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週刊READING LIFE vol.17

どうしてリカオンの捕食映像に惹かれるのか《週刊READING LIFE vol.17「オタクで何が悪い!」》


記事:千葉とうしろう(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
 
 

幼い目元に涙がたまって、苦しそうな泣き声が聞こえます。泣き声は4〜5回繰り返されてから聞こえなくなります。それは体が引き裂かれて死んでしまうから。私は、そんな様子を見るのが好きなんです。
 
もちろん、これは人間の話ではありません。動物の話です。草食動物の赤ちゃんが肉食動物に食べられてしまう様子です。草食動物のインパラやヌーの赤ちゃんは、うまく走って逃げることができないので、肉食動物から捕食されやすいんです。ユーチューブにはこんな映像がよくアップされいて、私はそんな肉食動物の捕食映像に惹かれるんです。自分では一つの社会勉強だと思ってます。「肉食動物の捕食映像に惹かれるって普通じゃないかな」とも思うのですが、社会勉強だと思えば、そんな自分を肯定できます。
 
私は、主にアフリカのサバンナの様子を見ます。サバンナには野生動物がたくさんいますから、野生動物の捕食映像がアップされる頻度はダントツです。他にも東南アジアとかアマゾンとか北米の野生動物の映像もありますが、やはり面白いのはアフリカの野生動物です。規模が圧倒的に大きいんだと思います。
 
アフリカには野生動物がたくさんいます。多くの肉食動物の捕食映像が、ユーチューブにアップされています。ライオン、チーター、ヒョウ、ハイエナ、ワニ、など。それらの中でも、私は特にリカオンの捕食映像に惹かれます。
 
リカオンっていう動物を知っていますか? イヌ科の動物で、中型犬くらいの大きさです。多くは黒っぽい色をしているんですが、白色やベージュ色のまだら模様が体にあります。尻尾の先は白色で、耳は大きくて丸い。そんな動物です。
 
多くの肉食動物の捕食映像の中でも、リカオンの捕食映像は特に悲惨です。ライオンやヒョウの捕食映像は、それほど悲惨でありません。ライオンやヒョウなどの、体が大きいネコ科の肉食動物は、捕まえた草食動物の頭や首に噛み付いて、そのまま息の根が止まるのを待ちます。暴れる草食動物を抑えるだけの体格を持っている肉食動物は、相手の息の根が止まるまでじっと待つことができるのです。草食動物の息の根が止まって体が動かなくなってから、ゆっくりと食べ始めるんです。
 
それに対してリカオンは違います。リカオンはライオンやヒョウほど体が大きくありません。肉食動物を捕まえて、息の根が止まるまで相手を押さえ続けるだけの体格がないんです。なので、捕まえたらすぐに食べ始めるんです。相手が生きていようと、逃げていようと、動いていようと、関係ありません。肉食動物の体に後ろから噛み付いて、そのまま王手です。
 
特にリカオンの様な体が小さい肉食動物がバイソンやシマウマやガゼルなんかの体が大きい草食動物を食べる映像を見るとわかるのですが、肉食動物は、草食動物の腸を食べたがります。リカオンは群れで肉食動物を襲うのですが、肉食動物のお尻に顔を突っ込んで、腸を真っ先に食べます。
 
肉食動物が狙っているのは、草食動物の肉ではない様です。肉食動物が食べたがっているのは、草食動物の肉ではなくて内臓なんだそうです。草食動物は肉食動物よりも長い腸を持っていて、それだけ微生物をたくさん体内に持っています。その微生物を、肉食動物が自分の体に取り組むのが目的なんだとか。その他にも、草食動物の体の中には、さっきまで食べていた草がたくさん入っています。肉食動物は草食動物の内臓を食べることによって、間接的に草を体内に取り込んで栄養のバランスをとっている様です。
 
だから、前からではなく後ろから襲うんです。お尻に噛み付けば、その奥にあるのは腸ですから。しかもお尻の皮膚は堅いので噛み切るのが難しいかもしれませんが、お尻の穴に顔を突っ込めば柔らかい腸を引っ張り出すことができます。だからお尻の穴に顔を突っ込むんですね。
 
私がなんで肉食動物の捕食映像、特にリカオンの様な悲惨な食べ方をする動物の映像に惹かれるのかというと、これは社会勉強なんです。人間社会をよりよく理解するために、肉食動物の悲惨な捕食映像をよく見ています。肉食動物の捕食映像を見ていると、人間社会についてよく考える様になるんです。
 
おそらく動物には社会っていうものがありません。イルカやニホンザルなどの社会性を持った動物や、社会性を持っている様に思われる行動をする動物もいます。が、人間の社会に比べて、その社会性ははるかに薄いものです。人間の対極の存在として、私はリカオンを見ているんです。
 
リカオンは非情です。草食動物を捕食するのに容赦がありません。逃げる草食動物を群れで追い、一匹に狙いを定めて集団で襲います。草食動物よりも頭が回る様で、狩りは組織だっています。狙った獲物を囲んで、それぞれのリカオンが攻撃しては離れ、攻撃しては離れます。で、いずれ致命傷を負わせるんです。後ろ足が立たなくなって相手が横になったら、囲んでいた集団が我先に飛びかかって食べ始めます。動きが遅い赤ちゃんは、真っ先に狙われます。
 
非情なリカオンに私が惹かれるのは、リカオンにも弱さがあるからです。まず、肉食動物という時点で不利な存在です。肉食動物は草食動物よりも随分と生息数が少ないんです。肉食動物は、野生動物全体の5パーセントくらいしかいないそうです。残りの95パーセントは草食か雑食です。
 
草は逃げません。木は走りません。植物っていうのはそこにとどまり続けるものです。だから、草や木を食べる草食動物は、栄養を摂取しやすいんです。相手は走って逃げたりしないんで、食べるのに肉食動物ほど苦労しないんです。
 
肉食動物の捕食相手は、食べられまいと逃げます。狩りの成功率は、10割では決してないでしょう。動く相手を食べなければならないので、捕食するのにリスクがあり、草食動物ほど繁栄していないんです。
 
それと、リカオンはよくライオンから殺されてしまいます。テリトリーが被ったり、ライバルを減らすという意味で、ライオンは他の肉食動物も襲うんです。殺して食べるというより、ただ殺すだけの様です。
 
リカオンはライオンよりも体が小さいので、よく襲われます。リカオンも食物連鎖の頂点にたつわけではないんです。野生動物のピラミッドの中の、一部分でしかないんです。リカオンの巣は地面い掘った穴で、巣穴の中にはリカオンの赤ちゃんがいます。
 
それらの赤ちゃんも、ライオンに殺されたりする様です。ライオンに巣穴をほじくり返されて引っ張り出されるんです。自分の子どもが殺される様子を、親のリカオンは距離を置いて見ているだけです。ライオン相手には手も足も出ないんです。
 
リカオンも赤ちゃんだけは可愛いんですよね。親のリカオンが巣穴に戻ると、ヨチヨチしながら親に近寄ってきます。獲物を食べるときも、赤ちゃんリカオンは白色の尻尾をフリフリします。リカオンっていう存在は非情なことをしている(様に見える)のに、赤ちゃんリカオンの顔は無垢に見えます。
 
そんな強そうで弱い、安定していようで不安定、被疑者でもあり被害者でもある様なリカオンを見ていると、逆に人間社会がよく見えるんです。非情な野生動物の世界を見ていると、「たとえ凶悪な肉食動物でも、どうして赤ちゃんだけは可愛く見えるのか」「子を殺される親動物に悲しい気持ちはあるのか」「生き物どうしが傷つけ合わずに共存はできないのか」「でも結局、人間が一番残虐だし」っていう考えがムクムクと顔を持ち上げるんです。対比の効果ですかね。人間社会を考えるネタを、動物の世界に見つけることができる。だから私は、リカオンの捕食映像に惹かれるんです。

 
 
 

❏ライタープロフィール
千葉とうしろう(READING LIFE 編集部ライターズ俱楽部)
宮城県生まれ。大学卒業後、民間企業を経て警察官へ。警察の仕事に誇りを感じ、少年犯罪を中心に積極的に対応。しかし警察経験を重ねるうちに、組織の建前を優先した官僚主義に疑問を感じるようになる。現在は組織から離れ、非行診断士へと転身。警察のフィルターを通して見た社会について発信。何気なく受けた天狼院書店スピードライティングゼミで、書くことの解放感に目覚める。

この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。

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2019-01-29 | Posted in 週刊READING LIFE vol.17

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