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全てを失って全て手に入れた話


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:でしょうか(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
絶望で目の前が真っ暗になると良くいうが、それは事実だと思った。
 
マイク
ダニエル
デービット
……
 
部屋にいる全員が返事をしたが、私の名前は最後まで呼ばれなかった。人生30年、自分の名前を呼ばれても気が付かないなんて事はない。とにかく名前が呼ばれない。
 
病院の待合室とかなら、なんて事はないが、ここは日本から離れる事、9000キロ。飛行機で15時間の場所。アメリカのコロラド州のとある大学。そして、私が今いる場所はその大学の「入学式会場」だ。
 
入学式で名前を呼ばれないなんてマンガかと思った。とにかく結論から言えば、入学出来てないという事だけは分かった訳だ。
 
絶望感に加えて腹が痛い。私の腹は手術でまだ半分塞がっていない。渡米2週間前に盲腸となり緊急入院。無事退院したがオペが下手すぎて中が膿み、40度以上の高熱にうなされて再度救急車で病院送り。
 
診察してくれた先生は嬉しそうにこう言った。
 
「これ膿んでるね。また開腹しよっか」
 
その笑顔が忘れられない。
 
今考えるとこの2年どん底だった。
 
何を思ったか英語が喋れる様になりたい。そう思ったら即行動。昔付き合ってた彼女の前彼がMBA(経営学修士)を持っていて、そのコンプレックスから俺もMBAホルダーになるぞと息巻いて仕事をやめたのが、無謀と挑戦をはき違えた28歳。
 
無職、無学の状態でなんとか英語を1年以上かけて攻略し、たった一校だけアメリカの大学院の合格をかちえた。俺も出来る男だと喜びも束の間、恋人に出発2週間前に愛想をつかされ振られる。そして振られたその日に盲腸で入院。
 
仕事、お金、恋人、盲腸全てを失って唯一の希望としてきた大学院入学をも今、失う。
 
全てを失った。
 
と思った瞬間に、運命が変わる出来事が起こる。
 
「どうしたの?」
 
と誰かが聞いてくれる。ハッとして顔を上げた。多分、私は世界中で一番不幸みたいな顔をして入学式会場に立っていたのだと思う。
そこにはボーイッシュな顔立ちが印象的なアメリカ人女性がいた。留学生の問題をサポートする専任カウンセラーだった。彼女には入学式の前日に挨拶をして顔見知っていたのだ。
 
絶望と腹の痛さで力が出ないが、私は彼女になけなしの力を振り絞ってこう答えた。
 
「ノーネーム」
 
まあ、この時は絶望感からだけでなく、語学力がないから、これしか言えなかったのかもしれない。
 
カウンセラーはうなずき、ここで待っていてと言って、しばらくどこかに行き戻ってきた。
 
彼女曰く、私は条件付き入学という事で、入学前に指定の語学学校の卒業が必要だったそうだ。そんな事も知らなかった私。第一、今更語学学校に行くお金がない。MBA留学は授業料も高く、親に全てを借金して私はぎりぎり2年分のお金しか用意していないからだ。
 
結局は入学出来ないのか?
 
そう思った時、奇跡が起こる。
 
なんとカウンセラーが、入学者リストに鉛筆で私の名前を記入し、いたずらっぽい顔をしながら入学おめでとうと言ってくれたのだ。語学学校は夏休みに行けばいいと。
 
かくして私は、鉛筆で名前を記入してもらうというミラクルで入学できることになった。このカウンセラーには今でも感謝以外の言葉がみつからない。
アメリカはすごい。なんていい加減。あ、良い加減なんだ。
 
そして、もう一つ気が付いた事。日本だろうとアメリカだろうと、どこの世界でも人との縁が大事で、人間誰かに助けられて生きていくんだという事。
 
そこから私は努力する内容を変えた。
 
英語、MBAの勉強ももちろんだが、毎日の友達作り、縁作りに最大限の努力をした。
遠回りかもしれないが、私がこの見知らぬ土地で生きていくには、少しでも仲良くなって知り合いを増やすしかない。なぜなら一人ではスターバックスでコーヒーの注文も出来ないくらいのポンコツだったからだ。
 
カウンセラーのお陰で授業には参加出来る様になったが、まず授業が聞き取れない。ノートも取れないし宿題が出ても分からない。MBAでは膨大な宿題がでる。
よってクラスが終わる度に、仲の良い留学生に今日の宿題が何かと質問をする。全てのクラスで仲の良い友人を作った。だんだん相手もわかってきて、途中からは聞かなくても宿題の範囲とノートをもらえる様になった。
 
また、お金がなく車もないので買い物にも行けない。日々の食事にも事欠く、ひどい生活だった。
見かねた日本人留学生の友人が家に招いてくれるようになり、毎日、日本人留学生のおうちでご飯を食べさせてもらう様になった。もちろん、ただでご馳走になる訳にはいかないので、自分が出来る事はなんでもした。
 
といっても出来る事は限られていた。自分が唯一持っていたもの、人に提供できた事は正直、笑顔だけだったと思う。どん底だったが、毎日誰と会っても笑顔。自分と一緒にいれば、なんだか幸せな気分になってもらえる様に、相手が何人だろうと誰だろうと寄り添うように心がけた。
 
そんな事を繰り返すうちに、大学の中で私の事を知らない人が居ないレベルまでにアメリカ人、留学生、教授問わず友人作りが出来た。また、友人が増えると不思議なもので、会話せざる得ない為、英語力も向上し日常会話は出来るようになった。そして、自力で勉強も生活もできる様になっていった。
 
そして、留学生のパーティーで今の妻と運命的な出会いをした。
就職に関しても、卒業後の就職先も決まらない自分を見かねて、友人のアメリカ人が就職先を斡旋してくれた。嘘みたいな話だが世界的なIT企業に就職が決まった。
MBAも2年で無事、卒業する事ができた。結果このIT企業に14年間勤め、親に借りた留学費用は全て返済した。そして、今は留学時代に毎日の様にご飯を食べさせてもらっていた友人の会社で、当時返せなかった恩返しの分働いている。
 
人に頼って生きて行くなんてダメだと思っていた。留学時代の私は本当に情けないやつだったと思う。でも人の世は、お互いに助け合うしか成り立たないのは世界共通と学んだ。その時は返せなくとも助けてもらった分、時間をかけてしっかりと返せればよいのだ。
 
仕事、お金、恋人、盲腸と全てを失ったけれども、人に助けてもらって生きていたら、結局、仕事、お金、妻、そして親友と呼べる友人を世界中に得る事ができた。
唯一、失って戻ってきていないのは盲腸だけだ。
 
 
 
 
***

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2021-05-29 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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