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メディアグランプリ

スーパーのエビフライを食べたら、親に会いたくなった


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:山谷幸太(ライティング・ゼミ平日コース)

 
 
「エビ、小さっ!」
私は一人部屋でイライラしていた。近所のスーパーで買った特大エビフライのエビが小さすぎる! 1週間の仕事を終え、晩酌をしようとしていた年末の金曜日の夜。そのエビフライは特大と謳っているにも関わらず、食べてみると、メインであるエビは手の小指程度の大きさしかなかった。ほとんど衣だ。騙された! いわゆる「華金」に一人で何をイライラしているのだろうと思いながら、しょうがなくそのエビフライを食べていると、携帯電話が鳴り、母親から一通のLINEが来た。
 
「元気にしていますか? 最近仕事の調子はどうですか? ところで年末年始は帰ってきますか? 今年はお盆も帰ってこなかったので、できれば帰ってきてほしいです」
それは、年末年始の帰省を促す内容であった。私は帰省しない予定であったから帰省しない旨をそっけなく返信した。するとすぐに返信が来た。
「それは残念です。『いつまでもあると思うな、親と金』という言葉もあるから、私たちが元気なうちに、たまには帰ってきてくださいね!お父さんも楽しみに待っています!」
親自身が言うな! こっちにはこっちの事情があるんだよ! と思いながら携帯電話をベットの上に放り投げた。
 
家族と仲が悪いわけではない。むしろ仲は良い。普段は正月とお盆に実家には帰っているし、たまにLINEや電話のやり取りもする。(といっても、事務的な連絡が多いが)今回は、特に年末年始の予定が決まっていたわけではないけれども、帰省はしない予定であった。というのも、実家は秋田の田舎であるため、帰っても特にやることがないのだ。帰っても、親戚回りをする程度で、両親と何かするわけでもなく、結局暇になってしまう。社会人は連休もあまりないから、ここぞとばかりに旅行に行きたいし、旧友と遊びに出かけたい。数年前に家族旅行も行っていて、親孝行はできている気がする。休みにおける帰省の優先順位は年々低くなっていた。私は今年30歳で、両親は二人とも60歳を超えているものの、ある程度は元気だ。日本の平均寿命は、男女ともに80歳を超えているらしいから順調に行けば、あと20年は生きられる。20年なんて、目の前にあるエビフライくらい長い。そんなことを考えながら、一人晩酌を進めていた。衣いっぱいの特大エビフライ。両親の寿命。手の小指程度の小さなエビ……。
 
ふと、一つの疑問が頭に浮かんだ。「このエビフライが両親の寿命なら、中の小さなエビは何になるんだろう?」
 
すぐに答えは出た。小さなエビは両親に会える時間だ。エビが衣に覆われていて大きさは食べてみないと分からないように、それは計算してみないと分からないものであった。
 
「あと80日しか会えない……」
1年で私が、両親と会う時間は正月とお盆の4日間だけ。仮にあと20年両親が生きたとしても4日間×20年で80日! 3か月もない! あと20年も両親の寿命はあると思っていたが、会える時間は3か月もない! この事実に急に焦りが湧いてきた。自分は両親に何ができているだろうか? 感謝の気持ちを伝えられているだろうか? 両親を喜ばせられているのだろうか? 先ほど母親から送られてきた、「いつまでもあると思うな、親と金」という言葉が、急に現実味を帯び始める。エビフライが両親の寿命とすると、エビは両親に会える時間だった。私は両親の寿命(特大のエビフライ)だけに目がいき、両親と会える時間(エビ)には目がいかなかった。またもや騙されるところであった。
 
私は急いで母親にLINEを送った。
「やっぱり年末年始、実家に帰ることにしました」
いきなりの方向転換に母親は驚いていたが、その理由は恥ずかしいから言わなかった。
直接会った時に聞かれたら話せばいい。お盆帰れなかった分、いつもより長く実家にいよう。何かお土産を買って帰ろう。お酒を飲んでたくさん話をしよう。恥ずかしいけれど、感謝の気持ちを言葉にしよう。
LINEのやり取りを終え、エビフライを食べると、冷めていてエビも新鮮さを失っていた。
時間がたつとエビフライの美味しさが無くなるように、両親の寿命も刻一刻と短くなっている。それは抗いようもない事実だ。だけど両親と会う時間は、美味しさが無くなってしまうエビとは違って、私の意志でいくらでも増やすことができる。
そんなことを思いながらエビフライを食べ終えた。やっぱり冷めてはいたけれど、さっきとは違う味がした気がした。
スーパーで買ったエビフライを食べたら、私は親に会いたくなった。
 
 
***

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2018-02-23 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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