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いつまで経っても「ヘタウマ」ですが


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:青野まみこ(ライティング・ゼミ超通信コース)
 
 
30代で普通自動車免許を取った人って、あんまり周りにはいないんじゃないだろうか。
多くの皆様は18歳になるのを待ちかねてさっさと教習所に通って、さっさと免許を取るのだろうけど私はそれをしなかった。
 
何故なら実家に車がなかったからだ。家から一番近い駅の地下道の入口までは2分くらいで着いたし、移動は常に電車だったからわざわざ駐車場代を払って車を持つ理由がない。だから18歳になり、周りが一斉に色めき立って教習所に通っても何とも思わなかった。
 
独身の時はそれでもよかったけど、結婚して都落ちのように中途半端な郊外に暮らすことになった時に初めて「車の免許取っておいてもよかったかな」と思った。しかしその時は妊娠・出産で教習所に通うには適さなかったから、致し方なく免許なしだった。
 
夫は免許があるので必要な時は乗せてもらった。子どもが小さい時こそたぶん車が必要なんだけど、私はなんとなく免許なしでその時代を乗り切ってしまった。そんな私がなぜ免許を取ろうと思ったのか。それは、夫が運転中に体調を崩して車の運転を止めると言い出したからだ。体調が悪い時はまあ仕方ないかと思っていたけど、身体が持ち直しても夫は一向に運転を再開する気配がなかった。
 
「あのさ、運転しないの?」
「しない」
「なんで?」
「だって、わかるだろ? 運転中に気分悪くなったんだよ? もう車はいい」
「それ困るんだけど」
「困るって言われてもなあ。しないものは、しないから」
 
就職してからずっと車通勤だった夫が、本当にあっさりと運転を止めてしまったのだった。
1度言い出したら絶対に曲げない夫のことだ。さて、困ったな。
いつも乗せてもらっていたから、いきなり車に乗らない生活になった途端に困ってしまう。今住んでいるところは駅から20分以上歩くし、バス便も少なかったから、買い物や雨の日の移動には車がないと結構大変だ。子どもの学習塾の送り迎えもしたいし。私は一大決心をした。
 
(いよいよ、車の免許を取る時が来たかも)
 
そう決断するとあとは早かった。近くにあった自動車学校に申し込みに行き、高校出たての子たちに混じって、教習所通いが始まった。
S字クランク、坂道発進、縦列駐車など、若者は軽々と仕上げていく項目を、私は不器用を盛大に発揮しながらもどうにか乗り越えた。しかし最大の不安材料は車庫入れだった。「左後ろのタイヤが隣のクルマの右前端を通過したらハンドルを左に切りましょう」とか言われても、頭の中でものすごい混乱するじゃん!
 
左? 右? どっち?
まるで化粧を覚えたての子が引くアイラインみたいに、くねくね曲がりながらいつも車庫入れをしていた。一回でなかなか駐車できないよー。それでも教習所の車庫入れ用の車庫はものすごく広いからどうにか教官の目をごまかすことができ、私は運転免許を手にした。
 
だが実際に公道を走るようになってからが苦難の連続だったかもしれない。
家周辺の道路が狭く、車がやっとすれ違うくらいの幅しかなかった。家の近所でよく私は車を擦っては落ち込んでいた。そして最難関が自宅の車庫だった。
車庫の幅が狭く、車を入れると残りの幅は80cmくらいしかないので車から降りるときにドアを半開きにしないといけない。左右どちらかに思いっきり寄せないと人の乗り降りができないから、寄せて駐車することと、車庫入れのテクニックの両方が必要だ。
 
狭い自宅前の車庫に入れられず、立往生して車を5台くらい通行止めにしてトラックの運ちゃんに怒鳴られたり、隣家のブロック塀を思いっきり倒して全部弁償したこともあった。もう本当にどうしようもないくらい下手だけど、それでも回を重ねるごとにどうにか右10cmのところまで寄せて、自宅の車庫入れができるようになった。これができないと車ではどこにも行けないから、必死にやった。
 
そんな若葉マークの時から早くも15年以上経った。
今でも車庫入れは上手くはないが、幅が狭い場所への駐車はいつの間にか困らなくなっていた。「ここはこの幅だからここで切り替えそう」と自然に思えるようになっていたのだ。
 
そしてその経験が生きるときがやってきた。
取材のために農家に行くことが頻繁になってきた。多くの農家は最寄駅から遠く離れていて、しかも農道だから道も悪く狭い。
「車は、ここに停めてくださいね」
と案内される場所は大抵狭く、もしちゃんと停められなかったら脱輪してドブに落っこちるようなところだ。
「うわぁ、ここに停めるの?」
げんなりしながらも慎重に車庫入れをする。サイドミラーを下向きにして、何回切り返すかわからないくらい切り返してようやく所定の場所に停める。
 
「車庫入れ、ぴったりじゃないですか!」
カメラマンさんがほめてくださった。
「あら、ほんとだ。無理かと思ったけど停められましたね」
「おめでとうございます」
「農家さんに行くとこんな感じの車庫しかないですもんね」
「今度、激ムズ車庫入れ企画とかやってほしいなあ。だってめちゃくちゃ面白いんだもん」
 
もう! 冗談じゃないって!
でもそれってたぶんほめ言葉に違いないと確信していいよね。一見して「もう停めるの無理かもしれない」ものすごい場所に、慎重だけど一応正確に停められるようになったんだから。下手なんだか上手くなったんだかよくわからないけど、車庫入れに関してはたぶんヘタウマを繰り返しながらも上手くなっていると信じたい。そして私の目の前に、この先、最強に激ムズな車庫が現れるんじゃないかという予感はしていて、その時にめちゃシンプルに車庫入れしてやろうかな? などと思ってみたりもするのだ。
 
 
 
 
***
 
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2021-04-24 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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