かわいいキャラに何とか成長させようと、小さい頃の私も奮闘していたものだ。
れんこんもかいがいしくお世話(調理)すると、立派(な料理)になって私を喜ばせてくれる点は、たまごっちと通じるものを感じる。
しかし、たまごっちは手間をかけても最後に目論見が外れて、想定外のキャラクターになる場合があった。
一方でれんこんは、手間をかければまず間違いなくおいしくなってくれる。
そんなところも、私がれんこんに夢中になった理由の1つかもしれない。
 
今日もスーパー帰りの私のエコバッグの中にはれんこんがいる。
れんこんの旬は3月までらしく、春が本格的に来ると手に入りにくくなるかもしれない。
そう思うとれんこんに愛おしささえわいてくる。
旬が終わるまで、とにかくおいしくいただくことにしようと改めて決意する。
今日は何にしようかな―。
 
 
 
 
***
 
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2021-02-19 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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