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将来死ぬ予定があるすべての人に聞いてほしい話


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:赤羽かなえ(ライティング・ゼミ特講)
 
 
クオリティ・オブ・デス
 
2年半前にこの言葉に出会って、私の人生は大きく変わり始めた。死の質を考える、という意味だ。
 
クオリティ・オブ・ライフという言葉はよく聞くようになってきた。人生の質を高めて生きるかということが大切にされる時代になり素晴らしいと思う。
 
けれど、それとは全く逆の『クオリティ・オブ・デス』という言葉からみた人生の質は、さらに私の奥深い底に沈みこんでゆっくりと育っている。そして、時々、腹の奥底から私に問うてくるのだ。
 
「今、死の時を迎えても、満足だ、と私は言えるのか?」
 
と。
 
『クオリティ・オブ・デス』というのは、看護師を経て、現在は代替医療を研究したり看取り士として活動している講師による死生観のお話会のタイトルだ。私は、2年半前に、友人からの紹介で死生観のお話会を主催することになった。死生観というと宗教的なイメージがあり、難しく思っていたが、単純に当時の私は、死ぬ、ということに対して少なからず恐れを抱いており、なにかしらの答えを探していた。
 
生まれた以上死ぬということは必ずついて回るのに、死の場面に立ち会う機会は圧倒的に少ない。
 
初めて私が嗅いだ身近な人の死の香りは、高校生の頃。大好きな祖父が、ガンで入院してお見舞いに行った時だ。そうとは知らされていなかったが死の時が近かったのだろう、電車とバスを乗り継いでたどり着いた病室で待っていたのは、生気がほとんどなくなった弱々しい祖父の変わり果てた姿だった。
 
私は、お化けにでも出会ったかのように、恐怖から漏れ出そうになる悲鳴を、歯を食いしばって必死に飲み込んだ。叫んではいけないことだけはわかっていた。しかし、祖父の目を見つめることはできず、ロボットのようにぎこちない動きをする祖父の腕をただただ凝視していた。目を見たら一緒に自分も吸い込まれてもう戻れないような、そんな錯覚さえした。
 
挨拶もそこそこに、必死になって吐き出した言葉が、
 
「どうぞ、お元気で」
 
だった。なんの、効力も発揮しない、絶対にもう元気になることはないと分かった上で押しだされたような陳腐な言葉を祖父はどのように捉えたのだろうか。
 
病室を後にしたときに、廊下ですれ違った看護師さんが、
 
「あなたなのね、おじいちゃん、いつもあなたのことを自慢しているのよ、会えてよかったわ」
 
と優しく声をかけてくれた。その優しい刃は、私の心に深く刺さりこんだ。自慢の孫娘に、あんな態度を取られた祖父を気の毒に思い、出来の悪い自分を呪って泣いた。
 
そのシーンは20年近くたっても私のどこかに浮かんでは、死の怖さを私に流し込んできた。30代半ばを過ぎて子供を育てるようになって、ますます自分の生が一日一日確実に死に向かっていくことを折あるごとに思い出しては不安に駆られていたのだ。
 
そんな思いがあったから、友人から死生観のお話会の主催をしてみないか、と言われたときに一も二もなく飛びついた。とにかく私が聞いてみたかったし、知りたかったのだ。
 
死ぬまでの一日一日をどのように捉えて過ごしたらいいのか、その糸口をどうしてもつかみたかった。
 
『クオリティ・オブ・デス』は午前中2時間半、午後2時間ほどの長丁場だ。午前中の2時間半は、講師が勤務していた小児病棟で闘病生活を送り亡くなった子供達の話、子供達を残しながら夢半ばでこの世をさった友人の話、そして、ご自身の父親を遠方から通い続けて最期まで寄り添った話……看護、看取りなど様々な立場からの体験を聞いた。一生であんなに泣いたことはない、というほど、一人一人の命の終わりを聞きながら泣き続けた。今まで同じお話会を3回主催したが、同じ話、同じくだりで何度も泣いた。あの話を聞いて泣かないで最後までいられる人はいないと断言できる。
 
「バスタオル持ってくればよかったよ」とか「マスカラ塗ってきちゃダメだわ」とか、あとで笑い話になるくらい体中から涙が製造されては目からあふれ出していく。ただ、可哀そうで泣くのとは少し違い、一つ一つの命の輝きやつながりには愛が詰まっていて素晴らしくて涙が出るという感じだ。しかもそれは、有名な誰かの話ではなく、名もなき人々の人生の物語で、自分たちもまた美しく素晴らしいひとつの人生を生きているのだ、ということを思い出させてくれる。
 
午後からは、2つのワークを通じて自分が死ぬということに向かい合い、そして、死ぬ間際の自分からメッセージを受け取る。美味しいランチで取り戻した参加者の笑顔が再び涙におぼれていく。
 
死ぬ間際の自分からもらったメッセージを受け取ったときに思ったのだ。
 
いつどの瞬間に死んでもこう思って果てていく命でありたい、と。そのくらい、死ぬ時の私からのメッセージは幸福そのものだった。
 
『クオリティ・オブ・デス』以降、私の生き方は完全に変わった。よりよく生きるためにではなく、よりよく死ぬためにどのくらい残されているかわからない生を必死に生きたい、その想いは日を追うごとに熱を帯びていく。
 
もしあなたの街で『クオリティ・オブ・デス』という変わった名前のお話会のお知らせがあったら脊髄反射で申し込んでほしい。受講して損は絶対にないと声を大にして言いたい。
 
死ぬという経験をするすべての人の生き方が変わる、その瞬間に身を置いてほしいのだ。
 
 
 
 
***
 
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2021-03-15 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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