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年上の後輩に学ぶ社内処世術


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:石田友希(ライティング・ゼミ特講)
 
 
「田代さんが、なかなか注意を聞き入れてくれない。物腰は柔らかいけれど、頑として譲らないところがある」商品チェック部門の岩井田さんから耳の痛い知らせが入ったのは、つい1か月ほど前のことである。
 
件の田代さんとは、今から半年ほど前に入社した40代前半の中途社員のことだ。
前職では営業所の運営に始まり、現場スタッフの指導にあたるなど、組織を先導する側にいた方である。日ごろからスタッフの方の相談にのることも多かったそうで、相手の悩みに対して真摯に向き合い、必要に応じて解決策を提示するなど、言葉を尽くしていたようだ。それゆえ自身の思いを言語化する能力に長け、こちらが1聞いたら10の答えを返してくれるというコミュニケーション力の持ち主だった。
 
とはいえ今の会社では、全くの新人である。前職とは業界も職種も異なるため、こちらも慎重にならざるを得ず「またイチからキャリアを築いていくことになるが、大丈夫ですか?」「うちの会社は、田代さんより年下の社員が多いです。若い子達から、こまごまと注意される場面もあるでしょうが、受け入れることはできますか?」と選考時に何度も確認したほどだ。当然、面接では「その覚悟はできています。新人としてゼロからスタートするつもりです」と語っていた彼だったが、なかなかどうして、実際に仕事を始めてみると、隠れていた本音や、本人も無自覚だった本性が少しずつ表に出てきたようだった。
 
「環境が人をつくる」というように、役職という肩書を背負えば、仕事への覚悟や責任感が増し、風格が出てくるものだ。その風格が「頼りがいがある」「仕事に誇りをもっている」という形で認識されていればいいのだが、一歩間違うと圧倒感になってしまう。いわゆる「圧が強い」というイメージを持たれてしまうと、周囲との距離感は広がるばかりだ。
 
さらに今の会社の場合、正しい答えに向かってアプローチするというよりも、取引先の意向を汲んで正解を導き出す仕事ゆえ、担当者のセンスが問われることになる。商品をチェックする側も「ここをこうして」という明確な軌道修正をするより「ここは段取り上、違和感が出てしまうから、別の方法を考えてみて欲しい」とニュアンス的な指示を出すことが多くなる。
 
それゆえ担当者としては、納得がいかない状態で代案を探す状況が発生してしまうのだ。もちろん経験を積めば「こういうことか」とすぐに勘付くことができるものの、経験が浅いと「これで精いっぱいなのに他の考えなど浮かばない、どうしてダメなのか」という思考に陥ってしまうという具合だ。とはいえ、ほとんどの新人スタッフの場合、それを胸の内におさめて速やかに修正対応するのだが、田代さんの場合、簡単には納得してくれないらしい。
 
これまで組織を先導してきたという自負が、他人からの指示をはねつけてしまうのか、はたまた長らく遠ざかっていた「指導される側」という環境に慣れようと、彼なりにもがいているのか……。キャリア採用の難しさを感じる中、私達の悩みをスルリと飛び越えてきたのが、隣の部署の上妻さんである。入社したのは、確か2年か3年前だっただろうか。
 
50代半ばのいぶし銀は、とにかく腰が低いのだ。しかもあくまで自然体で、イチ新人として振舞っているというスタンスなのだ。10も20も年下の私達にも必ず敬語で話し、尊大な態度など微塵も見せない。忙しい部署があると聞けば、フットワーク軽く助っ人に入り、こちらが仕事を依頼した時には、アプローチを変えて複数のアイデアを提示してくれるという完璧さだ。おそらく不測の事態に見舞われることもあるはずなのに、心はフラットで、表情はいつも穏やかだ。そこにいるだけで空気が和むので、用もないのに話しかけてしまうほどだ。
 
一見すると、その仕事ぶりは「普通」と捉えられるのかもしれない。けれど誰を前にしても分け隔てなく接する、いかなる状況にあっても一定のペースを維持するというのは、できそうでできないことだ。社会人歴が上がっていくということは、当たり前の精度を上げていくことである。そして相手に臆せず話してもらえる「ゆとり」を作ることもまた、求められる資質なのだろう。上妻さんと共に働くメンバーは、上妻さんより年下の先輩ばかりだが、ちゃんと敬意をもって接しているのが伝わってくる。その相乗効果で部署全体の空気も活性化し、慌ただしくとも笑顔で仕事に打ち込む姿がある。
 
さて冒頭で触れた素直になれない田代さんも、今は模索の真っただ中だが、もともとは向上心の強い人である。現状の仕事を一通り習得したら、前職で培ったマネジメント力を発揮して今ある組織に新しい風を吹き込んでくれるはずだ。根本的な問題は業務スキルの向上なので、さっそく彼のコミュニケーション力をいかしたトレーニング法を実践しているところである。その効果か、お客様から喜びの声が立て続けに2件も届き、滑り出しは上々だ。
 
発展途上の組織において、経験豊かな先輩方は、かけがえのない財産である。意思疎通が一筋縄ではいかない場合もあるが、互いに敬意をもって向き合えば、信頼関係を築けるはずだ。意見を譲ったり譲られたり、説明の角度を変えたり、言い方をアレンジしたりと、しばらく模索は続きそうだが、田代さんが本来の力を発揮できた時、私達も成長を遂げていることだろう。
 
 
 
 
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2021-03-10 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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