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育児とは内容のわからないプロジェクトを任されるようなものだ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:西元英恵(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
数年前に初めての出産をした。
ありがたいことに初産にしてはスムーズに事が運び、無事に出産を終えた時は助産師さんに「上手!」と褒められたくらいだった。
 
入院中は上げ膳据え膳で身の回りのお世話をしてもらえて、赤ちゃんが泣き止まない時には看護師や助産師の方が手厚くフォローしてくれた。
 
無事退院の日を迎え、私は意気込んだ。
「これからいよいよ赤ちゃんとの生活がはじまるんだ」
 
問題は自宅についてからだった。
まず、赤ちゃんをどこに寝かせたらいいのか。
もちろんベビーベッドは入院前から準備して組み立てている。しかし、眠っていないのにベッドに連れていくのか、やはり抱っこしておくべきものなのか。
今思うとくだらないが、急に始まった赤ちゃんとの生活に緊張感がみなぎっていた。
 
そしてその夜から幾日と続く眠れない夜が容赦なく始まったのである。
まず腕に抱く我が子がずっと泣き止まない。
その当時は産院で教わった通りに時間を測り授乳をしていた。
授乳が終わると「次は3時間後」と携帯のアラームをかけておく。
ところがそのアラームをかけて間もなく早速泣き出す。オロオロしながらも、まだお腹が空いているのかと今度はミルクを作って規定量を飲ませる。すると胃が受け付けなかったのか噴水のように大量に吐き戻した。赤ちゃんの服はびしょ濡れだ。
「え!?もしかして体調が悪いの?」急に不安になりながらもとりあえず新しい服に着替えさせる。その間もぐずぐず泣いている。着替えさせた赤ちゃんを再び抱っこするが今度はまた激しく泣き出す。途方にくれつつも抱っこして揺らしているとさっきかけたアラームが鳴りだした。
(嘘でしょ……)
本来であれば授乳と授乳の間に細切れの睡眠を取って何とか体力を回復させるのだが、結局一睡もできなかったことに絶望した。
そしてこんな夜が何日も続くと段々と心身の疲れがたまり私の精神を不安定にさせていった。
 
そんな頃、ある日の早朝、おっぱいに激痛が走った。
小さい管の中を大きめの砂利が無理矢理通っていくようなそんな衝撃的な痛さだ。
私は「これは体の中で何か異変が起きているに違いない」と産院に早速電話をかけ事情を話した。すぐに来てと言われるのか、はたまた入院なんてすることになったりしてなどと考えつつ返事を待っていると、助産師はあっけらかんとこう言った。
「あーねー!よくあることなんですよ。授乳のし始めは特にねぇ。お母さん頑張って!
頑張って飲ませるしか無いから。赤ちゃんがたくさんおっぱい飲んでくれたら治ります」
(えーーーーーーーーーーーーーーっっっっっっ!!!!!!!)
この痛みに効く薬とか無いの?こんなに痛いのに我慢して授乳するの?
それってもう拷問じゃん……。
「わかりました。がんばってみます」
心の声はぐっと胸の奥にしまい込み、なんとかこの言葉を絞り出した。
 
この時に私はこう思った。
「あぁ私は内容のわからないプロジェクトのリーダーを任されてしまった」
我が子がよく泣くタイプの赤ちゃんだったこともあり、暗いトンネルの中に放り込まれた気分になってしまった。
 
授乳に関しては本当に手を焼き、その後も長く戦いが続くことにはなるのだが他にも苦手とすることが色々あった。
一つは沐浴だ。
まず赤ちゃんを決してお湯の中に落としてはいけないという緊張感から腕にガチガチに力が入る。顔を洗うときには耳や目にお湯が入らないようにそっとそっと優しく洗った。
そして毎日沐浴させていたにも関わらず1か月検診の頃には顔に湿疹が出来てしまっていた。顔を見るなり医師はこう言った。
「お母さん、これね垢ですよ。もっと石鹸つけてジャブジャブ洗ってあげて」
ひえー!優しく洗うのを心掛けたあまりに肝心の汚れが落ちていなかった。
ごめん。まだ話せない我が子に申し訳なくて謝罪する。
 
そしてちょっとしたハプニングにいちいち驚いていた。
あるとき寝ていた我が子が大量に汗をかき、寝姿のシルエットのままにベッドに汗が染みていた。私は病気なのかと焦り、その頃お世話になっていた義母を呼んだ。
「お母さん!大量に汗をかいてます!」
すると母は穏やかにこう言った。
「暑かったんだろうね。全部着替えさせようか」
私は当たり前の対処方法に行きつかない自分の不甲斐なさにがっくりきた。
 
こうやって振り返ってみると当時の自分にはツッコミ処が満載でもっと冷静にしていれば対応できそうなことばかりだと思う。
しかし一方では「出産・育児」ほどこれまでの経験が教科書になってくれないこともないとも感じる。
 
さらに数年後に二人目を妊娠・出産をしたが退院後の育児は自分でもびっくりするほど順調だった。沐浴なんて鼻歌まじりで、授乳はいつも自分も寝転がって、量や時間なんて決めずに泣けば好きなだけおっぱいをあげた。本人の性質もあるのだろうが何をしても泣き止まないということもあまり無かった。
あれほど苦労した一人目の子育てが教科書になってくれたのだ。
一人目の育児で赤ちゃんとの実際の生活や、産後に起きる私自身の体調の変化など事前に心の準備ができたのでわけもわからず不安な気持ちに追い込まれることはなかった。
 
激動の時を経て一緒に成長させてくれた上の子、赤ちゃんの可愛らしさを満喫させてくれた下の子、二人ともかけがえのない宝物だ。
これからもプロジェクトは長く続くし、子供が成長するにつれ悩みの内容が変わるという話はよく聞く。それでも今はこう思う。
「よし、気合入れて愛情たっぷりに育ててやるからな!」
 
 
 
 
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2021-05-08 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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