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新江ノ島水族館、水槽の向こう側

【新江ノ島水族館、水槽の向こう側:第3回】フンボルトペンギン〜命を見守り、つないでいく・後編《天狼院書店 湘南ローカル企画》


2021年/09/13/公開
記事:東ゆか(あずま ゆか)(READING LIFE編集部公認ライター)
 
 
ガラス板を隔てたすぐ向こう側で、ペンギンがスイスイと泳いでいる。水から上がると短い足でヨチヨチと歩き始める。少し首を傾げたり、羽を広げたり、可愛らしい一挙手一投足に目が離せない。水から上がったペンギンが、隣にいたペンギンと羽繕いを始める。
 
みんな仲良しかと思いきや、彼らには縄張りや決まったパートナーがいて、展示室の中では複雑な人間関係ならぬ「ペンギン関係」が築かれているのだという。
 
今回は新江ノ島水族館で10年間ペンギンの飼育を担当している城戸暖菜(きどはるな)さんにお話を伺った。
 
《前編はこちら
 
 

同性愛? 浮気? 展示室の中の不思議な「ペンギン関係」


もちろん優先してほしいのはペンギン同士の関係。ペアやつがいができそうなときは、同じ巣箱に入れたり、私たちからあまりスキンシップをしないようにしたりと、お膳立てをしています。
 
ペンギン同士で自然とペアやつがいになることもあります。「ペア」「つがい」という言い方には意味があって、当館では繁殖に向けて一緒にいるオス・メスを「つがい」、それ以外の同性同士やきょうだい・姉妹などで一緒にいるペンギンを「ペア」と呼んでいます。
 

 
こういうお話をすると「同性愛なの?」と思われるかもしれませんが、ペンギンたちの気持ちは私たちには分かりません。メス同士のペアで一緒に生活をしていても、繁殖期になるとオスと交尾をして、子育てはメス同士でするケースもあります。
 
多くの野生のペンギンは、基本的には一夫一妻制で、生涯伴侶を変えないといわれています。
 
しかし、雌雄のバランスが均等ではない場合は、それが当てはまらないこともあります。
 
例えばメス同士のペアを持っていたセサミは、チョキを産みました。チョキの血液検査をしたところ、父親はポーだと判明しました。
 
しかし当時、ポーは別のメスとつがいになっていて、チョキと半年違わないぐらいの子どもがいました。ポーにとっては浮気というか、つがい外交尾になります。
 
新江ノ島水族館にはチョキの他にも、つがい外交尾でできた子どもたちがいます。
 

 
サンという不思議な縄張りを持つオスペンギンもいます。サンは姉妹のヒカルとアカリの3羽で縄張りを持っています。通常、姉妹のペアにオスが割って入っていくとつがいができて、残されたメスは離れていくのですが、なぜか3羽一緒にいるんです。
 
さらに、サンにはヒカルとアカリの他にも、別の仲良しのチョキというメスがいます。1日の半分ぐらいを姉妹と3羽で過ごして、もう半分はつがい外のチョキと過ごすこともあるし、アカリが隣にいる状態でヒカルと交尾をすることもあります。そんなちょっと不思議なオスです。
 
サンは親離れをする前に父親のペンギンが死んでしまったので、私たちが母親と一緒に子育てをしていました。だからなのか、飼育員たちから見て割と素直な子。人当たりもよくて、ペンギン当たりもいいです。むやみに喧嘩をしたり攻撃したりすることもありません。サバサバというか、何か一つのことに強くこだわることのない性格です。
 
 

安全に繁殖させるためのペンギンたちの家系図



〈ペンギンの系統は大きく2系統。今後は他の施設とペンギンを交換し、系統を増やしていく予定だ〉
 
現在、日本の水族館・動物園にはおよそ1900羽のフンボルトペンギンが暮らしていて、繁殖は全国のペンギンの血縁関係をみながら、なるべく調整しようとしています。数的にも血統的にも孵化させられない卵もあるんです。
 

〈フンボルトペンギンが野生で生息しているチリやペルーは地球の裏側。日本の気候は生息にも繁殖にも適している〉
 
血統的に問題のない卵が産まれても、うまく育てられないつがいもいます。同じ時期に産卵したつがいやペアに托卵させることもありますが、適任なカップルがいないこともあります。タイミングが合わなくて、手を尽くしても年間で1羽も孵化できない時期もありました。
 
今では他の施設から新しい血統が入っています。彼らとの繁殖がうまくいっているので、今後は安定して増えていくのではないかと期待しています。
 

〈卵が転がり落ちないように、巣箱の入り口に木の棒をあてがっている。巣箱の奥には体重800グラムの雛がおり、母ペンギンに守られている〉
 
うまく子育てできなかったペンギンの代わりに、人間の手で生後から育てた子もいました。子育ては大変ですね(笑)。朝7時から夜7時半までに5〜6回餌をあげます。その都度、魚をミンチにして、栄養価を高めるために猫用の粉ミルクやビタミン剤を混ぜて、シリンジで食べさせる。生後1ヶ月半になるまで毎日行っていました。
 
完全な人工育雛(いくすう)でなくても、自分が子育てに関わったペンギンが成長して子どもが生まれると、命のつながりを実感できます。まるで自分の孫のように感じます(笑)。それがペンギンを担当していてやりがいを感じる一つですね。
 
ペンギンを通して動物や自然に興味を持ってほしい
 

 
新江ノ島水族館が開館して以来、今が一番フンボルトペンギンの羽数が多いんです。野生のようにたくさんのペンギンたちが集団で生活している様子をもっと見せられたらと思っています。そのために今後も繁殖に力を入れていきたいですね。
 
他にもショーや解説のキャプションを通して、お客さんへアプローチしていきたいです。生態学的なペンギンごとの性格の紹介や、私たちのペンギンへの接し方、生息地である南米の海にも興味を持ってもらいたいですね。ただ「ペンギン、かわいいね」と感じてもらうのだけではなく、動物や自然に興味と関心をより抱いてもらえるような展示にしたいと思っています。
 

 
 
 
 
(文:東ゆか、写真:山中菜摘)

□ライターズプロフィール
東ゆか(あずま ゆか)(READING LIFE編集部公認ライター)

神奈川県藤沢市生まれ、長野県育ち。幼少期は藤沢出身の母の帰省時に、必ず旧江の島水族館へ遊びに行っていた。海なし県で育ったため、年に数回訪れる湘南の海に対して人一倍の憧れと愛着がある。

□カメラマンプロフィール
山中菜摘(やまなか なつみ)

神奈川県横浜市生まれ。
天狼院書店 「湘南天狼院」店長。雑誌『READING LIFE』カメラマン。天狼院フォト部マネージャーとして様々なカメラマンに師事。天狼院書店スタッフとして働く傍ら、カメラマンとしても活動中。

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