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メディアグランプリ

ほうれい線と歯並びと


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:瀧本将嗣(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「ねえ、ねえ、ヒアルロン酸を注射したら、このほうれい線は消えてシュッとなる?」
 
「……お兄ちゃんの場合は普通のシワと違ったラインだからやってみないとわからないね。」
 
「え、確実じゃないんだ。そんなら辞めとくわ。でも、なんでほうれい線ってできるの?」
 
「加齢のせいで支持靭帯が緩むんだよ。靭帯だけじゃなく、そもそも歳をとると頭蓋骨も痩せるんだよ。老人の目が落ちくぼむのは眼球周りの骨が広がってくるせいだし。齢とともに梨状孔が広がって鼻も横に広がるし。」
 
*梨状孔 頭蓋骨の鼻の孔に相当する部分
 
「まじか、老化で骨から痩せて色々見た目の変化っておきるんだ」
 
美容外科医の弟が学会のために上京してきた。
久しぶりの再会なので一緒に食事をした席のことであった。
弟はヒアルロン酸注射を得意としており、その症例で表彰されたこともあるらしい。
 
この話で歯科医の私は、はっと気づかされた。
体は変化する。加齢とともに変化する。頭蓋骨でさえ痩せてくる。
 
例えば、歯並び。
患者さんによく効かれる質問がある。
 
「先生、私ね、若い頃は歯並びが良かったのよ。特に下の前歯。でも最近気づいたんだけど、下の前歯が捻れてガタガタになってきたのよ。どうして?これって治せないの?」
 
本当によく聞かれます。歯並びがかつて良かった人ほど。
 
横から見ると歯は前方に若干傾斜しています。歯にかかる力が特に下の前歯に集中するんでしょうね。加齢とともにだんだん乱れてくるのです。
乱れた歯を治すには歯列矯正するしかないです。
 
例えば、歯列矯正をした人で、治療終了10年後に綺麗になった歯列のままの人ってどのくらいの割合だと思いますか?
実は3割。
3割ですよ!
つまり7割の人は歯並びが乱れてくるのです。
これって多いと思いますか?少ないと思いまですか?
野球で3割バッターっていえば一流ですよね。
矯正で、3割だったらどうでしょう?
ひょっとしたら一流って言われないかもしれないですよね。
時間とお金をかけただけに。
だからリテーナーっていう後戻り防止装置をしたり、歯の裏に細いワイヤーを接着剤で固定して、歯並びが再び乱れないようしているのです。
歯列矯正ってけっこう治療終了後が大切なのです。
 
他にも歯が動く問題では似たようなことがあります。
例えば歯を失った場合の治療法にインプラント(人工歯根)があります。
ところが年月が経つとインプラントと隣の天然歯との間に隙間が空いてくる事があります。
また前歯にインプラントを入れて、隣の天然歯の方が出てくることもあります。
これらの事はインプラント治療をしている歯科医ならば大なり小なり経験していると思います。
 
つまりインプラントって顎の骨にチタンのネジを埋め込むので、その位置は年月が経っても全く変わらないです。
ところが歯は骨に直接、埋まっているのではなくて「歯根膜」っていうクッションのようなものを介在しています。だからわずかに動きます。
ということは、全く動かないインプラントと、動く天然歯が口の中に共存すると先ほどのような隙間が開いてきたり、隣の歯との位置が変わったりしてくる問題が起きるのです。
これって、はじめは歯科医師の技量の問題かなと思っていました。
でも、美容外科医の弟との会話で、顔の骨格からして加齢とともに変化するならそこにある歯列が変化するなんて当たり前じゃないかと思いました。
天然歯だけの口の中だったら、全体ですり減ったり移動したりするので変化はわかりにくいです。でもインプラントのように不動の基準点のようなものがあると、天然歯の変化ってわかりやすい。目につきます。
人間の感覚というのは髪の毛1本の厚みを感じることができます。
噛み合わせというのはそれほどシビアなものなのです。
歯の治療で、噛み合わせの調整を歯科医は頑張って行います。
でもその調整された噛み合わせはずっと維持できるわけではないのです。
残念ながら年月とともに変わっていきます。
その変化した噛み合わせが原因で、物が詰まりやすいとか、差し歯が外れたとか別の問題が起きることもあります。
歯は、すり減るし、ちょっとずつ移動していくので、歯医者が治療したのは人生における「変化」の、ある一時期を切り取っているにすぎません。
だから定期検診ごとに小さな変化を見逃さず早めに対応していかなくてはいけない。
定期検診というのは歯石を取ってもらったり、虫歯を見つけてもらうだけではないのです。長い目で歯の状態と「変化」を診てもらうことが、歯を長持ちさせる秘訣なのです。
皆さんも、ぜひ信頼できるかかりつけの先生を見つけてください。
そしてかけがえのない歯を大切にしてください。
ほうれい線を鏡で見ながら私は本当にそう思うのです。

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2018-05-24 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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