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私のコンプレックスが役に立ったのは、20年後だった


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:新野佳世(ライティング・ゼミ特講)
 
 
優秀な姉を持つプレッシャーは、大変なものだった。
親戚のおばさんは、きっと無意識にやっているのだろうけど、
姉と妹の私を比較していた。
姉はある有名な大学に合格していた。
 
全てが順調に、まるで数学の一次方程式のように、
右肩上がり、一直線に伸びていく姉の進路。
好きなことが分かっていて、ただ一心に突き進む人生。
 
フツーの妹の私はとても小さくなっていた。
私は私なのに。
周りを説得する材料もなく、
ただ曖昧に笑い、おばさんたちの容赦ない質問に
逃げるかのように、二階に上がった。
 
私は行きたい大学と、入りたい学部があった。
当時はインターネットも無く、
単なる憧れ、東京への憧れ、だけだったのかもしれない。
 
18歳の私の「行きたい」「やってみたい」は脆いもので、
親の反対を押し切るまで、の覚悟も無かった。
 
ある日、勇気を出して、姉に言ってみた。
「大学で何を勉強したいの?」
「心理学に興味があるから、心理学の学部、行きたいんだ」
 
姉は、私のほうを見ずに、みかんの皮を剥きながら、諭すように言う。
「うーん、たぶん、就職がすごく難しいよ。やめたほうがいいよ。
地元で、潰しの利く学部にしなよ」
 
「就職ができないよ」と言う言葉は、呪いのようだった。
やってみたい、という小さな希望の炎も、瞬殺した。
それに反論することもできず、素直な18歳は、
地元の大学で、「潰しの利く」学部に入学する。
 
そして、平凡な大学生活を送り、
「地元の人なら誰でも知ってるけど、その地元の人しか知らない会社」
の会社員となった。
そのカタイ社風に息苦しさを感じ、3年で退職する。
大きな挫折だった。
 
右肩上がりの姉は、有名な大学に入り、有名な企業で活躍していた。
彼女の思い描いたとおりの人生を送っていた。
 
このコントラストは何だろうか。
躓きながら、進路を変えてきた私の人生。
地元の小さな枠から、いつも出られない私の人生。
私の人生が変わることはあるんだろうか。
 
 
そんな私に、ある日転機が訪れた。
習い事で出会った友達に、海外に行くことができるプログラムを
紹介してもらい、晴れて合格した。
各都道府県ごとに採用枠があるため、地方に住んでいる
私は受かりやすかったらしい。
人生、どう転がるか、分からない。
そこから、私は海外と繋がりを持つ人生が始まった。
 
後で知ったのだが、キャリアには二つの型があるという。
姉のように、一直線にやりたいことを突き進む、直線型。
そして、私のような者にも型があった。
 
「クラゲ型=展開型」。
人との出会いで人生が展開していくタイプ、らしい。
出会いから、やりたいことが見えていく、のが特徴。
私はクラゲだったんだ!
目の前の霧が晴れるようだった。
 
ずっとコンプレックスを感じていた。
何者でもない自分。
やりたいことが分からない自分。
やりたいことを突き通す自信もない自分。
 
でも、クラゲ型を聞いた日から、自分の人生はこれでいい、と開き直った。
 
20年後、高校の社会人講師の授業で、高校生に自分のキャリアを
話をしてくれないか、と依頼が来た。
 
私は何を伝えられるのだろうか。
私のキャリアの話なんて、おこがましい気がした。
でも、引き受けることにした。
 
クラゲの話なら、伝えられる。
優秀な姉と比べられていた私のように、
やりたいことが見つからずコンプレックスを感じていた私のように、
昔の私のように悩んでいる高校生に、クラゲの話ができるのではないか。
 
18歳で、人生の何が決まるのだろうか。
絶対に決まらない。
私のように、クラゲ型もいるんだから、そんな人は安心してほしい。
今、決まらなくても、それでもいいんだ。
後からのお楽しみにしていればいいんだよ。
 
その高校は、市内の進学校だった。
素直そうな、お行儀のいい高校生たち。
私の仕事のことを、少しずつ話し始める。
 
途中から、用意した原稿を捨てることにした。
カッコいいことを言うのはやめよう。
この場は、一人の人間として、本音のメッセージを伝えよう。
 
「私の人生、順風満帆じゃないの。
挫折バッカリなんですよ。お姉ちゃんが優秀でねえ。
兄弟が優秀って、すごいプレッシャーなんだよね」
 
外部講師へのよそ行きの雰囲気だったのに、
その時から空気が変わったように感じた。
 
「クラゲ型」ってあるんだって。
これ、励まされると思わない?
私は18歳の時に思い描いていた人生ではないけど、
予想外の、おもしろい人生になってるよ。
18歳の時には、絶対に分からなかった。
だから人生おもしろいし、諦めなくていいんだと思う。
 
目の前の高校生に言いながら、
私は18歳の頃の、制服を着ている昔の自分に言っていた。
昔の自分が、一番聞きたかった言葉を。
 
眼鏡をかけた、名探偵コナン君のような小柄な男の子は
目の色が変わったように思った。
彼は、何かを考えていたようだった。
 
講座終了後、アンケートをもらった。
コナン君は、幼さの残る丸い字で、こんなコメントをくれた。
「クラゲの話が一番印象に残りました。
新野さんは、いろんなことが順調に行っている人だと思っていました。
でも、クラゲ型だったんですね。なんか、うまく言えないけど、
なんだ、僕もこれでもいいんだな、って思いました。
ありがとうございました」
 
少なくとも、彼に私の思いは伝わり、
彼は、若く瑞々しい感性で、何かを感じてくれた。
私のコンプレックスは、20年の時を経て、
カタチを変えて、若くてピュアなハートに届いたのだ。
 
私は教師という仕事は目指さなかったので、教育実習はしていない。
でも、こんな体験をしていたら、先生を目指していたかもしれないな。
やっぱり、人との出会いで人生が決まるクラゲ型なのだろう。
 
 
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2019-01-17 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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