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メディアグランプリ

深夜の最終バスには諦めと後悔と少しのホッした空気が渦巻く


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:本多俊一(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
やってしまった。
 
その日自分は渋谷に着いた時点で自らの過ちを噛み締めていた。
 
電車が、もうない、のである。
井の頭線の改札まであと100mの手前で本日最後の電車が行ってしまう音が聞こえてきた。
 
池袋からあと一本早く乗っていれば……
時間にしたらほんの数分の違いで、人生はこうも変わる。ああ無情だ。鉄道は心も鉄でできているんだ。冷たい。ちょっとくらい待っててくれてもいいのに。
 
JRから井の頭線乗り換え、走れば間に合ったかもしれない。
だけどあいにくmac bookとかカメラとか入っている重たいバックパック背負って走るほど若くない。
なによりもそんな焦るほどのことではないし途中からこの状況に気がついていた。乗り換え案内が「電車のみで帰る方法」と一番最後の手段として「最終バスを使う場合その次の電車もある」を同時に表示していたために、電車だけでもう一本あると思って店を出るタイミングを見誤ったのである。
 
山手線内でよくよく見たら、一番最後の手段だけ金額が3倍位になっていて「あれ?」となった。その時点で、もう遅い。
3倍という数字を見ると「う……」となるものの、タクシーよりはマシというか、タクシー乗るのはなんとなく負けな気がするけど最終バスならまぁいいか、と変な妥協をしてしまった。
 
さすがにこの時間、約束があるわけでもないし、早く帰って寝たい気はするが、幸い明日の最初の予定は昼からであるし。フリーランスさまさまである。
 
あるいは、渋谷まで来れているならいっそ歩いて帰ってもいい。そう、タクシー乗るくらいなら1時間半くらい……健康的ではないか。まぁ、歩きませんけどね。
 
ついでに言うと、ふと「終バスって乗ったことないな」という好奇心も勝ってしまった。30年以上生きてきてもまだまだ経験していないことは多い。これも何かの縁だろうということで、「ああ、やってしまったなー」と自分の不注意を苦々しく噛み締めながらもなんとなくワクワクしていた。
 
ということで、井の頭線には早々に見切りをつけて、バスに切り替えたわけであるが、ここでちょっと悩む。
 
「普段バスを使わないからどこから乗るのか分からない」
 
乗り換え案内アプリによると、バスのルートも一択でそれが最終なので、これを逃したら本気で歩きかタクシーである。最終バス発車まであと10分弱。いきなり時限爆弾のタイマーが始まった感じがした。
 
再開発激しいここ渋谷でピンポイントにバス停見つけられるのかこれ、と緊張感が高まる。
 
とりあえず、バスが集まっている風景の記憶からするとモヤイ像のあたりかヒカリエの方だったかそんな感じだったとして、井の頭線方面ならきっとモヤイ像の方だろうということでグルッと回って行ってみると運良く停留所案内の掲示板を発見した。
吉祥寺方向のはマークシティの入り口すぐのところらしく、けっきょくJRからの乗り換えとそんな大差ないじゃんという灯台下暗し感。
 
いずれにしてもよかったよかったと向かうと、こんどはまさかの長蛇の列。
えー、電車逃している人こんなにいるのか? なんとなく仲間意識を感じながら並んでいると後ろにも人がけっこう並び始める。
 
いよいよ最終バスが来た。
 
いやー、わかっているけど高く感じる(笑)
終点の吉祥寺まで行くとさらに倍かかるのか……すごいな。
時間の大切さをシミジミと感じながら奥に進むと運転手ではない乗務員のおじさんが車内で着席を促し乗客を整理している。日中よりも丁寧なんだなと思いつつ、窓際の席に座る。深夜のバス内は疲れ切った呼吸とようやく帰路につけた安堵の空気が入り混じった空間だった。一つ前の席に座っていたサラリーマンはすでに寝息を立てている。自分はここで寝過ごしたら元も子もないので、まだまだ緊張感は解けない。
 
そういえば渋谷で終電が終ったあとの風景って見たことなかったなぁ、と窓の外を眺めていると、「まもなく満席となりますのでご乗車締め切ります」みたいなアナウンスが入った。
 
あれ? 満席になると乗せないの? 日中なら立っててもOKだよね? と考えている内に最後のひとりが乗ってきてそこでドアが閉まった。その後ろにいた人を扉前に待機していた職員が遮って「ごめんなさい!」っていう動作をしていた。
まじか……終バスってそんなルールがあるのか。
あ、もう一人来た。
追い返した。
あ、また一人来た。
追い返した。
容赦ないな……。
 
まだ発車まで数分あるのに、もう扉は開かない。
乗ろうとしてくる人たちはもう全てお断りされている。酩酊状態でもなければ乗せてあげればいいのに。もしや、こんな深夜の時間で疲れた乗客を立たせたら、踏ん張っていられなくて転倒したりする事故でもあったのだろうか。
 
ああ、また断られた!
今度の人はめっちゃ食い下がっている! そりゃそうですよねぇ、これ逃したらタクシーか歩きか、あとは漫画喫茶とか、そんなですものねぇ。
でも、けっきょく諦めてもの凄く残念そうな顔して行ってしまった。
世知辛い世の中だなぁ……人生はちょっとのタイミングで分岐点が起きる……。
 
そんな風景を眺めている内にエンジンがかかり、バスは動き出した。

***

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2018-05-24 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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