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メディアグランプリ

取材が一種の暴力であることを、決して忘れてはならない


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:雁屋優(ライティング・ゼミ集中コース)
 
 
いつでも、人の前に立つのは怖いと思って生きている。なかでも、取材は怖い。するのもされるのも、全部怖い。私は、取材したことも、されたこともある。その上で言おう。
 
取材は、一種の暴力だ。
 
こう書くと、取材で何か大きな失敗をしたり、ひどい解釈をされたりしたのだろうかと心配されるだろう。今のところ、幸いにもそれはない。
 
私はライターであるが、同時に難病当事者としての発信もしている。だから、取材をすることもあるし、されることもある。難病当事者として研究協力し、自身の考えや経験を語ったことは数回あるし、大学時代には大学の広報誌に取材された。そして、ライターとしての仕事のメインではないが、取材記事も執筆している。
 
その上で、いつも思う。取材は、いつだって暴力だ。
 
取材記事の執筆の手順を見てみると、その暴力性がわかるだろう。約束をして、取材をした後の方法を書いていく。
 
私の場合、取材時は基本的にメモではなく、録音をするので、その音源を再生しながら、音声を文章に変換していく。文字起こし、書き起こしなどと呼ばれる工程だ。最近では便利なツールも登場しているが、書き起こしを完全に機械任せにはできないのが現状である。そして、この書き起こしをしながら、私は、この部分は絶対入れたい、ここは削ってもいい、こことここの順番を変えようなどと記事の作り方を考えていく。
 
そうして出来上がった書き起こしを眺めながら、重要な部分に線を引いたり、解説を書き加えたりして、文章の骨組みとなる構成と呼ばれるものを考え、実際に作っていく。本文が出来上がり、編集の方に提出する記事になる。
 
この取材記事執筆の過程にこそ、取材の暴力性がある。取材をしたときに取材相手が語ってくれたことは、書き起こされ、構成されて、記事になる。つまり、出来上がる記事は取材相手が語った生の言葉と完全に同じものではない。
 
取材記事の執筆は料理に似ているといわれることがあるが、その通りだ。例えば、にんじんとじゃがいもと牛肉があったとしよう。ここからあなたは何を作るだろうか。肉じゃがを作ってもよいし、カレーを作ってもよい。そして、肉じゃがとカレーは材料が被っていても、別の料理である。これは、取材記事にも同じことがいえる。同じ人を取材しても、書き手が違えば、全く違う記事になる。
 
にんじんとじゃがいもと牛肉を、肉じゃがにするか、カレーにするかを決めるのは当然ながら料理をする人間、書き手である。材料であるにんじん達に、「私はカレーになりたいです」などと言う機会はほぼ与えられない。もちろん、取材記事の場合、記事が世に出る前に取材を受けた人のチェックは入る。だが、大幅な変更は難しいことが多い。
 
取材記事は取材相手が語った生の言葉に、書き手が解釈を加え、意図をもって切り取り、順番を変えたものであることに間違いはない。取材相手を傷つける意図がなくても、書き手のその行為は、暴力と呼んで差し支えないものだ。
 
取材相手が大事にしてきた経験や考え、情報を加工し、書き手の解釈を交えて、発表する。それは、どう取り繕っても、相手のありようをありのままではなく、よくも悪くも歪めて伝えているのだから、暴力といえる。
 
書き手に悪意があろうとなかろうと、取材すること、特に他人から何かを聞き出すことには加害性がある。その人が大切にしてきたものを無自覚に手ひどく扱ってしまうリスクが、そこにはある。それは取材中かもしれないし、記事にしたときかもしれない。最悪の場合、取材相手を傷つけるし、傷つけまではしなくても、「何か、私の伝えたかったことと違うな」と思わせてしまうかもしれない。それでは、その取材記事は失敗だ。
 
取材をするなと言っているのではない。私も、これからも取材を受けるし、取材をするつもりだ。取材を受けるときは、できるだけ正確に意図が伝わるように言葉を選ぶし、記事の発表前にチェックするときも、入念にチェックする。それが私の発言として、世に出ても私は後悔しないか、私の思いと食い違っていないか、何度も自分に問う。取材をするときには、取材相手がどういった目的で私の取材を受けてくれているのか、この取材記事を通して社会や読者に何を伝えたいのかを考え続ける。
 
それでも、取材記事は、「ありのまま」の言葉ではない。取材相手の表情や語り口、書き手に記事に使わないと判断された発言など、削ぎ落とされている情報がたくさんある。書き手が私でなければ、削ぎ落とさなかったかもしれない情報もあるだろう。取材記事を読むときも、書くときも、忘れてはいけない。「ありのまま」を書いている取材記事など、ないのだ。
 
書き手の解釈が加わり、書き手の目的のために、取材を受けた人の生の言葉は加工される。だから、私は、「ありのままを伝えている」と言い切る人もメディアも信用しない。「ありのままを伝える努力をしている」人やメディアは尊敬する。ここには、大きな違いがある。
 
昔も今も、取材を受けるのもするのも怖い。相手に暴力を振るうのも振るわれるのも、怖いからだ。私は、決して取材の暴力性を忘れない。それを忘れたとき、私は書き手として死ぬのだろうから。
 
 
 
 
***

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2021-05-03 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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