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メディアグランプリ

思いやりは湯たんぽ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:亀村佳都 (ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「どうしたらよかったんだろう?」
 
ある雨の日の夕方、バス停でバスを待っていた。
バス停には、車椅子の男性もいた。
ようやく、1台のバスがやってきたものの、満員。
車椅子も、私たち他の乗客も乗れるスペースはなかった。
バスは、そのまま走り去ってしまった。
やがて、車椅子の男性は諦めたのか、傘をさせずに濡れたままバス停を離れた。
 
「車椅子の方がいます」と運転手に伝えられていたら……?
「詰めてください」とバスの乗客に言えたら……?
「定期券の人、降りて次のバスで行きましょう!」と提案をしてみたら……?
せめて、「乗せてくれてもいいのにね」と男性に声をかけられたら、お互いに少しは気が紛れたかもしれないのに。
私は、何もしなかった。
 
「思いやりある行動がとっさにできればいいのに」という場面にでくわすと、私が2年間暮らしたニカラグアの人々のことをよく思い出す。彼らは、思いやりの達人だった。自分よりも弱い立場の人を見ると、心と身体が動いていた。
 
私はJICA海外協力隊に参加した。略して「協力隊」と呼ばれるその制度は、20歳〜69歳の日本人が、開発途上国の暮らしがより良くなるように、その国の人々と一緒に、活動する政府の事業だ。
 
私が派遣されたのは、中米のニカラグア。北海道と九州を合わせた広さの土地に約650万人が暮らす、スペインの元植民地だ。アメリカ大陸で、ハイチに次いで経済的に貧しい国とされていた。
 
ある日、私は道端で転んで捻挫した。歩けず、タクシーを拾って家に帰ると、大家さんがすぐさま「医者に診てもらおう」と、車で連れて行ってくれた。
翌日から、私は松葉杖を使うことになった。大家さんが知り合いから借りてきてくれて、「ニカラグアにも松葉杖はあるんだなあ。松葉杖を探してくれてありがとう」と感謝した。とはいえ、使い慣れない上に、ガタガタした未舗装の道路を歩いて、転んでも困る。私は活動を休み、しばらく家でおとなしくしていた。
数日後、銀行に行く用事ができたため、仕方なく、松葉杖を使って出かけた。
銀行はいつも混んでいて、その日も30人ぐらいの人たちが列をなしていた。
列の一番後ろに加わると、私の前にいた人がチラッと私を見た。
「どうぞ」と順番を譲ってくれた。
「ありがとう」とお礼を言って、私は前に進んだ。
すると、列に並ぶ人たちが、サッと1歩動いて道を作った。松葉杖をついている私のために。モーゼが海を割って道を作った時のようだった。
スーパーでも、薬局でも、みんな順番を譲ってくれた。松葉杖をついている間、私はどこでも優先された。
その後、デング熱にかかって1ヶ月ベッドで寝ていた時も、近所の人たちが、私が唯一食べられたヨーグルトを持ってお見舞いに来てくれた。
 
ニカラグアの人たちは、見知らぬもの同士でも、誰かが重いものを運んでいたら、手伝う。満員のバスでは、座っている人が、他人の荷物や子どもを膝に乗せる。物乞いの人がいたら、食べ物やコインを渡す。
 
私は、ニカラグアの人のために活動していたつもりだが、ひょっとすると、彼らにとってみれば「言葉も上手に話さない外国人の若者が、何かしたくて困っていそうだったから手伝ってあげた」という感覚だったのかもしれない。
 
学校で道徳の授業がなくても、チラシやポスターで「思いやりを大切に」など掲示されていなくても、彼らは人として大切なことを知っていた。経済的に貧しいとみなされていても、助け合って生きる暮らしがニカラグアにはあった。
 
日本では、電車やバスには「優先座席」と記されている。目の見えない人のために、音の鳴る信号機があり、黄色い点字ブロックが歩道や駅のホームに敷かれている。
でも、思いやりは、書かれたところだけで発揮すれば十分だということはない。ましてや、設備を整えたら済む話でもない。
 
思いやりは湯たんぽだ。湯たんぽは温かい。その温かさが、それを受け止めた人に伝わる。身体を温め、心の緊張もほぐれてくる。思いやりも温かく、人の心をほぐしてくれる。
湯たんぽは、棚にしまっていては伝わらない。
思いやりも、心にしまっていては伝わらない。
湯たんぽは、湯を加えないと温められない。
思いやりも、行動を加えないと温められない。
 
困っている人に手を差し伸べよう。
見知らぬ人と、譲り合おう。
家族や友人にも、相手のことを思う気持ちを、言葉や態度で伝えよう。
思いやり、どんどん実践しよう。
温かい気持ちはきっと相手に届くはずだから。
 
 
 
 
***
 
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2021-03-05 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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