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一瞬だけだったけどあれは恋だったのか? と今になって気が付いた話


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記事:ミュウさま(ライティング・ゼミ)

「ねぇ、それ、ボクがやりますよ」
自分よりも一回りほど下であろう見知らぬその男性は私にそう言った。

私はある野外フェスで出展をする友人の店の手伝いに来ていた。野外フェスでの手伝いは店舗の設営から商品の搬入など力仕事が多い。日頃デスクワークでパソコンに向かって仕事をしていると野外で身体を動かせるのはリフレッシュになる。日常とは違う雰囲気を楽しむ最高の環境だったし、なんと言っても私は力仕事が好きなのだ。

「大丈夫。私、出来るから」
即答した。

私にとって、自分でやるのは当たり前だった。
多少重かろうが当然のようにその荷物を運ぼうとした。

同じくイベントを手伝いに来ていたらしい年下のその彼が言う。
「ダメですよ。こういう仕事、女の人が自分でやっちゃ」

「え? だって、これくらい私自分でできるから大丈夫だし」

「そういう問題じゃないんですよね」
不満げな顔をしていたであろう私に彼はこう言ったのだ。

「ちょっとした事でも力仕事って間違いなく男の見せ場なんです。女性の役に立てる絶好のチャンスなんだから。男ってこういう時にちょっとでもいいトコ見せたいものなんですよ。女の人が自分でしてしまったらそのチャンスが無くなっちゃうでしょ? だからね、例えできたとしても、出来るとか言っちゃダメなんです」

ん? と、ひっかかる言葉もあったのに何故かスルリと心に届いた。

……ふうん。そういうものなの?
男の人ってそんなふうに思ってるの?

今まで私はできるだけ自分でしてきたし、力仕事を男の人にお願いするなんて発想があまり無かったのだ。新鮮だった。
そんな事情を話すと彼はこう言ってきた。

「そうだったんだ。じゃ、まず練習だね」

私は困ってしまった。お願いするなんて、できない。
たった一言なのに、考えるだけで心が抵抗していた。
私の困惑顔を見て彼がちょっと愉快そうに笑って追い討ちをかける。

「練習練習。はい、ボクに言ってみて」

え? 今ここで言うの? あなたに? と彼に目で訴える。
何も難しい事を要求されている訳ではないのだが、とにかくそれぐらい私には心の抵抗があったのだ。しかし、不思議と一方では素直にそれを聞いてしまいたい気持ちが心の奥底からムクムクと湧き出してきており、そんな気持ちにも戸惑いながらこの両者は葛藤しているのであった。

言いたくない。でも、言ってみたい。

彼は葛藤している私の心の中が見えているのではないだろうかというくらい、なんだか嬉しそうにその一言が私の口から出るのを待っていた。

「わかったわかった。れ、練習してみるから」

私はわざわざ「これは練習なんだからね、言われたからやるんだからね」と自分に何度も言い訳をしてからようやく

「これ、運んで欲しいんだけど、お願いできるかな?」

と彼の目を見ながら口にした。
一瞬、間があったような気がする。私には長い間が。
この期に及んで、今のでいいの? これで良かったの? と不安になった。

次の瞬間、
ニカッと満面の笑みで白い歯を見せて笑ったかと思うと
「はーい、了解!」
と、彼はちょっと重めの荷物をいとも簡単に肩に担いて爽やかに去って行ってしまったのである。

まるでティーン向けの恋愛少女マンガに出てくる1コマのような出来事だった。
このあと、この年下の彼と恋愛が始まりでもしたら、それこそ、少女マンガだ。
残念ながら、この彼とはお互いに名前も知らず、たった一度ここで言葉を交わしただけでその後にはなんの接点も展開も無かったのであるが、この時の経験は私に新しい価値観を運んできてくれた。できる限り自分でやらなくちゃ! からちょっと力を抜いていいのだという事を知ったのである。

今までは力仕事が思うように出来ない事が悔しかった。
重い荷物を軽々と持ち上げる男を見て私は悔しかったのである。
あぁ~! 筋力が欲しい!
密かに筋トレをしていたくらい本気で悔しかったのである。

あの後、私は度々この時の彼の言った事を思い出す出来事に遭遇する。

「ねぇ、もしかして、何か手伝いたいなとか思ってくれてるの?」
「うんっ! 手伝いたい!」
ブンブンと首を縦に振って物凄く嬉しそうな顔をしてそう言って、
嬉々として作業を始めてくれる男性が現れたりしたのだ。

こんな事があった日にはあの日の出来事を友達と話をする。

「なんか、子どもと一緒じゃん、それって。
やらせてやらせて。役に立ちたいよ! ってさ」
ちょっと苦笑しながら男のお子サマ度合いを指摘した子。

「え? でもそれ、男には男の仕事、女には女の仕事ってさ、
ちょっと時代錯誤でヤな感じじゃない?」
って言った子。

反応は様々である。

ま、私も思っていたのだ。
私でも軽々できちゃいますけど、それくらい。って事を
なんでワザワザ男にお願いしてやってもらわなきゃならんのだ? と。

「で? どうして考えが変わった訳?」
そして、私はあの日の出来事で学んだ事を話す。

「お願いする事を何回かした頃、別にそんな事で張り合わなくてもいいかーって思えちゃったんだよね。だって、事実、男の方が筋力あるもん。私が結構な労力を使ってやるような事でも軽々サッサと何の苦労も無くできちゃうんだよ? それにお願いしたら喜んでやってくれる。何だか今までの自分のこだわりがアホ臭くなっちゃったって訳」

そう。戦わなくてもいい。というか、それ、戦うトコじゃない。ということにやっと気が付いたのである。

これは男女差別だとか能力云々だとかいう話では無い。
体格や筋力というのは生物学的な特質であり事実でありそれ以上でもそれ以下でもない。
なのに今までの私は無意識のうちに無駄に張り合っていたということなのだ。

あの日の彼のセリフが彼独自の見解なのか、男性全般に当てはまるのかはよくわからない。
でも、こういう考え方を持っている男性もいるということだけはいえるし同様に反応する男性にも出会ってきたからすくなくとも複数人はいるということだ。

もう一つ印象に残ったのは、一回りも歳下の男性から言われると妙に素直に聞いている自分がいたということだった。なんとも不思議な感覚だった。
きっと同世代の男から言われるとスルーしていただろうと思うのに。

もしや心惹かれる何かがあったのだろうか……

ん? 

あれ? 私、トキメイていたのか?
あれれ? 歳下だからとかではないのか??

うわー! 気が付くの遅いよ、遅すぎるよーー!

顔もキレイさっぱり忘れ去ってしまったあの人。
なのに、何年もたった今でも強烈に印象に残っているあの出来事。
私のくだらない価値観の一つを変えるキッカケをくれた、
二度と出逢うことがない、出逢いようのないあの人。

私の中にはニカっと満面の笑みで「了解!」といって去って行った
爽やかな空気だけが残されている。

 

***
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2016-07-14 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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